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第72話 フーベルトの帰還(10)



ステイの部屋を出て、アイクは階段で階を一つ降りる。


廊下のラウンジのような広い場所に部下の三人―――フラン、マイク、フーベルトがそれぞれの姿勢で座って待っていた。


彼らはアイクの顔を見て立ち上がるが、誰も口は開かない。

アイクは無表情に笑みを浮かべてこう言った。


「我々の作戦は成功した」


それを聞いた部下三人はそれぞれ同じ反応を見せた。

喜びの感情だ。


「やるぅ」

「流石ですね」


フランとマイクが口を揃えたように言う。


「行くぞ我が同胞達よ、彼のものに続け!」


アイクが演技がかった口調で答えた。


「20、30年前の映画の引用は通じないわよ」


フランが肩をすくめる。


「ならなんで引用ってわかったんだ」


挑発するようにフーベルトが言い返す。

アイクは先頭に立ち、三人を従えて歩き出した。


「詳細は?」


フーベルトは計画の実行者のアイクに短く問う。


「気の早い奴。15%だ」


「予定よりも5%増ですね」


「流石、調査委員会を1人で平定した男」


フランが大げさにアイクを持ち上げる。


「褒めても俺からは何も出んぞ。・・・金以外はな」


そう言ってアイクが笑い、扉を開けていつもと変わらないオフィスへと入っていく。

だがただ1人、フーベルトは外に残り、お気に入りの椅子にふんぞり返るように座る。


「そろそろ彼も中に入れてあげたら?」


フランが小声で促すと、アイクは一度振り返って言った。


「・・・ダメだ。俺は言ったことは取り消したくないんだ。・・・昨日まではな」


その瞬間、アイクが軽く顎で示したのを確認してからフーベルトは席を立った。

そして自分の椅子と一緒に久々に部屋へと入ってきて、中にいるマイクと拳を合わせた。


「同胞は見捨てないさ」


「あの手紙ですね」


マイクの言う手紙とはキールの元に届いた、偽装された手紙のことだ。


「ああ、キールはまるで疑ってなかった」


「昔から器用だからな」


「この悪党め」


アイクが煙草に火をつけながら言う。


「でも何故キール?」


「あいつと俺は歳は離れてるが同期だ。だからか俺に対しての対抗心が強い。何かと競り合おうとしてくる。奴の部下の多さは職種上の関係もあるが心の不安の表れなのさ。自分だけでは勝てないってな」


マイクの問いにアイクは気持ちよさそうに煙を吐きながら答える。

彼の脳裏には潰れた団子のような顔と強烈な香水の匂いを思い出す。


「犯罪管理部でしたっけ?」


「三十人以上いるらしいな」


フランの問いに、フーベルトが答える。


「だがあまり関わるのはやめとけ、何せ匂いが移るぞ」


アイクは未だこ彼の香水の匂いが濃く残った鼻で笑いながら、口で煙をくゆらせる。




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