B・探偵ごっこ。①彼女はミステリードラマのマニア
私は某ミステリードラマの影響で事件に首を突っ込んで解決するという事を日夜夢に見てきた。
実行するには私は主人公らしさが足りないしただの学生で、家も平凡で困った時に翳す権力もない。
でも人一倍変わり者だと言われてきた私はきっと探偵が向いているんじゃないだろうか、きっと現実世界でフィクションを実行する奴は私の他にいない筈だ。
「おまえ探偵になりたいんだって?」
「なっどこでそれを!?」
「試しに先生のカミさんが口聞いてくれない理由を推理してくれ」
「密室殺人とか探偵っぽくない案件は専門外でーす」
「そこをなんとか」
「どうせ、先生が奥さんの前で飯の味付けが気に入らないと言ったか、家事を手伝わないとか足がクサイとか」
「すごいじゃないか全部当たってるぞ」
「先生はモブなんですからこれ以上出ないでくださいよ、やたら出番があるとメインキャラだと思われちゃう」
「つめてえな…」
「相手役は二歳年下のイケメンがいいなあ…」
「おれはカミさんいるからなあ悪いな」
「それ以前に先生はイケメンでもハンサムでもないし小太り中年ですから」
あと、出番が増えると先生の奥さんが被害者か容疑者になってしまいますよ」
「じゃあ毎回出番がある(事件で犯人候補免除)三枚目でもいいから」
「はあ…」
「夏割さーん」
「あっあれは!!ナンバーワンではないけれど学園でも結構人気のあるイケメン1年!(名前しらない)そんな彼が私に手をふっている?」
というかなぜ私の名前を?
「おーいここ学園じゃねえぞー」
先生のツッコミは聞こえているがスルーして、後輩くんの話を聞くことにした。
「昨日うちの家宝のホルマリンケースがなくなったんだよ」
「事件ですかな!?」
待ってまし…ホルマリンケースってなんだろう?
「それがね、どういうわくか天井で見つかったんだ」
「見つかったんだ…」
残念だなあ。
「ちなみにホルマリンケースっていうのは化学で使う生物を腐らせない液体を入れておくガラス瓶の呼称で、そう呼んでるのは家の一家だけなんだ」
こっそり携帯で調べたが、なんとなく答が違う理由がわかった。
「もしかして貴方の家はお医者さん?」
「うん、千影院総合病院って知ってる?」
「あの有名な病院!?もちろん知ってるよ」
彼とは初対面だし、名前もうろ覚えだったから気がつかなかった。
興味がなかったからとは言えないよなあ…
私はミステリーやサスペンスドラマの展開を日常的に求めている。
だからそういう場面に期待できない周囲とは広く浅くの付き合いでいいのだ。
「これ皆には隠してるから僕と二人だけの秘密だよ?」
なぜか大病院の御曹司に好かれているようだ。
「あのー応先生も知ってるんだがなあ」
「もしかして僕の名前知らなかった?」
「えっ!!?」
なんて鋭い洞察力なの…私より探偵に向いている。
「いつも名前を教えると皆にあの大病院の!?って聞かれるから違うことにしてるからさ…」
「それと気づいていないかもしれないけど夏割さんすごく有名人だよ」
「え!?そうなんだ」
もしや、夢に一歩近づいた――――?