絆
「ぐわー、これいつになったら終わるのよ」
軽トラの荷台に稲の種と土を入れた苗箱を置きながら千鶴はそう言った。
「もうすぐでお昼だね」
「もうそんな時間か、で?誰がこの状況でお昼作るの?」
軽トラに全体重を預けて休みながら千鶴は2人に聞いた。
「この作業自体で疲れてるからご飯作りたくないよ」
「よし、コンビニにお弁当買いに行こう」
「それ乗った!」
千鶴と真奈は意気投合で合致した。
だが、菊さんはというと。
「菊さんは行かないよ」
「え?なんで?」
「苗箱を置いたままにできないから」
「でも、お昼ご飯はどうするの?」
真奈は心配そうに菊さんに聞いた。
「家に帰って何か食べる」
「駄目よ、菊さん一緒に行きましょう」
大人らしく千鶴は菊さんの腕を掴んだ。
それでも菊さんは種まきの作業のことに夢中のようであった。
「菊さんはこれが大事」
黙々と作業する菊さん。
それを見た真奈は菊さんの作業を止めさせて自分の顔を見るように仕向けた。
「せっかく3人で作業したんだから、お昼も3人で食べたほうが美味しいよ。それに、こういうのは誰か1人欠けたら稲の神様に怒られちゃうんだぞ」
「それほんと?」
「ほんとほんと、だから、ねっ?一緒にお昼食べよう?」
むーと菊さんは考えた。
そして。
「仕方ない」
「やった」
「ただし、帰ったらすぐに作業再開だから」
菊さんの発言に千鶴と真奈は固まった。
「農家って厳しい」
2人の固まりの中、少し嬉しそうな表情をする菊さんであった。




