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第9話 仕事内容(2)



「ごきげんよう」


アイクがオフィスへ入った時にはもう全員揃っていた。アイクはまずフランと目を合わせた。彼女もアイクの方を見ている。


以前の事件を解いてから一週間が経過した。

その間は部下の三人は仕事の経験を重ね、アイクは今日アリソンから返ってきた。


久しぶりの再会となった彼らだが特別な感慨どころか、今までどこへ行っていたんだという怒りしかない。

アイクのいない期間、この部署は上司なしで動いていた。しかもそれは入りたての新人三人。

うまくいくはずもなくここでの働くためのノウハウを周りに聞きまわり何とか一週間持ったという感じだ。


「お土産だぞ」


アイクはそう言いながらカバンから菓子折りを取り出した。

フランは何も言わず仕事を続ける。


「何かあったんですか?」


それへとすぐに飛びついたマイクが違和感を持ち、尋ねる。


「・・・寝たんだ」


「冗談はやめて」


すさまじい速さでフランがそう否定する。

マイクはもう興味をなくしたのか今はお土産に夢中になっていた。


「切り替えて、仕事の話をしよう」


フランと煙草の件もあるが考えても仕方ないとしてアイクは思考を切り替えた。

その言葉を聞いたフランが真っ先に声を上げる。


「犯人が判明している無差別殺人事件について」


フランが資料を配る。だがそれを途中まで読んでから、放り出した。

却下ということだ。

その後にまた声がした


「存在しない行方不明になった子供」


これはフーベルトだ。アイクは聞いた瞬間にピンときたが、マイクが意見を聞いてほしそうにしていたので、彼と目を合わせた。


「人工地震について」


すぐにマイクから目を離し、二度とそちらの方を見ないようにする。


「今の流れで分かったのはフランにはセンスがなく、マイクが陰謀論者だったといことだけだ。フーベルトを見習え。なかなかに刺さったぞ、詳しく話せ」


厨二病の獣人と魔法の才能なしの魔人族が不満MAXの顔をするなか、優越感に浸った神童がマウント気味に話す。


「昨日の早朝、母と息子とでほのぼの散歩をしている途中に息子が迷子、でもって母親はショックからか現在も意識不明の状態」


アイクがフーベルトの作った資料に目を通し始める。


「母親の気絶の詳細は?」


「脳障害、気絶する直前まで激しい痛みに襲われていたらしい」


対魔特捜部の仕事内容が決定した。


 *


「さて意見はあるか?」


前回と同じく、まずは部下たちに意見を求める。


「存在しないって?」


「そのまま意味さ、行方不明になった少年の名前が入った名簿は近くの小学校にはなかった」


フランの問いかけに対して、フーベルトが簡単にそう答える。

近くの学校の名簿にないだけで、私立とか郊外の学校に行っている可能性はある。

しかし、家庭的な事情を考えると確率としては低いということだ。


「君のような例もある」


マイクがフーベルトのような例、つまり飛び級して中学校などに通っているという線だ。


「残念だが、被害者の年齢は7歳。飛び級するにはあと3年は必要だな」



この場でこの制度に1番詳しいであろう神童がそう否定する。 


彼は最年少でこの職業に就いたが、もちろん、それは既存するルールに乗っ取っている。

この世界で飛び級が可能になるのは10歳から。

そこからはそれぞれの教師、試験、運にも左右されながら一つずつ上げていくしかない。


彼は10歳からたった6年足らずで、小学校上級、中学、高校、大学、魔法院、そこでの研修を修了させるという前例のないスピードでそのままこの地を踏んだ。

故に神童と呼ばれている。


「勉強不足な獣人は多めに見てやれ。他には?」


アイクが黙っているフランの方を見る。


「・・・これは魔法が関係しているようには思えません。ただ、何というか」


フランが気まずそうに口を噤んでいる。彼女の性格からしたらあまりはっきりと言いたくはないだろうことがわかる。


「母親がイカれて、それに俺たちが付き合わされていると言いたいのかわけだな。酷い女だ」


「そうは言ってません」


アイクが思いやり0の言い方をする。


「だが、肝心の狂人疑惑の母親は昏睡中、彼女からは何も得られません」


その可能性を確かめる術はないとマイクは言うが、アイクの考えは違う。


「別に母親自身から聞く必要はない。本当にイカれてたならまともに話を聞く方がバカだ。家を調べるんだ。嘘をつくことはない」


アイクの言葉を聞いた部下たちは沈黙した。


「それは、勝手に家に入るということですか?」


恐る恐るフランが聞く。


「当たり前だ。行儀良く玄関から入らなくても煙突から入りたいのか?」


「不法侵入です」


それはできないとフランが反抗する。

だがアイクはもともと気が弱く、正義感の強いフランに任せるつもりは無かった。


「だからエルフは差別されるんだ、抗議の果てには公民権を獲得した獣人を見習え」


アイクはそう言いながら当事者のマイクの方を見る。


「それは関係ないでしょ。あなたはやるつもりなの?」


フランをマイクの方に顔を向ける。


「・・無理です、見つかったら職を失いかねない」


マイクは首を左右に振りながら、体全体で否定する。

だがアイクの中では配役はもう決まっているのでむなしい抵抗だった。


「3・・・いや4か?」


「・・・・やばくなったらすぐに撤収しますからね」


満足そうな顔をしたアイクとは対照的にフランの顔は信じられないというような表情だ。


「さて、調査開始だ。フーベルトは事件当時の状況の詳しい聞き込み、マイクは現場調査、オールフォーワンの心を忘れるな」


「理不尽だ」


マイクが仕事内容の違いに異議を唱える。


「さあ、早く行け。うっかり現場捜査の護衛隊と鉢合わせでもしたら俺は責任取りかねるからな」


そう言って、マイクの反対意見を黙らしてから二人をそれぞれの仕事のために外へと出した。

だが、一人だけ部屋に残っている。


「あれ、私は?」


「お前は俺と昨日の続きだ」


アイクは今のうちに頭のこぶは排除しておくことにした。


 *


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