執事と直感
「ぅりゃぁ!!」
勇人の掛け声と共に芋虫型MOBダンジョンワームの胴体が真っ二つに割れた。真っ二つにされたダンジョンワームは鈍い声を上げて消えていった。
「あ゛ぁ~じかれた~……」
「この光景を見たファンたちはどう思うだろうな……」
短めのファンファーレと共に現れたウィンドゥをサッサと閉じて大の字で倒れ込む勇人を見ながらホルスが苦笑を漏らしながら近づく。
「どうだ? 少しは慣れてきただろ?」
「……そりゃ嫌でも慣れますよ。DEF低い奴がナイフ一本で敵の群れに突っ込んでいくなんて自殺行為に等しいエンカウントをひたすら繰り返してんですからね!」
二つ目のポーションを飲み干しながら勇人が嫌味ったらしくそう漏らすとが、当のホルスは小さく笑うだけであった。
「他人事だと思って……」
「いや~すまんすまん。でもこれも今後のことだと思って頑張れ! ほら、また来たぞ?」
「……援護頼みますよ?」
悲痛染みた声を漏らしながら勇人は再びナイフを構えてMOBと対峙する。
今、勇人達は最下層を目指して道中会うMOB達とエンカウントを繰り返しながら進んでいる。サッサと戻りたいのならMOB無視して進んでしまえば良いと考える人もいるだろう。しかし、彼等には、おもに勇人にはどうしてもひたすらエンカウントを繰り返す理由があった。
それは、接近型のプレイヤーの対処する術を身に付けることである。
勇人みたいな遠距離系の武器を使うものの最大の弱点は、相手の間合いに入ることだ。
遠距離系のプレイヤーは、主に離れたところから魔法なり矢なりをバンバン撃って敵を殲滅するのを基本としているが、遠くから敵を狙ってるために回避などのスキルが乏しく、DEFやSPDもあまり高くない。もし、相手の間合いに入られたら、成す術もなく白いポリゴンと化すだろう。それ故に、遠距離型のプレイヤーでも接近戦の対処法を身に付けるために、サブに接近系の武器を使うことが多いのだ。
しかし、勇人はメインは弓、サブは針と両方とも遠距離型とゲームの常識を逸脱している。接近戦になった場合、最悪弓で叩くか、矢を持って突き刺すかぐらいしか方法がなく、尚且つ火力も皆無でリーチも短い。こんな状態で相手の間合いに入っても、速攻で剣の錆と消える定めだ。
その事を踏まえて、勇人は片手剣の熟練度とスキルの強化と、接近戦での立ち回り方を特訓しているのだ。
幸い、狩人はどの職業よりもSPDの伸びが良かったので、相手の周りを跳ね回りながら隙をついて攻撃し直ぐに引くヒット&アウェイを基本とした立ち回り方を確立することが出来た。なので、今は基本的に片手剣のスキルLv上げをしている。
そうこうしている内に、勇人はコウモリ型MOB『ブラッドバット』の群れを打ち負かした。片手剣の使い方も大分分かってきたし、CvLvもスキルLvも良い感じに上がってきた。更にアーツや魔法も何個か使えそうなのが習得できた。
「こんなもんで良いんじゃないんですか?」
「まぁ始めに比べれば良いんじゃねぇの? 立ち回り方も大分様になってきたし、剣捌き、体捌きも近戦並みにはなってきたし」
剣を鞘に納めながら問い掛ける勇人に、ホルスはポーションを投げ渡しながらそう答える。因みに、ホルスは勇人が戦う後ろの方で色々と指示を飛ばしたり、危なくなったら援護したりと色々と頑張っている。
その後、二人は何度かエンカウントをしながらだダンジョンを進み、遂に下へと続く階段の前へとたどり着いた。ホルスの話を信じるなら、次が最下層であり、BOSSがいるハズだ。
「いてほしくないなぁ~……」
「そうなるといいな? あ、あとSPDかATK上げる魔法かけておいて」
