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魔法と精霊

話の内容はミルディア神殿の祭司から、とのことだった。


ミルディア神殿


王宮に隣接した神殿で、精霊王の棲みかに繋がっていると言われている。


ただ、一般の人間が入れるのはごくごく手前の<祈りの間>まで。

私も、もちろんそこまでしか入ったことはない。


祈りの間は誰もが祈りを捧げることができる数百人は入ることができる天井の高い大広間で、正面に祭壇と祭祀様がお話をしてくださる台座がある。明るく真っ白い壁と天井に精霊たちの緻密な壁画と天井画が描かれていて、それはそれは美しい。


そしてその奥は精霊王の住まいになっていて...。



あれ?私は祈りの間までしか入ったことはなかったかしら?

う~ん?前世の記憶と夢がごっちゃになっているのかな?


転生して初めて分かったけど、人間の記憶って意外と曖昧なのよね。


数十年以上も生きていると昔の記憶は朧気になってしまうことも多くて、よほどの事じゃないと結構忘れていることもたくさんある。



とにかく、その奥まで入れるのは魔法使いと王族だけ。つまりこの国の神殿を管理しているのは魔法省であり、大魔法使いを筆頭とした魔法使い達が神殿を統括している。


神殿の祭司とは魔法省から派遣されている魔法使いであって、大魔法使いの部下に当たる。

これは、この世界の魔法と精霊が切っても切れない関係だから。


魔法とは、己の魔力を使って行うものと精霊の力を借りて行うもの、この二つに分かれる。


これは子供でも知っている常識だ。そして通常、自分の魔力だけでは小さな魔法は使えるけど、強力な魔法を使おうとするとあっという間に力尽きてしまう。


そこで、精霊に力を貸してもらうのだ。


人間よりも圧倒的に魔力を内包している精霊に協力してもらうことで、自分の魔力を減らすことなく楽に多くの魔法を使うことができる。


ところが、時に自分だけでも強力な魔法を使える魔力量を内包する人間が存在する。


それが、つまり大魔法使いシエル。


彼は精霊の力を借りることなく、どの魔法使いよりも強力な魔法を使うことができると言われている。

だからこそ、いにしえの時から大魔法使いシエルは魔法使いたちの筆頭に立つ存在であり、精霊王と共にこの国の王族を助けてきた。


不敬に当たるため公には語られていないけど、その魔力は時としてこの国の神である精霊王さえも凌ぐこともある…。


と、最後の一文は文献にはない伝説だけど、それ以外の事はこの国の子供たちは幼いころに習う。


で、実際に魔法を使えるか使えないか...。

こればかりは、産まれ持った資質としか言いようがない。


簡単な魔法が一つでもできる、例えば蝋燭に火を灯すだけならできる人間は国民の半分程度と言われている。なので誰でも身近に一人や二人魔法を使える人間はいる。

ただし、そういった簡単な魔法は自分の魔力を使うので限界もあるし、力も弱い。


もう少し高度な魔法を使える人間となると一気に数が少なくなり、更に精霊に協力してもらうような魔法は一般人には無理で、将来の魔法使いを育成する魔法学校に入らないと教わることはないと言っていいだろう。


しかも国が運営する魔法学校に入るのは狭き門で、身分は関係なく才能次第の実力主義。


エリート中のエリートを育てる場所で、当然自分の子供に才能が少しでもあれば挑戦させてみようと親ならば思うだろう。

そして、そのエリートたちが学ぶ魔法学校の代表も大魔法使い様、なのである。


ちなみに、私は一切魔法とは縁がなかったようで前世でも産まれてからも一度も使えたことはない。



と、話が長くなってしまったけどリカルドの話はそのミルディア神殿についてだった。


リカルドはシエルの秘書的な役割を担っているのだけど、その仕事のひとつに神殿との連絡係もある。そこで、神殿担当の魔法使いである祭司に20年に一度行われる祭事について相談されたらしい。


私も前世では参加したことがあるお祭りで、神殿では精霊王を奉る厳かな祭事が行われ、街では市民がお祭りを行う。

国を上げてのお祭りで、身分に関係なく子供から大人まで皆が楽しみにしている。


ちょうど、今年がその年に当たる。今生では初めてなので、私ももちろん楽しみにしていた。


その祭りのため、神殿としては数年前から着々と準備を進めてきたらしい。その準備の中に精霊たちに精霊王からのお声を聞いてもらうというのがあるらしい。


というか、本当に魔法使いの方たちって精霊王と対話できるんだということに驚いた!

何といっても魔法に一切縁のない身だったので、精霊の存在も何というかおとぎ話位にしか考えていなかった。


もちろん、身近にこの世で一番強力な大魔法使いはいるけれど精霊の姿は見たことがなかったし。


とにかく、そのお声を聞こうとしたけど聞くことが出来なかった、と。精霊は気まぐれなことがあるので、何度か試してみたがやはり精霊王からの返事はない。しかも、精霊たちも何か隠しているような気配がする。と。


今までの祭事に、ついての文献も調べてみたがこんなことは一度も無かった。

そこで、全てを知っている大魔法使い様に相談してみてもらえないかと。


それは、もっともだ。20年に一度の精霊祭。失敗があっては大変。


ところがそれに対するシエルの返答は「心配ない。」だった。


流石に全く関係のない私でさえもそれは無いんじゃないかと思える。実際、リカルドは唖然として何とも言えない表情をしている。


「あの~、お父様?」


私は全くの部外者だけど、何も言えないでいるリカルドが可哀想に思え(だって、あの口から産まれたかのような滑らかな喋りが十八番のリカルドが口も聞けないなんて)思わず口を挟んでしまった。


「なんだい?リリアナ。」

シエルは周りの状況には全く頓着せずに聞いてくる。


え~、そんなまるで我が儘な子女のおねだりを聞くような態度で聞かれても…。


「その答えだけでは余りにも皆さん可哀想ではないでしょうか?」


大魔法使いなら解決策を示してくれると確信して相談したのだろうに「心配ない。」だけではいくらなんでも。


「?なぜ?心配ないからそう言っている。」


もう!この男は!頭が良すぎると自己完結してしまうのだろうか。

頭の良すぎる人間は他人に説明するのが面倒になるの?


「ですから、何故心配ないのかを少~し説明して差し上げれば皆様安心されるのでは?」


「それは出来ない。」


「え?!」


つまり、説明はできないけど理由は知っているってこと?


リカルドを見ると困ったように眉が下がっている。そして、すがるような目で私を見ていた。

これは、つまりもっと何かをシエルから引き出して欲しいという無言の圧力。


「なんでお前たちは見つめあっているんだ?」シエルが不機嫌そうに見当違いのことを言ってきた。


「「えぇ~。」」


二人の声が重なると、更にシエルの機嫌が悪くなった。

誰のせいだと...。。だいたい、見つめあっていたわけでは無く圧力をかけられていただけで。


リカルドも小声で「濡れ衣です...。」とつぶやいた。



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