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#1俺のクラスは没能力クラス

お久しぶりです!前作の完結から約一年、復帰いたしました!またのんびりゆっくり書いては投稿致しますので、応援よろしくお願いします!

 ーーーーー超能力。

 かつて誰もが空想し、誰もがノートに書き殴った人智を超える特別な能力。長く、その力は想像の中にあった。


 かのジュール・ヴェルヌはこの言葉を残した。

『人が想像できる事は創造できる』……と。


 その言葉の通り、人は、人類は、創造により、その力を手に入れたのだった……。


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「……と、これが現在の人類史上における能力時代と総称される時代になりました。開花物質の注入による超能力社会とはかけ離れた、兵器に頼った昭和、平成、令和と続く道具に頼ったこの時代を、科学終期と呼びます。この頃になると環境問題が浮き彫りとなって、よりクリーンなエネルギーを…」


 ふぁ……っとと、今はまだ授業中だ、いくら眠くなるような現代史だとしても、居眠りは評価に直結する。ただでさえ、成績は下から数えた方が早いというのに、これ以上成績が下がったら留年してしまう。

 ダブる、というのは些か古い言葉だが、とてつもなく格好が悪いぞ……?


「……以上、ここまでで質問は?」


 いけね、早くグラフィックボード(黒板)をタブレットに入力しなくては……。くぅっ…いつもながらデータ転送すれば数秒で終わるというのに……どうして日本の教育委員会ってのはこうも面倒な手順を踏ませようとするんだっ!


「……無いようですね。ではいい時間ですので、今日はこの辺りにしておきましょう。次回は現代と科学終期のエネルギー問題について講義いたします」


 先生が最後の一言を話す途中で、ちょうどチャイムが鳴った。クラス委員長の号令に合わせておよそ三十人の生徒が礼を済ますと、疲れたような緊張感が一気に解ける。


「ふぅぅ……」

「どした、亮太。お疲れか?」

「お?おぅ……日本史ってか世界史は五教科中トップスリーに入るくらい苦手なんだよ…って、大吾はそんな事知ってるだろ?」


 疲れて精神的に参っていた俺に話しかけてきたのは、悪ガキ時代からの親友「大賀大吾(おおがだいご)」。能力は強化系の〈怪力〉で、発動すればダイヤモンドを片手で粉々に砕けるらしい。見た事ないけど。


「フン、あの程度の内容で根を上げるなんて、程度が知れるってものよ」

「そのセリフは俺に数学と化学で勝ってから言ってもらおうか」

「う、うるさい!見てなさい、今度こそギャフンと言わせてアタシの靴を舐めさせて『申し訳ありませんでしたご主人様、ブヒィ!』と言わせてやるわ!」

「舐めねぇし言わねぇよ!つーかなんで俺がマゾ設定なんだ!」


 こっちの高飛車でツインテールと赤いリボンが似合う彼女は、俺の幼なじみ「種田彩里(たねだいろり)」。彩里の能力は念動系の〈発火〉で、好きな時、好きな場所を発火させる能力だ。


「まぁまぁ、そう落ち込むなって。同じ没能力どうし、昼飯と洒落込もうぜ?」

「あぁ、いいぞ。また屋上だろ?」

「し、仕方ないわね。どうしてもって亮太が言うなら、一緒に食べてあげてもいいわよ」

「あ、相手するの面倒だから来なくても……」

「い、い、わ、よ?」

「アッハイ、オネガイシマス……」


 指先に炎チラつかせるのは脅迫と言うんですよ?大吾さんもケタケタ笑ってないで止めてくれませんかねぇ?


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 さて、件の屋上はどうなっているかと言うと。


「で、出遅れたぁぁぁ……」

「これは…ははは……」

「もう!亮太が焼きそばパンかホットドックで悩むから!」

「メロンパンひとつ選ぶのに十分もかけた人に言われたくねぇよ」


 流石、昼休みの人気スポット。上級生同級生下級生でいっぱいだった。


「くっそぉ……いつもの場所が…」

「ま、こればっかりは仕方ないな」

「全く……仕方ないから上に行くわよ。亮太」

「……足場組むの、誰だと思ってんですかね」


 焼きそばパンとコーヒー牛乳を大吾に預かってもらい、財布から小銭を取り出した。おもむろに小銭を腰の少し下に持っていき、俺の能力を発動させる。

 名乗るのが遅れたが、俺の名前は「井堂亮太(せいどうりょうた)」。能力は変化系で〈停止〉だ。


「足場、いつも見たく悪いからな、気を付けろよ」


 そうして俺たちは、屋上へと続く出入り口のさらに上、給水塔の上に陣取った。夏場は涼しくていい場所なのだが、それ以外の季節は底冷えしてぶっちぎりの不人気スポット。しかし彩里の発火能力を使えば、暖も取れるので俺たち三人には年中うってつけだ。