「いいですけど……、随分慎重ですね? たかが初級のダンジョンですよ?」
「グラズリーであの手強さだったからダンジョンBOSSとなるとそれ以上に手強いと思うだろ? それにアイテムも残り少ないしまず何よりも早く帰ることが第一目標だからな」
ホルスはそう笑いかけながら階段を下りていくのを、勇人はスペルを読み上げながら後を追って下っていった。
階段を下りた先は一つの大きなフロアであった。
フロアに足を付けた途端、壁についていた松明が一斉の燃え上りフロア全体を薄暗く照らした。薄暗くてよく見えないが、勇人たちが立っている場所から離れたところに、大理石で作られた祭壇と年季の入った大きな箱が鎮座し、その周りを取り囲むように無数の大理石の柱が立っているのが見えた。
ひとまず、勇人は鷲の目を発動して周りに何かいないかを確認する。
フロア全体を取り囲む複数の巨大な岩があちこちに転がっている以外目立ったところもなく動き回るMOBの姿もない。
「BOSSは……いないみたいだな」
「MOBもいませんね……。この情報は後で掲示板にでも貼り出しときましょうか?」
「そうだな。んじゃ、トットとずらか……」
ホルスがそう言いながら一歩踏み出したとき、突然地面が、と言うよりもフロア全体が大きく揺れ出した。
「な、何だ!?」
「……! ホルスさんあれ!!」
勇人が指差す方向には、先程までアチコチに転がっていた巨大な岩が見えない何かによって祭壇の方へと吸い寄せられていくのが見える。
「コイツは……」
額から冷や汗を流すホルスの先で、吸い寄せられた岩が密集して形を成していき、遂に一つの巨大な石像となった。
体長は勇人の身長の三倍ほど、全身不規則な形の岩で形成されたためか、かなり歪な形状をしている。首から上がなく、胸の辺りに目らしきものが付いていて不気味に光っている。そして何より目を見張るのが、身体と不釣り合いなほど太く長い腕だ。
「よりにもよって、ゴーレムかよっ!?」
ホルスがそう悪態をつくのと同時にゴーレムがその長い腕で横薙ぎに振ってきたので、二人はジャンプして腕をかわし素早く距離をとった。空振りした腕は祭壇を守るように立っていた柱の一つに直撃し、マッチ棒を折るかのように柱を真ん中からへし折った。
「その辺の岩がそれよりも固い大理石をへし折るたぁ……やってくれるじゃん」
大剣を構えながらそう呟くホルスの後ろで、勇人は複雑そうな表情をしていた。
(この戦闘……分が悪すぎる)
今目の前にいるゴーレムは、恐らく高いATKとDEFを兼ね備えてあるし、あの長い腕が攻撃範囲は極端に広くして、尚且つ攻撃速度も見た目以上に早い。ATKやDEFが高いこともそうだが、やはり一番の問題は範囲と速度だ。
ダンジョンのフロアのような狭い空間において、攻撃範囲が広いことは攻撃が飛んでこない安全圏が狭いと言うことであり、更に速度が速いとより一層避けることが困難となってくる。しかも、ゴーレムのような高いDEFを兼ね備えているMOBには、矢や針みたいな貫通系のダメージは無いに等しい。また斬撃系も貫通系とそう変わらず、大剣みたいな幅が広いものなら側面を叩き付けるという方法もあるが、勇人の片手剣ではそこまでのダメージは期待できない。せめてハンマーか棍棒でもあれば対処できただろう。
「……でも、やるっきゃないよな!!」
「あ! お、おい!」
そう叫びながら勇人は地面を蹴った。途端、ゴーレムの腕が轟音と共に勇人を潰そうと迫ってくる。勇人は唯一の長所であるSPDの高さを利用して繰り出される腕を器用に避けながら腰のナイフを抜き払い叫ぶ。
「『スライサー』!!」
振り下ろされたナイフから赤いオーラと共に繰り出される無数の斬撃がゴーレムの胴体に叩き込まれる。そして、ゴーレムの身体がグラリと揺れた。
