存在価値の無い人達
2015年1月20日
僕を含めた十人の人たちが倒れている。人々から捨てられた僕たちは不遇の存在だ。生物が全員特殊な能力を持つこの世界は理不尽だ。こんな世界だから僕たちは捨てられた。邪魔だから捨てられた。
誰も立ち上がらないな。当然か。そんな気にならないんだから。そしてすでに大半が亡くなっているから。ここで死ぬのを待つか。その方が幸せかもな。僕たちが幸せでいられるはず無いんだから。
いや待て、なんで僕たちが死ななきゃいけないんだ? 可笑しいだろ。何もしないで死ぬなんて嫌だな。僕だけでも立ち上がって努力しようか。こんな理不尽な世界に反乱するんだ。
「やってやるぞおおおおおおおおおお!!」
「うわあ!?」
僕は立ち上がって叫んだ。すると、それに驚いて少女が起き上がった。
「びっくりした! 急にどうした?」
「僕はこの世界に反乱するって決めたんだ」
「なるほどな」
少女はあっさり納得したようだ。反論はしてこなかった。
「それなら私もやってやる! 反乱してやろうじゃないか!」
「やってやろう!!」
僕と少女は団結した。決意は固い。そういえば自己紹介をしていなかった。
「名前を言ってなかったね。僕は黒田直人」
「私は月島寿輝だ。あと一応能力も言っておこうか。私は分からないのだが」
「分からない? 無いとかではなくて?」
「回復系らしいのだが幾らやっても効果が無かったんだ。それでここに捨てられた」
「そうなのか」
「黒田直人はどんな能力だ?」
「無い」
「えぇ・・・」
このことで困惑した反応をした人は初めてだ。今までは笑われていたから。僕たちは立ち上がったが、周囲には死体が転がっている。せめて埋めてあげようと思った。
「この人たちは埋めてあげようか」
「そうだな。安らかにとはいかないと思うが」
僕は手で地面を掘る。ここは雨が常に降っているので土は柔らかい。僕が地面を掘っていると、月島寿輝は死体を見て喋りだした。
「この女の子、昨日まで少しだけ意識があったんだ」
「なんかごめん。僕が昨日立ち上がっていれば」
「もう限界だったんだろ。仕方ないか」
月島寿輝はそう言いながら死体の少女に能力を使った。傷を塞いであげようと思ったのだろう。僕は人が一人入れるほどの穴をあけた。
「ん?」
「ん!?」
死体の少女が目を開いた。月島寿輝は驚いて大きな声を出した。僕は月島寿輝の声に反応してそこに向く。
「どうした?」
「生き返った! この女の子が生き返った!」
「ええ!?」
「な、なに?」
死体だった少女が起き上がった。僕と月島寿輝は驚いて一歩引いた。この状況が僕と月島寿輝は理解出来なかった。ゾンビかとも思った。
「なんかちょっと元気になったよ。回復してくれたの?」
「一応したけど・・・」
これはまさか! 月島寿輝の能力は死者を蘇らせる能力なのか!? だとしたら回復系なのに効果が無いのも納得がいく。月島寿輝は今まで死体に能力を使ってこなかったのだろう。まあ死者は生き返らないので使うなんてことは無いか。てことは月島寿輝は禁忌な能力を持っているってことか。もし知られていたら月島寿輝はもっと大変なことになっていた。
「他の死体にも使ってみる?」
「やってみる」
月島寿輝は七体の死体に能力を使った。完全に腐っている死体もある。起き上がったらゾンビになるのだろうか。
「ん? なんだ?」
「あれ? 生きてる!?」
「あれれ?」
「状況が理解出来ない」
「・・・・・・・・・・・・」
「苦しくないぞ?」
「へ?」
七人は全員生き返った。僕は驚愕したが、月島寿輝はもっと驚愕していた。ついでに先に生き返った少女も驚愕していた。七人は困惑している。
「わ、私はき、危険生、物・・・」
「大丈夫、大丈夫」
月島寿輝は動揺し、慌てている。
「私は味方だ!」
「うんうん通報とかしない。そもそもこの世界に反乱しようとしてるんだから気にしない気にしない」
僕と月島寿輝の様子を見て、八人は状況を理解したようだ。自分たちは月島寿輝によって生き返ったのだと。
「皆さんには詳しく説明しておきますね」
僕は今の状況を詳しく説明し、決意を語った。
「貴様のような奴が出てくるのを待っていた! みんな! やってやろうぜ!」
「「「「「「「おおおおおおおおおお!!」」」」」」」
皆立ち上がり叫んだ。全員賛同してくれたようだ。一人は無口のようだが、手を動かしてで賛同してくれた。そして自己紹介をした。
「僕は黒田直人。能力は無いけど気にしないで」
「私は月島寿輝。能力は・・・死者蘇生だと思う」
「宗谷早里だよ。能力は弾丸飛ばしだよ」
「俺は赤坂銀河だ。能力は飛行だ」
「亀山交差だ。能力は強化だ。ほんの少しだが」
「あたしは魚住影那。攻撃系の能力だ」
「私は・・・西高東間。能力って言っていいのか分からないけど真似ること」
「名前は忘れた。崩氏って呼んでくれ。能力は知らない」
「坂下奇跡です。能力は弾をはじくことです。このテニスラケットで」
「・・・・・・・・・・・・」
無口の少女は枕崎夜奈という名前で、能力は不明だ。
反乱するわけだがどうすればいいのかを皆で考えた。その結果、強くなる為に世界を回ることになった。この世界は能力者ばかりで国境を勝手に越える者が後を絶たないため、国境を勝手に越えても良くなってしまっている。それを利用して世界を回るのだ。
「全ての国に行って力を得よう!」
「ちょ、海はどうやってわたるのだ?」
「泳ぐんだ」
「うえぇ・・・」
皆は準備を整えて、出発した。僕たちがいるのは日本から切り離された孤島で何故か常に雨が降っている。僕たちは日本には行かずに韓国に行くのだ。日本人に見つからないように深夜に行った。日本の陸にも近づかないようにして。
僕たちの旅の始まりだ。