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#11 俺のキャンプは能力禁止らしい

「ここをキャンプ地とする!」


 あ、立ち直った。


「おかえり、大吾」

「いやぁ悪い悪い。まぁいない人を探すのもバカらしいよな!なんたって俺には素晴らしき親友がいるもんな!うん!」

「……」

「……」

「無反応ってのもちょっと傷付くなぁ……」


 うん、やっぱ大吾はこのくらいの扱いで十分だな。下手に相手をすると面倒なことこの上ない。


「ところで、よく準備出来たな。二人ともキャンプの経験があったのか?」

「いや?」

「全然ないわよ」

「……それにしては、結構しっかり天幕が張ってあるし、火だって着いて調理してるじゃないか」


 …何を不思議に感じているのか、大吾は首を捻っている。分からなくても、立てられて当然だろう。


「天幕は能力を使って止めてあるだけだぞ」

「……うん?」

「よく見てみろよ、支柱なんて使ってないだろ?まぁ使い方わからなかったんだけど」

「…うん……うん。まぁ、うん、しかた、無い。仕方ないな、うん。知らないものは仕方ない。後で手直しするから手伝ってくれ」

「おう」


 一人納得していないが、そんな事はどうでもいい。今俺にとって大事なのは、目の前で美味そうに焼けている肉だ。

 牛や豚もいいが、やはり肉は鶏に限る。安くて美味しいうえ、味付けは塩だけで十分というコスパの良さ。そして何と合わせてもしっかりと噛み合い、カリカリに焼けた鶏皮なんてものは悪魔的美味さだ。


「世界は鶏肉でできている……」

「何言ってんのよ亮太…頭大丈夫?」

「俺もいただこうか。彩里も、火起こし大変だっただろ?俺が焼いてやるから食べな」

「別に大変じゃなかったわ。アタシに火起こしなんて、能力を使えば一発よ」

「……」

「どうかした?」

「さっきから変だぞ大吾。そんなに寂しいビーチが嫌だったのか?」

「…………だ」


 大吾がポツリと、なにかを呟いた。


「…ごめん、なんだって?」

「よく聞こえなかったの。もう一度言ってくれる?」

「お、おまえらっ!帰るまで能力は禁止だっ!!一度、肉体労働の大変さを学びやがれ!!!」


 ……あぁ。つまり、大吾の能力は肉体強化だ。変化や念動など、分かりやすくて派手な能力には見劣りする。事実、幼少の頃などはそれを原因にして少々捻くれていた時期もあったと聞く。


「ちょっと何よ!その横暴は、むぐ!」

「まぁまぁ彩里。いいじゃないか、能力を制限したってさ?ほら、小学校の時にやっただろ?化学終期の擬似体験みたいなの。その延長線上って事で……な?」

「…亮太が、そういうなら……」


 ーーーーその話、meも関係するデスか?


「だ、誰!?」

「女の子の声だッ!!」

「いや反応するところそこかよ……」


 というか、この声はリサだな。全く、一体どこに隠れていたのやら。

 パンッと空気の弾ける音とともに、俺の荷物の中から軽装のリサが飛び出してくる。


「ヨバれずトビ出てジャジャジャジャーン!デス!リョータ、再会のKISSをするデス!」

「帰れ」

「酷いデス!?」


 酷いものかよ。仕事以外でリサと関わると、厄介な事にしかならない。


「あの、どちらさまですか…?」

「oh!youがイロリなんデスね!オハツにお目にかかりマスル、meはリサと申すデス!」

「は、はぁ……?」


 突然現れたリサのテンションについて行けず、彩里も大吾も大きなハテナを思い浮かべていた。


「…して、リサさんは、亮太とどのようなご関係で?」


 おっと……?この質問はタブーですぜ、リサさんや。うまく誤魔化してくれよ…?


「コイビトなのデス!!!」

「「「はぃぃぃぃぃぃ!?!?!?」」」

「あっ間違えたデス!meはリョータのチュージツなセイドレイ?ってやつデス!」

「余計に誤解を生むッ!!」


 もう勘弁してくれ……どうして出てきた瞬間から、こうも容易く場を引っ掻き回すんだ…?


 ◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎


「アラタメまして、meはリサっていうデス」


 引っ掻き回された現場を、どうにかなだめて。ようやくリサを落ち着かせる事に成功した。


「初めまして、アタシは種田彩里です…って、もう知ってるわよね?さっきアタシの事を呼んでたし」

「俺は大賀大吾ってんだ。よろしく、リサちゃん」

「二人ともよろしくデス!」

「で?リサはなんでここに?」


 大体の予測はつくけれど。万が一にも任務関連という可能性も捨てきれないからな。

 ちなみに、リサの口走った俺との関係性については、バイト先の先輩と後輩であると伝えておいた。ついでにイギリスからの留学生で、日本語は苦手であるとも。これでもう妙な事を言っても、誤魔化せる。


「リョータに会いにきたデス!」

「それは、わかったから。なんで会いにきたんだ?」

「Summer vacationなんて…ウラメシイのデス!」

「うらやましい、な。そんな事で本当に来たのか?」

「……九割くらいはそうデス」


 ……残りの一割は仕事だってか?ずいぶんと周りくどい指令だことで。


「それよりも、デスよ!ノーリョクは使ったらnoデスか?だとするとmeはすごく困るデス…」

「どう困るんだ?」

「持って来た荷物がOverflowするデス……」

「オーバー……そんなに多いのか?どれくらいだ?」

「トラックいっぱいデース」

「トラックって……車の?そんなにいっぱい運ぶなんて…リサちゃんの能力って何なのかしら?」

「small……small…イロイロな物を小さくする能力デス」

「まぁ、そのくらいの能力なら、別に使ってても大丈夫だぜ!」


 そのくらい、とは甘く見たな大吾。リサの能力は物理干渉する能力としては最強各の一種だぞ。


「それに、リサちゃんの能力があれば荷物の置き場には困らないからな!」

「thank youなのデス!ダイゴ、大好きなのデース!」


 鼻の下を伸ばしている場合じゃ無いぞ大吾。そんな小悪魔みたいなのはさっさと返すに限る。

 そう思っていると、俺の端末がメッセージを受信した。差出人はリサだが、打つそぶりが無いところを見ると、事前に仕込んだ時限式メールだろう。


『サテライトからの伝言です。刺客に気をつけて』


 ……文字化すると、まともに見えるんだけどな。それよりも刺客だと?まさか、ここ最近の事件は全部俺を狙っていたものだっていうのか?それにしては、被害に統一性が無かったと思うが…?


「……ん?続きがあるな…」


『追伸、シノビに狙われるトハ、サスがリョータなのデス!マサシク、ショーグンなのデース!!』


 訂正。文字化しててもリサは馬鹿だった。


 ◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎


 昼食も、夜食も食べ終わり、時刻は七時を過ぎた頃。夏とはいえ、日も落ちかけて肌寒くなって来た時だった。


「そろそろ、いい時間だな」

「何かあるのか?」

「ふふふ……あたぼーよ!」


 含みを利かせた笑いと共に、大吾は荷物の中から懐中電灯を取り出す。


「夏の夜と言えば、なんだと思う?」

「ハイハイハーイ!それはズバリ、ハナビなのデース!」

「花火、たしかにそうだ。だが今回は違うのだよ」

「じゃあ、怖い話とか?」

「惜しい!だがハズレだ」

「なら、お祭りね」

「んん……もしかしてわざと外しにかかってる?ええいくそ、答えはこれだっ!」


 そう言って大吾は、懐中電灯の光を顔の下から当てて見せた。


「肝試し、やるぞぉ」

「ヨーカイ!アヤカシ!オンミョージ!!ムネがタカなるのデス!!」

「最後のは違うと思うなぁ…」


 とは言え。こんな人気の無い廃れた海水浴場で、そうそう都合良く肝試しの場を用意できているとは思えない。

 おおかた、それっぽい所を適当に見繕って探検して終わりだろう。


「と、そう思っている亮太よ。貴様の考えなど筒抜けだっ!」

「なん…だと……っ!」

「ここが廃れた海水浴場など百も承知!そんな海岸を『知っていて』美女を探す……そんな愚行を俺がすると思っていたかっ!?」

「するな」「…するわね」「するデス」

「信頼のなさ!?」


 逆だ大吾よ。そんな愚行をすると、微塵も疑っていない。むしろ率先してやる。


「くっ…まぁいい。ともかくとしてッ!俺は日中の間におあつらえの場所と仕掛けを用意して来たッ!いざ、出陣だァ!!」

「ぷわぉーぷわぉー」


 大吾の馬鹿ノリに、息ぴったりでリサがエア螺貝を吹く。類は友を呼ぶというが、なんというか……。


「……彩里だけだよ、まともなのは」

「そ、そうね、アタシだけよ。大丈夫、別に怖くなんてないから…」

「……あれ?」


 彩里の様子が少しおかしいが……まさか、ねぇ?

ご愛読ありがとうございます


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