プロローグ
初投稿です。
「Dream Online」
2078年2月18日、その日付が変わろうという瞬間、すべての放送局の番組に一本のコマーシャルが挟み込まれた。
それはわずか数十秒の映像であったが、各界の有名人によって討論される数十年間進展を見せていない資源問題や売れない新人芸人の今後をかけた渾身のネタの披露よりも確実に人々の心をつかんで見せた。
画面が一瞬白く染まりそれは映し出される。まるでヨーロッパの中世を思い浮かばせる街並みに、いかにもファンタジーの商人が乗っていそうな馬車が街道をかけていく中で一人の銀色の甲冑に身を包んだ人物へと視点が変わる。
そして場面は変わり、森の中で先ほどの甲冑の人物が、茂みから飛び出してきた3体のトカゲのような体を持つ人型の生物に不意を突かれて倒されてしまう。が、死体となった甲冑の人物の体が光になって消えてしまう。そして次に映し出されたのは頭からヘッドセットを外し、自室と思われる部屋で悔しがる男性だった。
そして画面は白く染まり、映し出された「Dream Online」の文字。
それはおよそ70年の年月をかけて完成された、完全没入型VRMMO第1作目の産声であった。