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本当の親子って?

「お茶会のお礼状が届いております。いかがでしたか?お嬢様。」

お茶会はすべて終了して、お礼と今度は自分たちの開くお茶会にぜひ来て欲しいといったお誘いの手紙が次々と来ていた。パトリックが届いた手紙をまとめて私の部屋まで届けてくれる。


シエルも無事に職場復帰して今日はいつも通り朝から仕事に出かけて行き、私は朝食の後、久し振りにゆっくりと居間でお茶を飲んでいた。



「?」いかがとは、何が?

「ご友人になりたいと思われる令嬢はいらっしゃいましたか?」

ああ、なるほどそういうこと。

「そうね、パトリックが選んでくれただけあってもちろん皆様素敵な方ばかりだったけど、一番最初にお会いしたせいかしら、アリス様とローラ様がとても感じが良くて印象に残ったわ。お話していても楽しかったし。あと、グレース様も大人っぽくて物静かな方で、もっとお話ししてみたいと思ったわ。」


お茶会でお会いした3人の様子を思い出しながら答える。

お茶会の席では毎回最初のお茶は私が入れることにしていた。

貴族の娘ならお茶など入れられなくても良いのかもしれないけど、乳母のアンナは私にお茶の入れ方を子供の頃からしっかり教えてくれていた。


「お嬢様。お客様にどんなお茶をお出しするか決めるのは女主人の役目です。自分が美味しいお茶を入れられなければ、どんな茶葉をどのように入れたら良いのかも分かりません。それに、将来お嬢様に大切な方ができた時、その方に美味しいお茶を一杯入れて差し上げれたら素敵だと思いませんか。」

私がお茶を入れる時に乳母の言葉をお話をしたら、この3人は「まあ、良い話ですね。」と真剣に頷いてくれていた。


「では、アリス様、ローラ様、グレース様の3名には今度はぜひそちらに伺いたいと。残りの方にはやんわりとお断りのお返事を。」

「え、直ぐに全員に書くの?」

まさか、また?!招待状を書かされた時の記憶がよみがえってぎくりとする。

「いいえ、今回は別に急ぎませんから、お手紙が来た順にゆっくりとお返しすればよろしいかと思います。」

よ、良かった~。あからさまにホッとする私をちょっと呆れた目でパトリックが見る。

最近、パトリックが私に対して少しずつ色々な表情を見せてくれている気がする。少し我が家に馴染んで来てくれているようで嬉しい。

例えそれが呆れた顔でも...。


「ドルトン侯爵から夜会の招待が来ていると伺っています。異国の夜会を真似て仮装でとのことですが、そちらの衣装はいかがいたしますか?」


そう、アデリーナ様がドルトン侯爵からシエル宛てにお預かりしてきた手紙は、夜会の招待状だった。

シエルと私への。

しかも、仮装とのことで、何かに扮しなくてはいけないらしい。


ドルトン侯爵は主に国政では外交関係を担っていて、他国の情勢や流行にとても詳しい。

物珍しい品物なども多く持っているらしいけど、今回は他国で流行っている仮装をしての夜会を開催する予定でそれにぜひシエルと私も参加して欲しいとのことだった。


「そうね。きっとその辺りはマリー達が喜んで決めてくれると思うけど。それに、まだ出席するとは決まっていないし...。」

お父様の再婚の為には出席するべきだとは思うし、仮装をしての夜会なんて楽しそうだけど、お茶会でのシエルとアデリーナ様を思い出すと気乗りはしなかった。


できれば、参加しなくて済めばいいのにと思っていたから罰が当たったのだろうか。





「本当に?」

仕事から帰ってきたシエルがドルトン侯爵の夜会に参加すると言ってきた。

シエルが自ら夜会に参加するなんて、季節外れの雪でも降るんじゃないかしら。


「...。ああ。」

あれ?あまり乗り気じゃない?


「お父様?どうなさったんですか?いつも気が乗らない夜会なんてサクッとお断りされるのに。」


「…。いや、今回は参加する。」

まあ、子供だってもう少し言い訳とか理由を述べようとするでしょうに!





「なんか変なのよね。態度がコロコロ変わるって言うか一貫性がないって言うか。」

今日は、だいぶお腹が大きくなった乳母が屋敷に遊びに来ていた。

ご主人がワインの配達をする荷馬車で一緒に来て、彼が他の配達先を回っている間に、私と一緒にお茶をして待っていることにしたのだ。


「そうですか?わたしからしたら旦那様はお嬢様に対しては最初からそんな感じでしたよ?」


「え?お父様が?」どのあたりが?


「何ていうか、お嬢様の事はものすごく愛していて可愛いと思っているのは分かるんです。お嬢さまとそれ以外の人に対する態度が明らかに違いますからね。けど、じゃあべたべに甘やかすかというとそういう感じでもないですし。まあ、庶民と違って貴族のお子様は親がおしめを替えたりするわけじゃありませんから、そういうものかと言われればそうなのかもしれませんけど。うちの旦那なんて、子供にべたべたですからねぇ。いつか、嫌がられる時が来ますね、あれは。」

ちなみに、乳母は今回が二度目の出産で、一人目の子は女の子だ。



「それにしても、こんなお腹で出歩いて大丈夫なの?」

「大丈夫ですよ。それに、産まれたら当分顔を出すことが出来なくなりますからね。今の内に社交界にデビューしたお嬢様の様子を見に来たかったんですよ。」





「それで、旦那様ですが、何ていうか、遠慮しているというか、大事にし過ぎているというか。腫れ物に触るように接しているというか。やっぱり、テレがあるんですかね?年頃の娘に対して。」


「照れ?あんなに長生きしているのに?」


「まあ、それは失礼じゃありません?生きている年数は関係ないと思いますよ?」


ただ単に子供に慣れていなかったんじゃないかしら?

前世でも子供と触れあっているシエルなんて見たことないし。まあ、子供どころか他人と触れ合っているところも見たことがないわね。

それにしても、周りから見るとそんな風に見えるのね。


まあ、前世と違って夫婦という訳じゃないからスキンシップがそれほどないのは気にならなかったけど、娘に対する態度としては他人行儀に見えるのかも。小さい頃は抱き上げてもらったり膝に乗せてもらったこともあるけど、年頃になってからはもちろんそんなこともないのが当然かとは思っていたから気にも留めなかった。確かに前世での本当のお父様は結婚する直前でも良く抱きしめたり頬にキスをしたりとしてくれてたわ。


すっかり忘れていたけど、本当の親子だとそんな感じだった。


「そうね、お父様と私は本当の親子になろうとして上手くいっていないのかもね。」


「お嬢様…。」

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