第78話 世代交代の準備
白嶺の医学研究会、部員は3年の夏で引退となる。そういうルールだ。
北高のルールは、この白嶺からもらった運営マニュアルに従っている。なのでルール通りに運営するなら、七海たちは、ここで引退しなければならない。
しかし北高の医学研究会は、発足してまだ1年数ヶ月である。いま、七海たちが引退すれば、文化祭の企画が実現できない。それどころか、部として成立するかも怪しい。
そんな中、まず、白嶺の方から、ルール変更の提案があった。先方の3年も、査読つき論文にチャレンジすることだけは継続したいとのこと。その意思に対する配慮だった。
部員の希望があれば、3年であっても、継続して部活動に関われる。ただし、部長、副部長といった役職からは降りる。そういうルールの改正案だった。
現在の北高、医学研究会は、3年が5人、2年が7人(46話)、1年が6人と、なかなかの大所帯になっている。
七海「いつまでも上級生が威張っているのは、よくないよね」
原口 朋恵が、困った顔で言う。
原口「いま、七海先輩たちに辞められたら、活動になりませんって」
田崎 万里もまた、これに加えて反対意見を述べる。
田崎「七海先輩が部長を降りるのも、反対です。まだ、僕たちには、七海先輩のリーダーシップが必要です」
部室のPCで論文検索をしていた美月が何かをみつけたようだ。
美月「リーダーが急に辞めると混乱を招くため、退任の意思を早く表明し、段階的な引き継ぎが望ましい(※1)」
田崎「ほら、やっぱり」
蓮も、何かをみつけた。
蓮「リーダー交代を幹部だけで行わず、みんなに関与させると、交代後の組織の安定性が高まる(※2)」
カイオ「七海ちゃんの一存に任せるのはダメ。みんなで計画的に考えようってことだよね」
夢咲「一旦、3年の引退は、11月の北灯祭とする。それまでに、どのような引き継ぎがあるべきか。そして、次の幹部の選出はどうすべきか。そういうことを、顧問とかも入れて、みんなで話し合おう」
「賛成です」「さんせーい」「それがいいです」
七海「うん。わかった。混乱させたいわけじゃないから。それに、査読つき論文、チャレンジしてる真っ最中だしね」
原口「私たち2年も、自分たちで引き継ぎのあるべき姿とか、論文検索して、企画出します」
1年「じゃあ、1年は1年で。先輩方に期待すべきことを、統計的事実を踏まえて、まとめてみます。まずは、論文検索の方法、教えてもらいたいです」
蓮「あ、じゃあ、これから教える。論文検索、知りたい人、こっちきて」
夢咲「私も、いいかげん、論文検索、覚えたいぞ」
カイオ「俺も、そろそろ覚えたいな。俺も参加していい?」
——みんな、かっこいいな。嬉しいな。
蓮「もちろん。みんなと一緒に検索できたら、もっともっと楽しくなる」
——医学研究会を作って、ほんとうによかった。
最終章。これで第78話です。ここまで長いこと読んでいただき、ありがとうございます。ほんとうに嬉しいです。
少しでも、読めるところがあったなら、是非とも☆評価をお願いしたいです。執筆の励みになると同時に、明日もまた頑張っていこうという気持ちになります。
さて。
リーダーの引き継ぎ、うまくできる組織って、少ないです。実際に、論文でもそういうことが指摘されています。部活って、こういうことを学ぶ場でもあるんですよね。
引き続き、よろしくお願い致します。
参考文献;
1. Gothard, S., & Austin, M. J. (2013). Leadership succession planning: Implications for nonprofit human service organizations. Administration in Social Work, 37(3), 272–285.
2. Geib, N., & Boenigk, S. (2022). Improving nonprofit succession management for leadership continuity: A shared leadership approach. Nonprofit Management & Leadership, 33(1), 59–88.




