ベストフレンド
園子と睦美は、静かな住宅街にある古びた図書館の近くで育った。小学校の校庭では、二人は毎日、元気に遊び回り、互いの秘密を打ち明け合った。その絆は年を重ねるごとに深まり、彼女たちは三十年を超える友情を築いた。五十代に突入した今でも、園子と睦美はお互いの家を行き来し、二人の未来を約束し合っていた。
大学を卒業後、園子は図書館司書、睦美は銀行員になり、仕事は充実していた。しかし、二人とも結婚には縁がなく、独身を通していた。
「園子、老後はどうする?」と睦美が言えば、「二人で一緒に住んで、猫を飼って、お茶でも飲みながら、のんびり過ごそう」と園子が笑いながら返すのが、恒例となっていた。
しかし、日常の温もりは、ある日、衝撃的な真実にひっくり返る。睦美が俳句の会で知り合った同世代の男性と親しくなったと聞いたとき、園子の心は不安で満ちた。彼女がその男性と未来を考えているという言葉が、まるで彼女の日常を脅かす影のように感じられたのだ。
「……え、結婚するかもしれないって?」思わず口から出た言葉は、冷たく響いた。その瞬間、園子の心は一瞬にしてパンクし、その後、自己嫌悪が押し寄せた。心ない言葉を浴びせ、睦美を傷つけてしまった。親友の幸せを願うことができず、嫉妬と寂しさが渦巻く。
夕方、行きつけのバーへ足を運んだ。カウンターに座り、初老で穏やかな物腰のマスターに心の内を打ち明ける。「……マスター、私、どうしようもなく寂しいの。睦美が他の誰かに心を奪われてしまうなんて、思いもしなかった。」
マスターは、洗練された笑みを浮かべ、「……君の気持ちは痛いほど分かるよ。でも、彼女が幸せになるためには、君もその幸せを応援するべきじゃないかな」と優しく言った。
その言葉が、園子の心に少しずつ沁み込んでいく。睦美を巡る小競り合いのような感情に苛まれていた園子は、自らの思いを整理する時間が必要だった。「幸せは分け合えるものだ」と気づき始め、何か新しい道を次第に見出す。
数日後、園子は覚悟を決め、睦美に再び会うことにした。彼女のために友人として振る舞うことが、今の自分にとって一番大切なことだと気がついていたのだ。
「こんにちは、睦美。……この前は、本当にごめんなさい。……少し話せる?」と園子は優しい声で切り出した。二人の間に広がる沈黙は、前よりもずっと心温まるものに変わっていた。喧嘩をする前の親友同士に戻るため、もう一度踏み出す勇気を持ったのだ。
友情が再び花開く。その瞬間、園子は睦美が幸せになる姿を心の底から望んでいることを、初めて実感したのであった。これからも共に支え合い、笑い合える日々が続くことを、心より願っていた。




