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親子喧嘩勃発?

屋敷に帰ると玄関ポーチでシエルが両腕を組んで仏頂面で立っていた。

無言で抱き上げて馬から降ろされる。


一応ありがとうございますとお礼を言ったけど返事はなかった。

代わりに直ぐに夕食にするから、着替えたらダイニングへ来るように言われて屋内へと入る。


「ハインツ、報告を。」


扉が閉まる瞬間にハインツに声を掛けるのが聞こえた。



自室に行って、コートを脱いでブーツを部屋履きに履き替える。

手伝ってくれるマリーとサンドラが心配そうに聞いてきた。


「旦那様がお帰りになってからピリピリとされていて、どうなさったのですか?」


「あの美貌で凄まれると誰も近づけなくて...。さすがのパトリックも躊躇していました。」


あ~、たぶんマダムローズモンドの店での顛末がある程度伝わっているんでしょう。警備兵がお城へ報告しているでしょうし、あれだけ派手に街中で事件を起こせば魔法省のトップに隠し事は出来ない。


今頃ハインツが詳しく報告しているでしょうし。


これは、覚悟を決めて掛からないと、外出禁止でお茶会もなし!何てことになりかねない。


「それが、マダムローズモンドが柄の悪い男達に脅されていて。それを、ハインツが助けてくれたのよ。」


「え!!そうなんですか?」

「お怪我は?!」


二人が驚いて聞いてくる。

「それは、大丈夫。ハインツがあっという間に捕まえてくれたし。もちろん、マダムも無事よ。」


二人がホッとしたように安堵の息をもらす。


「それは良かったです。いったいどこの誰がそんなことを!」

マリーが顔を真っ赤にして本気で怒っている。


「それは、まだ分かっていないけど。二人捕まえたからそこから調べてくれるんじゃないかしら。街の警備兵にもまた同じことがないように、マダムの店を気にかけて欲しいとお願いしておいたから。」


「マダムが人気があるからライバル店からのやっかみでしょうか?」サンドラも心配そうに聞いてくる。


どうかしら、マダムのお弟子さんは違うような事を言っていたけど。まあ、証拠がある訳じゃないようだし。


「まあ、それは調べてくれるのを待ちましょう。それより、このままだとお父様からお茶会中止!なんて言われかねないわ。」


「え?!そんな!」

「それは、嫌です!」


「分かっているわ。何とか頑張って説得しないと。」

私は、何と言い負かそうかと戦闘体勢に頭を切り替えた。


夕食の席へとダイニングへ降りていく。

既にシエルは席に着いていた。


「お待たせしました。」チラリとシエルの顔を伺って席につく。

さあ、どうやって説得しよう。


「リリアナ。」

「はい。」


「ハインツから今日の状況は聞いた。」

「はい。」


「マダムローズモンドにはしばらくの間、特別に護衛をつけるように手配した。」


「まあ、ありがとうございます!」

驚いた。まさかシエルが、マダムの事を気にかけてくれるとは思わなかった。

思わず笑顔でお礼を言う。

街の警備兵だけでは心配だったので、お願いできないかと思っていたところだった。

ハインツがシエルに口添えしてくれたのかしら?


「それで、主犯は誰か分かりましたか?」

今日来ていた男達は明らかに雇われているような輩だったからだ。


「いや、ハインツが捕まえた二人は逃げたもう一人の男から紹介されたらしい。酒場で3日程前に初めて出会って、言われるままにあの店に来ただけで、終わったら報酬がもらえるはずだったようだ。」


「まあ、あの逃げた男が主犯と繋がっていたなんて!

ハインツに追い掛けてもらえば良かった。」


「それは駄目だ。ハインツの判断は正しい。お前の護衛なんだから、離れるのは無理に決まっている。」

まずい、余計なことを言ってしまった。

「はい。」

ここは大人しく返事をしておく。


「でも、今回は私が狙われたわけではありませんから。」

一応、その辺りは誤解の無いように言っておかないと。


「…。」


あら?シエルからの返事がない。


「今回はたまたまマダムのお店に行った時にあんなことに巻き込まれただけです。」

もう一度、念を押す。



「リリアナ?」あら?何かシエルから冷気が漂ってくるわ。


「はい?」でも私は気付かない振りをして返事をする。


「ハインツが言うにはマダムローズモンドは注文内容で脅されていたそうじゃないか。」

まあ、ハインツったらいつもいい加減に見えていたけど、筋肉だけじゃなかったのね。すっかり、騙されていたわ!


「なかなか、注文を受けてくれないと有名な王妃様お気に入りのマダムはお前の服なら喜んで作るらしいじゃないか。」


「そんな、喜んでと言うわけではなく、たまたまマリーとサンドラが気に入られただけで。」

まあ、実際はマダムの一存でのような気がするけど。


「例えそうだとしても、他の注文を後回しにしてリリアナの注文を先にしたんだろう?逆恨みされてもおかしくない。犯人が分かるまで、当分外出は控えなさい。」


やっぱりそうなりますよね...。

「でしたら、お茶会は構わないですよね?場所はこの屋敷ですから。」


シエルの眉頭にしわが寄って不機嫌そうな顔になる。

「でも、招待状も出してしまいましたし。」

ここで、負けてはいけない。食い下がらなければ。


「…わかっている。茶会は許す。」


え?本当に!?

意外に呆気なく許可がでたので驚く。


「その代わり、私も屋敷に居ることにする。」


「え?屋敷に?いつですか?」


「茶会の間ずっとだ。」


茶会の間ずっとって、1日だけじゃないんですよ?


「お仕事は?精霊祭の準備は?」

さすがにリカルドが切れますよ?


「大丈夫だ。家でやる。」


え~。家でできるんですか?


「そんな、公私混同で陛下たちに怒られますよ。」

いくらなんでも娘のお茶会のために自宅で仕事をしますなんて!

何を言っているんでしょうこの人は!


「…。」

あら?また、無言?


何故か少しの沈黙のあと物凄く悔しそうにシエルが続ける。


「陛下達の許可は出ている。特に、王妃からは是非リリアナの側にいるようにとの事だ。」


ああ、なるほど王妃様から言われたのが嫌だと。

どうして、二人はこんなに仲が悪いのかしら。

似た者同士の同族嫌悪?

確かに二人共、ちょっと他にはないほどの美貌で、毒舌家なところはそっくりね。私に対しての過保護なところも…。


だいたい、王妃様なんてお子様達にはそれほど過保護という感じではなくて、どちらかと言うと躾に関しては結構厳しい。

もちろん、将来この国を背負っていかなければいけないお子様方だから仕方ないとは思うし、きちんと母親としての愛情は注いでいるのは誰の目から見ても分かるけど。

私に対しては、何と言うか無条件に過保護なところを発揮する?

ような気がする。


まあ、自分の子供じゃないと逆に甘やかしてしまうというのもあるのかしら?



「なに、茶会の邪魔はしない。最初に挨拶をしたらあとは書斎で仕事をしている。」



こうして、我が家で開催されたお茶会は毎回お嬢様方の悲鳴で始まることになった。



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