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第75話 卒業する、必要ある?

 電磁誘導の法則をみつけた、イギリスを代表する物理学者、マイケル・ファラデー(1791〜1867年)。


 ファラデーは、貧しい、製本業を営んでいる家に生まれた。正規の教育は受けておらず、なんの学位も持っていなかったという。


 そんなファラデーは、働きながら独学で科学書を読み、勉強した。そして、当時の科学界の常識を(くつがえ)す、数々の偉大な発見をしている。


 そんな事実を、七海が知った。


七海「蓮くん、ちょっとわかったことがあって」


蓮「うん。なに?」


七海「日本の高校卒業なんて、どうだっていいんだって」


蓮「まあ、でも。一般には、高校卒業が、大学入学の条件だし。卒業しとかないと、面倒だよ?」


七海「でもさ。査読つき論文を通すためには、学位って必要ないよね?」


蓮「それは、そう。必要ない。必要なのは新しい発見であり、かつ、再現性が認められること」


七海「私、いますぐ研究したい。すぐに、ファラデーのいた、イギリスに行きたい」


蓮「でも、気持ちわかるな」


七海「でしょ、でしょ?」


蓮「実際に俺はもう、大学院の仲間たちと、研究、進めてるからな」


 やや間があって、


蓮「文化祭は? 文化祭、どうする? 白嶺との連携、実現しなくてもいい?」


七海「それだけは、やり切りたい」


蓮「でも、文化祭が終わるの、11月だよ? それから高校中退して、イギリスの大学に入学する準備しても……結局、来年の9月入学になるの、変わらない」


七海「うーん、高校3年の11月に中退しても、意味ないのか。カッコ悪いな」


蓮「カッコつけなくてもいいのでは?」


七海「なんだかね。自分のやりたいようにやるべきだって思うの。もう、高校にいる必要ない。イギリスに行きたい。でも、文化祭があるか……」


蓮「こう考えてみては、どうかな?」


七海「?」


蓮「卒業までの1年は、七海を育ててくれた北川高校への感謝を示す1年」


七海「感謝を示すために、イギリス留学を我慢するってこと?」


蓮「なんの感謝もない?」


七海「そんなことない。奨学金も、生活援助ももらった。先生方にも、よくしてもらった。大切な友だちだって、北高がなかったら、出会えなかった。なにより、こうして蓮くんに出会えたのは、北高のおかげ」


蓮「じゃあ、あと10ヶ月くらい、我慢できそうじゃない?」


七海「うん。そうだ。我慢すべきだ。そして北高のために、できることをしよう」


蓮「それがいいと思う。どうせなら、思いっきり、北高に貢献しよう。やっぱり、文化祭を盛り上げるのが、一番だと思うな」


——やるからには、必死でやれ。


七海「白嶺と連携して、査読にチャレンジする。それをニュースとして、広報する」


蓮「北高のブランドになりそうだね。ちゃんと、地元新聞の記者さんとかとも、連携しよう」


七海「北高を志望してくれる中学生を増やす。それに貢献する。うん、やりたいぞ、それ」


蓮「いいね。ますます、七海、素敵になってくな。俺も、頑張らないと」

最終章。第75話までお読みいただきました。とても嬉しいです。ありがとうございます。


少しでも、読めるところがあったなら、是非とも☆評価をお願いしたいです。執筆の励みになると同時に、明日もまた頑張っていこうという気持ちになります。


さて。


止まれない七海は、当然のように、学位への興味を失います。ですが、この厳しい社会を生きていくためには、学位みたいな建前も重要です。でも、七海はきっと、そんなふうには考えないのでしょう。今後の七海、ちょっと心配です。


引き続き、よろしくお願い致します。

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