第29話 ワクワクを計画する
北高の文化祭「北灯祭」は、無事、終了した。
メイド喫茶は、優勝は逃したものの、最高品質賞に選ばれた。
その打ち上げに、カラオケにきている1年B組の生徒たち。七海は、生まれて初めてのカラオケだ。
嫌がる御影に、無理やり歌わせようとするクラスメートたち。
そして御影。イケボなのに、歌は……
男子A「うわ、御影のイメージ、変わった! 歌だけなら、俺のほうがマシ」
女子A「御影、あんたも人間なんだね。逆に、好感度が上がるわ」
御影は、なんでもできる。弱点なんてない。七海もそう思っていた。
でも、違った。なんでもできる人間なんて、いない。
七海「ねえ、みんな。北灯祭、みんなと頑張れて、嬉しかった」
いきなり、まっすぐな物言い。
男子B「やる前は面倒なんだけど、やってみたら楽しいみたいなこと、多いよね」
七海「うん。でね。考えたんだけど。イベント、与えられるばかりじゃなくて、自分たちでも計画したい」
美月「前に、そういう論文、一緒に調べたよね(※1)。ワクワクは、待つんじゃなくて、自分で取りに行く」
七海「そう。だからみんなで、予定合わせて、ワクワクすることしたい」
女子B「いいね、なんかやろう」
男子C「打ち上げ、バイトで来れなかったやつもいるし、誘いたいよね」
夢咲「グルチャ、投げた。うちらだけじゃなくて、ここ来れなかった奴らからも、なにしたいか聞こ」
カラオケが進む。
その間、1年B組のグループチャットで、意見が交わされている。この場にいない、バイト中のはずの男子から「BBQとかどうよ?」と提案がある。
「わり、金欠」
「余ってる食材持ち寄るとか?」
「親父が釣ってきたまま食べてない魚が冷凍庫にいっぱいある」
「うちも、賞味期限ちかいやつとか、あるかも」
「BBQいいね!」
「みんなの私服、楽しみ」
確かに、みんなの私服が見れるのは嬉し、恥ずかしい。ワクワクする。
ただ七海は、財政事情から、最低限の私服しか持っていない。
——ワクワクを企画すると、自分が変わる
七海は、クラス女子だけのグルチャに、「私服ほとんどない。古着、買い取りたい。いらない服あれば、譲ってください」と投げた。
「七海、スタイル良すぎ。私のだと無理」
「家庭科部の男子に、直してもらえ」
「そか」
「お、それなら、結構、あるぞ」
「捨てようと思ってたの、やる」
七海「だめ。もらうのは、悪い。買わせて」
「じゃあ、捨て値でいい」
「私も、探してみる」
「どうせなら、みんなで着なくなった服、交換しない?」
「サイズ直しは、家庭科部の男子いるし」
「お直し料、ちゃんと払うべき」
「当然」
「ていうか、金欠って言ってたの、家庭科部じゃん?」
「ちょうど良くない?」
自宅にいる女子から、早速、写メが貼られる。フリフリの清楚系ワンピース。
「お、可愛いじゃん」
「それ、いらないの?」
「私、欲しいかも」
「おま、清楚系ちがうだろ」
「w」
「だったらさ」
「?」
「みんな、服交換して、イメージ真逆で、男子おどろかせる?」
「おもろい」
「夢咲、清楚系」
「ウケる」
「七海は、無理してギャルだから、清楚系に戻れ」
「もといた森へ、帰れ」
「森へ、帰れ」
「っていうか、帰れ」
「www」
……
男子D「みんな、俺の歌、聞いてくれよ!」
第29話まで、お読みいただきました。嬉しいです。本当に、ありがとうございます。
少しでも、読めるところがあったなら、是非とも☆評価をお願いしたいです。執筆の励みになると同時に、明日もまた頑張っていこうという気持ちになります。
さて。
森へ帰れ。これは慈悲の言葉のようでありつつ、運命や相性を肯定する言葉です。究極的には、遺伝です。ですがそれは、あくまでも統計的な事実。平均の傾向にすぎません。森へ帰る必要はありません。あなたが、どうするのか、決めの問題です。とはいえ、自分の森はどこなのか、それを考える意味は大いにあります。
引き続き、よろしくお願い致します。
参考文献;
1. Gere, J., Almeida, D. M., & Martire, L. M. (2016). The effects of lack of joint goal planning on divorce over 10 years. PLOS ONE, 11(9), e0163543.




