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紫苑と、秋桜

第四話です



微笑んでいう三日月からちらりとも視線を外さず、紫苑は静かに言った。


「人間だからってなめてると、馬鹿を見るわよ」


「―!」


三日月ははっとした。


「なっ…なんで飛ばされないのよ!!?」


彼女は、この突風で、人間が飛ばされないことはないと思っていた。

実質、彼女が今まで相手してきた人間たちは皆、この強さの風で、飛ばされ、時には、ショック死することもあったのだ。なのに…


「人間が…私の風を…」


目の前の少年と言ってもいいほど幼い男は、今まで見てきた男どもよりも弱そうなのに、彼女の風を受けてもなお、さっきいた場所から動かず、じっと耐えている。


「どうしてよ!?」


「さぁ…あなたの魔力が足りなかったんじゃなくて?」


紫苑の言葉など耳に入らず、三日月は考えていた。


(この子…もしかして、あの、伝説の…?)


「ね、紫苑。私、思うんだけど、宗助、なんか変じゃない?」


秋桜がふっと紫苑に言葉を投げかけた。

それに、紫苑はうん、と頷く。


「ええ。あれはね、魔力を吸い込んでるのよ」


「魔力って、魔女の魔力?」


問いかける秋桜に、紫苑はこくりと頷いた。

そして、何やら考えている様子の三日月にちゃんと聞こえるように叫ぶ。


「三日月っ!もう止めなさいっ!あなたが死ぬわよ!!」


「わたしが、死ぬ…?」


三日月はいまだに状況を理解できなかった。

なぜこの少年は飛ばされないのか?

そして、花の妖精は自分が死ぬといってくるのか?

すべて、わからなかった。


「なんで魔女が死ぬの?」


「魔力が、全部なくなるからよ」


「魔力が、全部?」


「ええ。今の宗助は、無意識にってるけど多分、相当の魔力を吸い込んでるわ。このままいくと、宗助も、魔女―三日月も、ただじゃすまないと思うわ」


宗助や三日月がただじゃすまないとわかってもなお、その冷静さを失わない紫苑に、秋桜は少し怖いと思った。


そして、友達(そうすけ)が危機だというのに、それでいてただ見ていて、助けようとしない彼女に、怒りを覚えたのは。


紫苑とは小さいころからの友達だが、そんな風に思ったのは初めてかもしれない。


「紫苑」


しかし、つぶやいたような秋桜の言葉は紫苑には届かなかったようで、紫苑はじっと宗助を見ている。


「紫苑ってば!」


今度は聞こえたようで、えっ?とこちらを向いてくる紫苑に、秋桜は怒る。


「紫苑、さっきからおかしいわ。何でとめないの!宗助がどうなってもいいの!!?」


ちなみに三日月もいるのだが秋桜にとっては三日月のことはどうでもよかったようだ…


「………」


紫苑は、秋桜がこんな怒っているのを見たのは、初めてだった。


その驚きと、今、助けるか否かで紫苑の頭はぐるぐるとまわって、どうするべきか考えれなくなる。


秋桜は紫苑が何も言わないから、より怒りが増える。はやく助けないと、いけないのに。


「紫苑ってばっ!!」


またも秋桜に怒鳴られ、紫苑はうなずいた。


「…そうね。二人を(・・・)たすけないと」


「うん!宗助は、大切な友達なんだから」


まだ秋桜は、紫苑が二人といったのに宗助のことにしか眼中になかったが、それでも二人は力を合わせるべく、手を握り合った。


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