「よっ……と。ほい、亮太の分」

「さんきゅ」


 そして荷物を持った大吾は怪力同様に向上させた脚力で給水塔の上に。これでようやく三人が出そろった。和気藹々とした話が続き、そろそろ昼休みも終わる頃。


「次の授業、なんだっけ」

「年に一度の能力検査よ。忘れたの?」

「ほほう、つまり男女混合でくんずほぐれつ短パンポロシャツでサービスカットですね?」

「その思考回路、炭化するまで燃やせば少しはマシになるかしら?」

「ははは、相変わらず亮太はエロオヤジみたいな事を言い出すなぁ」

「ほんの冗談です、ハイ」


 年に一度の能力検査……という名の、格付け。先ほど大吾の言った没能力というのは、この成績に由来する。何が、というのは…実際に見てもらった方が早いかな。


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 昼休みも終わり、体育用の制服に着替えて体育館へ。そこには能力系統別に専用の機器が設置され、白衣を着た検査官がタブレットに何かを記入している。


「じゃあ、俺はこっちだから。お互い頑張ろうぜ、亮太」

「おう、大吾もな」

「じゃあ、アタシも」


 大吾は強化系、彩里は念動系、俺は変化系のブースへと向かう。大吾はブースで札を受け取るとグラウンドに向かい、彩里は裏庭へと向かう。対して俺は小規模な実験者の中へと案内された。


「ではお願いします」

「はい」


 俺は過去のデータから検査方法を割り出され、専用の円盤を渡される。所定の位置で円盤を固定し、手を離した場所で能力を発動。同時にタイマーが動き出し、十分はそのままだ。続いて検査官側の能力者が円盤を刺激するが、これも例年と同じく全くの無傷不動。そうこうするうちに時間が来て、俺の検査は去年どころか初検査から成長性が無く、評価は標準の一つ下だ。


「検査終了です、お疲れ様でした」


 これでも、初検査の時は標準より成績は良かった。だが能力の干渉領域が物体の外殻……つまり、内側に干渉する事が出来ないと判明した瞬間、標準並に。さらに年齢を重ねる毎に強化されるはずの能力は成長性が無く、今では没能力と成り下がった。


「お疲れ、彩里。どうだった?」

「…結果なんてわかってるくせに」

「分からんぞ?ある日目覚めたら能力が突然変異を起こし、思わず『やだ、アタシの能力強すぎ?』ってなるかも知れんだろ」

「あぁはいはい、わかったわよ。標準の一つ下よ、これで良いかしら」

「おお、って事は没能力同盟は継続か」

「……バッカじゃないの」


 んん?なんで彩里は嬉しそうなんだ?没能力なんだから、少しは悲しめばいいのに。泣いても良いんだよ?

 ちなみに彩里の発火能力。本当に発火させる『だけ』で、発火した火をどうこうする事は出来ない。せいぜい、発火温度の操作くらいだ。世の中には発火どころか火炎操作やプラズマカッター等の上位互換が存在するから、彩里の能力は念動系でもかなり下のヒエラルキーと言えよう。まぁ、火を扱う能力者が人類総人口の中で少ないから、レア度としてはトップクラスと言えなくも無いが。


「ふう……お、なんだ二人とも、もう終わったのか?」

「毎年の事じゃないか。どうだった?」

「聞いて驚け?なんと!身体強化率が上がったぞ!」

「何っ!本当か!」

「あぁ!去年比0.1%!」

「誤差だよ!」


 そんなん俺だって出せるわ!いや、能力上無理だけどね?けどさ、100m9.99秒も10秒も大して変わらないじゃん?追い風とかコンディションでどうとでもなる範囲じゃん?


「はははは、相変わらず亮太は面白い反応をしてくれるなぁ。まぁでも、これで今年も没能力同盟は継続出来るわけだ!」

「ちょっと、あまりくっつかないでくれる?暑苦しいのよ」

「なにおう!?この友情が理解できんのか彩里!一緒に楽しくふざけあう仲!全く、男子高校生は最高だぜ!」

「…ちょっと各方面に怒られてきた方が良いんじゃないかしら」


 盛り上がる三人組に、周囲は冷ややかな目線を送る。能力至上主義のこの社会で没能力は恥ずべき事だ。それをにべもなく笑い飛ばしている俺たちは、さぞや滑稽に見えただろう。でもこれでいい、これでいいんだ。この馬鹿騒ぎが、平和が、どれほど尊く大切か。それを俺は知っているから。

ご愛読ありがとうございます。


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モチベーションに繋がりますので……。

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