「やったか!?」
「なわけねぇだろ!!」
後ろから飛んできた罵声と共に後ろに引っ張られ、その瞬間爪先に何かが掠り、巨大な突風と空気を切り裂く轟音とともに鋭い痛みが走った。合更に、後ろに引っ張られことにより勇人は固い地面で勢い良く尻を引き摺ることになる。
「いだだだだだだだだぁ!!!?」
「アホかお前は!! 勝手に突っ走りやがって……、後少しでミンチになるところだったぞ!!」
「……も、もう既に尻がミンチになりそうなんですがぁ……」
尻を押さえながら悶える勇人を無視して、ホルスは迫り来るゴーレムの腕を大剣で防ぎながら続ける。
「たまたま相手の反撃がワンテンポ遅かったのが良かっただけで次はない!! 前言ったように危機感を持て!!」
「す、すいま……せ……」
ここで、勇人の頭にある疑問が浮かび上がった。
何故、相手の反撃がワンテンポ遅かったのか。
攻撃速度が速いのはゴーレムの特徴であり武器でもある。もしあの時その速度が健在だったら、今頃勇人はミンチになっていただろう。
じゃあ何故そんなことが起こった? 高々ナイフごときでゴーレムの動きを止めることなんて不可能に近い。『スランサー』が弱点である可能性は先ず無いし、ダメージを受けて仰け反ったなんてことも考えにくい。じゃあ当たり処が良かったのか?
「確か……胴体の右上当たりに叩き込んだ。つまり……」
勇人は手にしていたナイフを鞘に納め、取り出した弓に矢を番えた。その先には、ゴーレムの攻撃を危なげに受け流すホルスの姿があった。そのHPは三割ほど削れている
「ヤバッ……もう……もたねぇ」
歯を喰い縛り大剣で受け流すホルスの後ろから勇人は改めて矢を引き絞り間を置かずに放った。
空気を切り裂きながら放たれた矢がゴーレムの右肩の関節部分に深々と突き刺さった。すると、さっきまでスゴい速度でフラれていた腕が錆びついた機械のように動きを止めた。
「……っ! ナイス!!」
一瞬目を丸くしたホルスが小さく笑みを溢しながら大剣を上段に構えてゴーレムの頭上に飛び出した。
「『ロッククラッシュ』!!!」
そう言いながら振り下ろされた大剣は赤いオーラを纏い猛スピードでゴーレムの胴体に叩き込まれる。ゴーレムは大きく後ろに飛ばされ、柱数本を巻き込みながら倒れた。
二人は一旦距離を取り、ホルスは改めて大剣を構えながら勇人に問い掛けた。
「矢を撃ち込んだだけで奴の腕を止めてたけど、何したんだ?」
「単純ですよ。ゴーレムの関節部分に矢を突き刺して腕の可動を鈍くしたんです」
本来、ゴーレムのような石像系MOBは主に硬質の岩石に表面を覆われているため貫通系のダメージは無いに等しい。が、ゴーレムは無数の岩が合体して作られたMOBであるため岩と岩の繋ぎ目、つまり関節部分が存在するのだ。
リアルでも、関節に何が挟まれば動きが阻害され鈍くなるからそれと同じだ。しかも矢には一度突き刺さると耐久値がゼロになるまで動かせない『硬直』と言う特性を持っていたのだから尚更だ。
「……矢にもそんな効果があったとはな~。……今度弓辺り練習してみよ」
「とは言っても初心者の矢とか樹の矢とかは耐久値ほぼ無いんで、ほんの一瞬だけしか阻害できないんですけどね?」
「……一瞬だけでも十分」
そう言いながら再び大剣を構えたホルスが立ち上がったゴーレムを睨む。
「んじゃ、援護よろしくな」
「了解です」
勇人がそう返すと、ホルスは小さく笑みを溢しながらゴーレムに向けて猛然と突っ込んでいった。それに続くかのように、勇人は速射を駆使してゴーレムの両肩、右足の関節に矢を撃ち込み動きを阻害し、がら空きの胴体目掛けてホルスのアーツが叩き込まれた。
