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怪盗クルスロイアー 共通①


“おいつめたぞ怪盗!”

“残念ながら私は捕まえられるわけにはいかないのさ!”


「探偵小説っていいわよね」


本を読みながら予告状の時間まで待つ。


「怪盗の貴女が何をおっしゃるのやら……」


補佐役の執事フェフトが興醒めな事を言った。


「だってね」


巷を騒がせる女怪盗の私には、名探偵に追われてみたい願望がある。


「できればイケメンで、私と禁断のロマンスがスタートするのよ」

「お嬢様、イケメンならポリスでも良いのでは?」


イケメンなら何でも良いわけではない。

この執事には乙女の夢がわかっていないわ。


「まあいいわ、予告の時間より五分早いけどミッション開始よ」


持っていた本を投げ捨てて展示場へ乗り込む。


「いってえええ!?」


なんだか誰かの声がしたけど、今はどうでもいいわね。



「なんだいきなり転んで」

「いやそれが、なんか足元に落ちててさあ……」



今日もなんとか切り抜けられたが、最近は魔法だけでなくテラネスの科学的な警備システムも導入されて侵入が厳しい。


「まったく、明日の授業に響くのよね……」


フェフトには衣装と盗んだ杖を回収してもらい別行動となった。


「いったーい!」


なにかと思えば、私が投げ捨てた本じゃないの。


「あ、だれよーこんなところに本なんておとしたのー!」


一応は私の所持品だから拾っておかないとね。


「大丈夫か」


黒いマントの男が私に手を差し出す。


「え、ええ」


街灯があるとはいえ、薄暗くて顔はハッキリわからない。


「……今宵の月は欠けている」

「そうね」


男は月を見て嘆いている。


「せっかくお前のような美しい女と会えたのにな」


暗いのにまるで私の顔が判るような口ぶり。


「……!?」


男はそのまま路地へ去っていく。


「変な男……」


私は小走りで屋敷への帰り道を行く。


「やっと帰れたわ」


探索防止に左右別々の他人の靴で歩くのは面倒だった。



「普通はね、昨晩あたりに探偵と遭遇していても変じゃないのよ」

「お嬢様、今時探偵ごっこをする学生が存在するとお思いですか?」


フェフトの居るわけないという意図がある問いには確かにそうだとしか言い様がなくて、しかし認めるのは癪なので黙る。


「いないなら探すしかないわ」


しかし貴族なのであまり外を出歩けない。


「お嬢様、今日は学園があります」


私は学園の精霊科の生徒で、探偵活動の応用に精霊を使役する魔法を習っている。

属性の精霊を扱うのは杖より当人の資質が関わるが、杖が無いと自身の魔力が安定しない。

けれど怪盗中に片手が塞がるのはよくない為に成績はよくならず悩ましい。


「そうだったわね」


――探偵を探すのは出来れば外が良かったが、諦めて普通科に行ってみるしかないだろう。


■■


「ここが普通科ね」


授業を終えて放課後になり、堂々と探索が出来る。


「あれ、精霊科のロイア・ルキュスじゃん」

「あの子可愛いよな」


普通科の男子が私を可愛いとか付き合いたいだとか、誉めている。

精霊科ではそんなこと一度も無かったのに不思議ね。


「おい女、精霊科が何でここにいるんだ?」


彼は普通科では有名な不良生徒のシャービット・ガレノトだ。


「ねえ、探偵を探しているんだけど知らない?」

「オメェ頭沸いてんのか、探偵なんざ今時の小学生でも探さねえだろ」


今時の小学生ならまだ探偵を探すしむしろ探偵をやるのでは?


「探偵部ならあるよ」

「え!?」


青髪の男子とピンク髪の男子が現れて私とシャービットにチラシを手渡す。


「部活一覧を見てごらん」

「右下かよ……」


とんでもなく影が薄いらしい。

因縁もないのにこんなアッサリ出会うなんてガッカリだわ。


「私探偵部に入部します!」

「でも科が……」


タブレットを見れば学園の案内に細かくそう書いてある。


「えー!?科が違うと部活に入れないの?」

「そういう決まりらしいからね」


探偵部に入るには普通科にならないと駄目なのね。

――って、私は探偵部に入るんじゃなく追われたいのよ。


「じゃあ探偵をしている皆を観ても駄目なの?」

「それは見学だから良いんじゃないかな」


私は探偵部の活動を見に行くことになった。



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