相合傘はあなたと
しとしと、ぴちゃぴちゃ。
夏空が見えたと思った午後、突然雨が降り始めた。
学期末のテスト、一日目が終わった。
遊びたいが勉強しなくては。
そんなことを考えながら、池澤貴俊は昇降口で空を見上げていた。
「傘、どこ置いちゃったかなー?」
教室のロッカーに折りたたみの傘を入れておいたはずなのに、それが無くなっていたのだ。
自宅に置き忘れた可能性もある。
そして、今日は雨の予報はなかったため、貴俊は傘を持ってきていなかった。
「走るか……」
「あれ、池澤じゃん」
「赤城……」
「何してるのー?」
「傘忘れたの」
「あぁ、それで雨止むの待ってたのね! まぁたぶん止まないよ」
「だよな」
同じクラスの赤城志穂。
彼女は鞄から折りたたみの傘を取り出しながら、昇降口を出る。
「……入る?」
「いいのか?」
「途中までで良ければ」
「サンキュー」
志穂の傘に入れてもらうも、貴俊の方が背が高いので、傘を持つことに。
水溜りを避けながら歩いて行くが、やはり水は跳ねていく。
「いやー、運が良かったね! 池澤」
「ハァ? 何が?」
「私と相合傘、出来て」
「……キモイこと言うなよ。お前となんかしたくなかったわ」
「はぁ!? 私と相合傘したいった人はわんさかいるのに!?」
「わんさか? はい? ちょっと頭の検査してもらえよ」
「傘返せ!! この土砂降りの中、転んで風邪でも引け!」
志穂が貴俊の持つ傘の柄を奪い取ろうとする。
しかし、貴俊は奪い取られまいと志穂の手を振り払う。
「悪い、悪い! お前と相合傘出来て幸せです!」
「ふふーん! よろしい」
「ったく……」
空はまだどんよりと重い。
風も、先程より少し強くなったようにも思える。
分かれ道に差し掛かった。
二人はここで別れなければ分からない。
「あ、ここ右で」
「は? お前ん家、左じゃなかったか?」
「いいの、早く右」
「はいはい」
二人は再び歩き出した。
テストはどうだ、部活はどうだ、などの話をしていた。
「あーあ。こんな所、宇野に見られたら勘違いされそう」
「りりあん?」
「りり、あん?」
「そう、りりあん」
「……宇野は、利李杏だろ?」
「そうだよ。でも、最後の『あ』が『あん』って読むから」
「なるほど」
「で? りりあんのこと、好きなの?」
「え、あ……」
しまった。というような、表情を浮かべるが、あんなにハッキリ言ってしまえば、バレるはずだ。
志穂はニタニタを笑みを浮かべていた。
「へぇ〜、りりあんが好きなの〜。へえ〜」
「本人に言うなよ……」
「はいはい。私の心の中に閉まっといてあげる」
「チクショ」
そうこうしている内に、貴俊の自宅に到着した。
「あれ?」
「はい、お疲れー」
「なんで?」
「あそこで別れたら、アンタずぶ濡れになるでしょ。傘入れてあげた意味無くなるじゃん」
「あぁ……、そう。ありがとう……」
「お礼は、一粒千円のチョコでいいよ!」
「たけーわ! でも、まぁお礼するよ。十円チョコとか」
「ケチッ!」
そんなことを言いながらも、志穂は貴俊に手を振り、来た道を戻っていく。
貴俊がいないとこを確認すると、電話を掛け始めた。
「あ、りりあーん? うん、聞いたよ! え? あぁ、両思いだよ……。やったね! これで告白する勇気出てきたね! え、なんのなんのこれしき。じゃあまた明日ねー!」
電話を切ると、ゆっくりと空を見上げ、溜息を吐く。
「恋のキューピット、か……」
近くの小さな水溜りを一つ蹴ると、水がピシャリと跳ねる。
「まぁ、いいか……。疲れるけど……、テーマパークの無料チケット手に入ったし! これで玲くんと久々のデートだ、やっふー!!」
まだ雨は降っているのだが、傘を振り回しながら、志穂の自宅へと帰って行った。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
「相合傘はあなたと」
とは、貴俊は利李杏と。
志穂は玲くんと。
お互いに好きな人としたいなーって思いながら、二人で相合傘してます笑
志穂に関しては、そんな素振りないので、分からないと思いますが、こんな想いを込めて書きました!
志穂は貴俊のことが好きで、利李杏に協力するのが嫌だ。というような雰囲気を出したかったのですが、出てましたかね?
まぁ、志穂には6つ年上の彼氏がいますが。(近所に住む幼馴染みです)
中学生か高校生を明記しませんでしたが、それはご自由に読んでくださって構いません!
それでは、この作品はここまで。
長々と失礼しました。
ありがとうございました!
次も宜しければ、読んでくださると嬉しいです^^*