「ぐぁあ!?」
しかし、ゴーレムは踏ん張って吹き飛ぶのを回避し、硬直状態のホルスをその腕で横薙ぎに吹き飛ばした。
「ホルスさ、がぁ!?」
吹き飛ばされたホルスに目を奪われた隙に、勇人は腹に鈍い一撃を喰らって後ろに吹き飛ばされた。地面を転がりながら立ち上がった勇人は激痛走る腹を押さえながら前を見る。
その目の前に、頭一つ分の岩が迫っていた。
「うおっ!?」
咄嗟に首を捻って岩を回避。飛んできた岩は直ぐ後ろの岩に当たって後ろの岩を粉々に吹き飛ばして飛んでいった。飛んできた岩の威力に肝を冷やしてると、また目の前に同じような岩が無数に迫っていた。
「オオオオオオオオっ!?」
けたたましい雄叫びを上げながら勇人は横に転がり何とか岩の砲丸を回避しつつ距離をとる。
「ノース、声が女の子らしくないぞ!!」
「別に気にしてないから!! 寧ろ大歓迎だから!! てかあれ何なんですか!?」
「多分自分の身体の一部を球場にしてぶん投げてくる『ロックスロー』だ!! 威力は高くて速度も速いから避けるより撃ち落とした方が安全んっ!? あ、あと岩の砲丸はプレイヤーが一定の距離に近付くまで延々と投げ続けるから出来る限りサッサと帰って来てくれぇ!!」
「先に言ってくださいぃ!?」
飛んでくる岩を大剣で切り払いながら呼びかけるホルスの言葉に従い、勇人は飛んでくる岩を縫うように走り抜けてホルスの側に転がり込んだ。
すると、今まで降り注がれていた岩の雨がプツリと止んで、今度は腕が横薙ぎに飛んできた。
「遠かれ近かれ結局は飛んでくるんですねっ!!」
「雨よかマシだろっ!!」
ゴーレムの腕を避けた二人は二手に分かれて各々ゴーレムに突進した。
今ココで、二人の行動を無謀と思う人もいるかもしれない。
しかし、ゴーレムの攻撃は速度はあるが直線的にしか攻撃できないので避けるのは簡単だし、範囲が長いのは近づいてしまえば逆にこちらが有利となる。それを踏まえて二人は突進したのだ。
振るわれた腕を追う形で突進したホルスはその腕に無数のアーツを叩き込み、更に指の関節目掛けて振り回して指を何本か切り飛ばす。その際反撃に飛んできた腕をジャンプで避け、避け際に二、三発大剣を叩き込んだ。
反対に振るわれていない腕に回った勇人は自らを捕まえようと迫ってくる手を掻い潜り、指の関節にナイフを突き入れ片手剣アーツ『ムーンサルト』で指にグルリと刃を入れて切り落とす。
指が落とされた手がグーに握られて迫るのをしゃがんで避け、咄嗟に取り出した弓で足首辺りの関節に無数の矢を撃ち込み、そこに体術アーツ『サークルフット』で関節に突き刺さっている矢に蹴りを入れて更に中に突き刺した。
因みに、体術スキルは片手剣スキル上げの際に偶然派生したスキルで、殴る蹴る投げる等武器を用いない攻撃の威力を上げたり、モーション専用のアーツを習得したりするヤツだ。しかも体術アーツは他のより硬直時間が発生しないのもメリットの一つだ。逆に人間の身体である以上範囲は狭く、威力もさほど期待できない。
矢を突き入れた時、不意にその関節が砕け散ってゴーレムの体勢が大きく崩れた。どうやらパーツごとに耐久値があるらしく、それがゼロになって踏ん張れなくなったのだろう。
「何か分からんがもらったァ!!!」
崩れたゴーレムの胴体にホルスが大剣を振り下ろした。大剣に押されたゴーレムは地面でで大きくバウンドして吹き飛び、何本かの柱を巻き込みながら倒れた。
二人は暫く得物を構えたままじっとゴーレムを見つめるが、それ以降ゴーレムの身体が動くことはなかった。
「案外簡単だったな~。ちょっと拍子抜けした」
「まぁまだ序盤ですからね~……。逆にグラズリー時はロクな戦法とか考えずに突っ込んでましたから、それに比べれば楽でしょ」
