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おランチに行きますわよ!

 

 算術の授業が終わり、次の言論の授業までの休憩時間。

 各々近くの者や仲の良い者とおしゃべりをし始めたタイミングで、私も席を立ちます。


 ゆっくり静々と歩み寄る先にいるのは、今回の捕食対象ターゲット紫髪のリアム・オーキッドさん。背は小さくて身体はガリガリ、髪の毛もきちんとかされていなくてモジャモジャしている。休憩時間なのに教科書に張り付いていて、何かをノートに書きつけていらっしゃいますね。


「リアムさん、今少しよろしいですか?」


 怪訝な表情をしながら教科書から顔を上げて、発言者を探す。一応私を見てから、ぐるりと周りを見渡してまた私に戻ってくる。

 そう、合ってます合ってます。私があなたに申し上げていますの。


 発言者がこの美しいあたくしだと認識すると、眉間の縦皺を更に深めて渋々口を開く。


「……何の用?」


 門前払いにはなりませんでしたわね。これは重畳。

 先程見回した時の視線の行方から、彼のこだわるポイントになんとなくアタリをつけて、慎重に切り出します。


「ホームルームの際に質問していましたよね?リアムさんがどれくらいの選択科目を取るつもりなのか気になりまして」


 そう、彼はディミトリ先生が選択科目についての説明をした際に質問をしていたのです。選択科目に上限はあるのか……と。

 先生は、履修が被りさえしなければいくらでも取って構わないと仰っていましたが、それぞれの科目でレポートや実技でのテストがありますので、多く受講すればする程大変になっていくのは目に見えていますわ。


「私も学びたいことが多くてまだ何にするか悩んでいるので、お話聞かせてもらえませんか?」


 反応が返ってこなかったので続けて話し掛け、小首を傾げつつ純真な眼差しを向ける。ポイントはしっかり目を合わせて逸らさないことですわ。


「……履修表次第だけど、五つか六つだよ」

「ちなみに、リアムさんは何を選択するんですか?」

「…剣術、魔術、薬学、馬術、後は魔獣学か戦術」


 無愛想でぶっきらぼうにそう答えてくれる。やはり社交や芸術系は一切入っておりませんのね。ならば──


「では魔術と薬学でご一緒するかもしれませんね。リアムさんは勉強熱心なんですね」


 ──余計なことは言わずに表情で落とす。

 憧れを抱くようでもあり年下を慈しむようでもある、穏やかな笑みを見せる。相反する気持ちかと思いきや、リアムさんが輝いて見えることに変わりはないのだなと自らを納得させて。


「ま、まぁね。き、君は何を取るの?」


 私の笑顔に一瞬見惚れておりましたが、少しだけ心の壁を取って接してくださる様ですわね。少し席をずれて、私も椅子に座れるように距離を空けてくださいました。


「私は魔術と薬学の他は、社交と侍従学にしようと思っています。男爵家なので、将来のことを考えるとこうなるのですが……実は少しだけ魔獣学にも興味があるんです」


 ここまでやり取りしてきた中で、リアムさんは貴族たるものに対してあまり良い印象を持っておられないご様子。なるべく距離を取って厄介事に巻き込まれないようにしようという意志が見え隠れしております。

 社交と侍従学を取ることで敬遠されたくないので、将来のことと魔獣学を引き合いに出してみましたの。実際に興味があるのは本当ですから問題ございませんわ。


「ふーん、貴族って大変だね」


 苦笑いを浮かべて肯定とも否定とも取れない態度を取ります。会話が途切れましたけれど、そのまま少し待ってみると自分の言ったことのせいで途切れたのかとリアムさんが焦っている様子が横目で見えます。


「よ、よかったらボクの魔獣学のノート見せてあげようか?」


 パァッと表情を明るくしてリアムさんを見つめ返します。現金な態度に見えないように注意ですわね。


「よろしいのですか?テストも受けることなく教えてもらうだけ…なんて」

「別にいいよ。教えることで僕も覚えやすくなるし。どう教えれば分かりやすいか考えながら授業を聞くと理解が深まるんだ」


 どこか懐かしい表情をされていますわ。以前にもどなたかに教えることがあったのかしら……。


「でしたら、お言葉に甘えてノートを見させて頂けると嬉しいです。代わりに私のノートもご覧になりますか?」

「え、いいの?やった!講義は受けたくないけどどんなのか気になってたんだ!あ、そうだ。君、名前なんて言うの?」


 よしよし、いい感じに食いついてきましたわ。あと一押しイきますわよ!


