正しいカレー麺の混ぜかた
ある種ネタですが、意外と使えますよ?
私は、カップ麺には一家言を持っている。
それは、どんなカップ麺にも適量な湯量と混ぜかたがある。というものだ。いや、強いていうなら、経過時間すらもこだわる。
細め、縮れ多め、太目と日々新たなカップ麺が、わたしの前に現れては消えいく。刹那の出会い、それもまた、カップ麺である。
湯を注ぎ、およそ三分、食べるのに一分、まさに刹那の逢瀬。
だから、カップ麺はやめられない。人生に、そんな僅かな時間で、出会いと別れを味わえるエンターテイメントがあるだろうか?
私は、声を大にして言いたい、否っ! 断じて否である! と。
そして、私はある日、コンビニ前で耳にしてしまったのだ。
「カレー麺ってさ、必ず溶けてないやつあるよなぁ」
「あぁ~、わかる~、味がなんか薄いなぁとか思ったら、下に塊居たりするよね~」
「そうそう、で、それが嫌だから必死にかき混ぜるんだけど、アイツらしぶといよね。完全に溶けるまで頑張って混ぜたら麺伸びるし」
愚かな。なんと愚かな事だろう。カレー麺のスープを上手く溶かせていないだけでなく、麺を伸ばす? ナンセンスだ!
だが、私は極度のコミュ障である。怒りを胸に、カップ麺カレー味を購入して、お湯を注ぎ、彼らの視界に入るところで手本を見せる。
「あ、あの人もカレー麺だぜ?」
「絶対、溶けずに残るとわかってても買っちゃう魔力あるからなぁ。カレー麺」
等と、私を見ながら彼らはカップ麺を食べきり、カップの底を見ては落胆している。
「ほら、やっぱり残るよなぁ」
「だよねぇ。こいつらはきっと溶けないことに意味を見出だしてると俺は思う」
ふ、愚かな。おっと、私のカップ麺はそろそろ時間だ。お湯を注いで、二分それがカレー麺の混ぜ時だ。
箸を割り、最初は麺の上部を底面に押し付けるようにゆっくり回す。およそ、十回。そのあと、箸を麺の中に分け入らせ、混ぜる、これは五回だ。そして、最後に、箸で麺を多めにつかみ、底面へと押し付けながら混ぜる。混ぜる。混ぜる!
麺で底にあるカレールーを削ぎとるように! 混ぜる! そして、箸を持ち上げ、ルーの溶け具合を見る。うん。固形化されたルーは居ない。さぁ、味わうとしようか! この逢瀬を!
ほら、食べたくなってきた?