どっきどきの自己紹介
2021年3月9日改稿!
「オホン。いいだろう。私に案内してもらえることを光栄に思うが良い」
キラキラと輝く金髪に整った顔立ち、薄氷を思わせる澄んだ青い瞳を下卑た形に歪めてこちらを見つめる男性に案内してもらうことになりました。先程までもう一人のご令嬢の方に向けていた粘つく視線は、すっかり私に釘付け♡
おっと少々トリップしていてご令嬢の方を忘れておりました。そちらは白い肌に大粒のトパーズのような黄金の瞳、赤みの強い茶金色の髪を緩やかなウェーブでおろしているふわふわとした印象の少女ですわ。暖かな春らしい容姿に不似合いな冷たい視線を私に投げ掛けておりますわね。
そんな美男一人と美女二人が話を交わしながら教室まで向かうと、なんとまぁ三人とも同じ教室ではありませんの。
「同じクラスだなんて、運命を感じますね!」
「そうだな。こんな美しい人と同じ教室で学べるなんて、神に感謝せねばなるまい」
「偶然もあるものですわね〜」
ご令嬢がご子息に話し掛け、サラリと流されてから私に語りかけ、私がふんわりとまとめる。そんな感じで話しながら教室まで行き、案内のお礼を述べて席に着きます。
一つの長机に二人が座るようですけれど、お隣さんはどんな方かしら?
私よりも先にいらしていたお隣さんは、神秘的でとても美しい女性でしたわ。
まるで一本一本が内側から輝いている銀糸のような御髪と、揺らめく炎を宿したガーネットのような深みのある赤い瞳を持つ凛とした方。読書なさっている姿が絵になりますわね〜。これは間違いなく高位貴族の御令嬢ですわね!
「お隣失礼致します」
「えぇ、どうぞ」
話はそれっきりだけれど、ゆったりと落ち着いていて静かな時間が流れていますわ。きっと、この方が敵意も緊張もなく泰然自若としていらっしゃるからですわね。
授業開始の鐘が鳴ると、パリッと服を着こなしたクラス担任の先生が入って来てホームルームが始まります。ちらりと周囲を見渡しただけでも見目麗しい方達ばかりで、私浮き足立ってしまいますわ!
「このクラスの監督を受け持つことになった、ディミトリ・コンス・オーボンヌだ」
風格のある渋めのディミトリ先生が簡潔に自己紹介してくださって、次いで生徒の自己紹介に映るみたい。
確かオーボンヌ家は伯爵家だったわよね。貫禄があるからお年を召して見えるけれど、私の目は誤魔化せませんわ!あの肌年齢に若々しい魔力、30歳弱といったところかしら。要チェックね!
「それでは一人ずつ自己紹介をしてもらう。この学園では家の爵位に関わらず、基本的には平等となっている。特にこのクラスには王家から騎士爵家及び平民まで広く在籍しているため、互いに失礼のないように」
最初に自己紹介なさったのは赤髪の溌剌とした方。こちらは現将軍を務めるアングライル侯爵家のご次男ね。ご長兄ご長姉が既に騎士団で華々しい成果を挙げていらっしゃるらしいわ。
知的な雰囲気の青髪の方は代々宰相を務めるユーフリクス公爵家のご長男だとか。名家のプレッシャーをものともしない天才肌で努力も怠らないと評判ですわ。
あの緑髪の寡黙な方は優秀な魔導師を輩出する名門辺境伯の四男だったはず。辺境伯のご指導方針は魔武両道で身体能力も高くていらっしゃるとの噂。
幼さを残す面影の紫髪の方は飛び級で入学した平民出の方らしいわ。とても優秀でいらっしゃるのに年下なんですのね。
教室まで案内してくださった金髪の方は第二王子なのね…鋭利な雰囲気を纏った黒髪の方は王子の側仕えと…まぁ!凛としたお隣さんはグランベルク公爵家のご令嬢なのね…先程ご一緒していたご令嬢はビスキュール男爵家…聞いたことがありませんわ。
上は王族から下は平民まで個性豊かな髪色に見目麗しい面々の自己紹介を聞いて、一番最後の大トリを務めるのがこの私。皆様の視線が私に集まります…あぁ、まだよ。耐えるのよペネロニース。
緊張とワクワクを隠しきれない初々しさを表現しつつ、ゆっくりと美しい響きを紡いでいく。
「アルティザン男爵家が四女、ペネロニースと申します。少々特殊な仕来りから、屋敷の外に出るのは今日が初めてでございます。皆様と共に学ぶことができ嬉しく思いますわ。どうぞよろしくお願い致します」
ある者は口を開け、ある者は息を呑み、時間が止まったかの様に静まり返る教室に、精一杯緊張を押し込めてにこりと微笑んでやれば、男女問わずざわめき出す。
最高の聴衆に最高の演出、正に私の独壇場!!
あぁぁぁぁぁん!!興奮してしまいますぅぅぅぅぅぅ!!!!
クラス担任:ディミトリ・コンス・オーボンヌ(白髪混じりの灰色髪)
金髪の第二王子
黒髪の側仕え
赤髪のアングライル侯爵家次男
青髪のユーフリクス公爵家長男
緑髪の辺境伯家四男
紫髪の平民出飛び級男子
銀髪のグランベルク公爵家令嬢
桃髪のビスキュール男爵家令嬢
今回の登場人物は以上!