「私の名前はペネロニース。もし呼び捨てが気になるのでしたら、ペネロペと呼んでください」

「分かったよペネロペ。僕のことはリアムって名前で呼んで。苗字はまだ慣れないんだ」

「はい。リアムさん」


 これまで抑え気味だったキラキラ成分をこれでもかと放出致します。

 共に学べる友人ができたことが嬉しくてしょうがないと雄弁に物語るようなとびきりの笑顔を見せると、リアムさんはお顔を赤く染めていらっしゃいました。


 あ、次の授業の準備をしなくちゃと思い出したように席を立ち、お礼を述べて後にする。

 余韻を存分に堪能召しませ〜。



 自分の席に戻ると、ルナマリア様が話を聞きたそうにウズウズしてらっしゃるのが見えたのでサラッと説明して差し上げましたわ!

「ペネロペ…ペネロペ……」と愛称で呼ぶことを大層羨ましがっておいででしたけど、それはゆっくり追々と、ですわね。




 二日目の授業も午前中で終わり、今日はクラブ見学に行こうと思いますの。


 ルナマリア様はクラブには入らず、王城で王妃教育をしなければならないそうですわ。こればっかりはクラブ活動が羨ましいと言っていられないのでしょう、ご機嫌ようと下校なさっていましたわ。背中はハッキリとしょげていらっしゃいましたけども。


 折角ですので、シルヴィア様とナターシャ様にもお声掛けして、昼食をご一緒してからクラブ見学に参りたいと思いますわ。


 お二人をお誘いすると、二つ返事でOKが返ってきました。早速カフェテリアに行くことになりましたわ。


 カフェテリアは室内とテラス席とがあって、テラス席は継ぎ目の見えないガラス板が上部に掛けられていて、その上に木枠を通して蔓植物を這わせた日除けになっています。

 天気も良いのでテラス席にすることにして、給仕の案内で席に着いて今日のメニュー説明を聞きます。


 A:日替わり軽食or季節のスイーツと紅茶のセット

 B:軽食とアラカルトのセット

 C:お魚のカジュアルコース

 D:お肉のカジュアルコース

 E:食べ盛りコース(おかわり可)


 ユメルティア学園では食堂が幾つかあって、それぞれに特徴がありますけれども基本的にはこの5コースになるそうですわ。ちなみに日替わり軽食はローストチキンと彩り野菜の一口サンド、季節のスイーツは苺のクレープシュゼットだそうです。


 私とナターシャ様はBのコースでしっかりと、シルヴィア様はAのコースで軽めのランチにすることに決まりました。

 それ程待つこともなくテーブルに食事が並びます。ある程度コースが絞れているとは言え、素早いながらも手を抜かない仕事ぶりが伺えますわね。


「学園のお食事はどれも美味しそうでございますのね!」


 あら、私ちょっとテンションが上がっているみたいですわ。はしたなかったかしら…。


「お友達とこうしてお食事を共にするのは私も初めてですので、いつもより美味しそうに見えますわ」

「ん、実際に美味しいみたいでございますわよ」


 シルヴィア様と照れ照れしていたら、ささっと祈りを済ませて一人食べ始めたナターシャ様に堪えきれず笑ってしまいましたわ。とっても美味しいランチで、食後はお茶を頂きながら話に花を咲かせましたの。

 ルナマリア様もご一緒にカフェテリアでお茶がしたいですわ〜。


 クラブ見学には、社交クラブ・ユメルティア吹奏楽団・狩猟同好会の順に回って行きましたわ。

 それぞれ良さそうな雰囲気ではあったのですが、行く先々でアルフレッド王子殿下とフローラ嬢が見学していらっしゃったので、もう何を見てもよく見えてしまいそうですわ。


 諸先輩方と環境などの確認ができたらそそくさと退散して、帰ることに致しました。はぁ〜疲れましたわ。


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