「いやアレはお前がアーツの効果関係なしに使いまくった結果だろうが」
「ナンノコトカナ? アハハハ」
勇人が明後日の方向を向きながら苦し紛れの笑い声を上げたが、不意にその笑い声が止んだ。
「ん? どうした?」
「……何か、重要なことを忘れている気が……?」
「重要なこと?」
「例えば……」
勇人が口を開いた瞬間、突然フロア全体が大きく揺れ出した。突然のことに二人は揺れに耐えきれずに地面に投げ出された。
「痛ったぁ~……だ、大丈夫ですか?」
後頭部を強打したお陰で視界が白黒して良く見えない中、隣にいるであろうホルスに問い掛ける。が、返事は帰ってこなかった。
不思議に思って目を向けると、ハッキリとは分からないが横で口を開けて上を見つめているホルスの姿があった。
「ホルス……さん?」
「マジかよ……」
ホルスの絞り出したような声に勇人が首をかしげていると、不意に視界が薄暗くなった。何のことかと勇人が顔を上げた。案の定そこには先ほど動かなくなったゴーレムが立っていた。
十体ほど。
「え゛!?」
勇人が顔を青くすると同時に一番近くに居たゴーレムが大木位はあろう岩の棍棒を振り下ろしてきた。咄嗟に勇人が『跳躍』を発動してホルスを踏み台代わりに蹴飛ばして双方とも棍棒の有効範囲から逃れる。
逃れた瞬間に地面を揺さぶる衝撃が襲ってきた。恐らくあの棍棒が地面い振り下ろされたのだろう。固い地面に転がりながら立ち上がった勇人の頬を石の矢が掠めた。矢に肝を冷やしつつも鷲の目で突如現れたゴーレムの群れを素早く見定めていく。
良く観察してみると先ほどのゴーレムより一回り小さく形も限りなく人間に近いものであった。
ゴーレムたちは片手剣、大剣、長槍、薙刀、弓矢、弩、棍棒、大木槌、石杖等の武器を各々が持っているのに加え、全員が岩で出来た盾や兜、鎧を身に付けている。しかも、腕や足の付け根や関節部分には隙間がないときた。
「んだよこれ!? こんなん聞いてねぇぞ!!」
ゴーレムの群れの反対側で悪態をつくホルスの声が聞こえると共に群れの一角が切り崩され、こちらに向けて一目散に逃げてくるホルスの姿が見えた。
「無事かノース!! ダメージ喰らってない!?」
「ええ、大丈夫です。それよりこれは一体……?」
「……お、俺にも分かんねぇよ。サーバー掲示板に書かれているダンジョン情報にはこんなこと書かれてなかったし、プレイヤーの方もなかったし」
恐らく運営側も公開してない情報だったようだ。
しかし、何で初級ダンジョンでこんな展開作るかなぁー? 大方βテストであるが故にこういう仕様も試験が必要とは思えなくはないが……。こういうのはもっと先のダンジョンやイベントダンジョンで使うべきではないか? と勇人は心の中でため息をつく。
「……何とな~くこんな展開になるって分かってたんですよね~」
「なんだ? そんな情報があったって言うのか?」
「なわけないですよ。始めのゴーレムが現れた時にBOSSバトルのウィンドゥが出なくて、ゴーレムBOSSじゃないって悟ったとか、闘ってる最中柱に解読できない字が彫られてるのを見つけたとか、残っていた柱の数が十本で出現したゴーレムの数が十体だったからアレは柱で、最初のゴーレムは後に出現する奴等の数を減らすためだとか、そんなまどろっこしい理由じゃなくてもっと単純なことです」
「今の話でお前の諜報能力の高さを垣間見たわ」
ホルスからくる変な視線を気にしないようにして、勇人は小さく溜め息を溢した。
「『お約束だ』……ってね?」
そう吐き捨てた勇人の目の前には、『―――BOSS battle―――』のウィンドゥが表示されていた。




