第6話 発見(1)
「意識が文字通り混濁しているな」
あのあとすぐに二人を別々の部屋へ移動させ、意識障害の度合いを図るテストをした後、魔法によって眠った。
検査結果は不可解極まりないものだった。
短期的な記憶ははっきりとしているが、少年AとBのお互いの記憶がぐちゃぐちゃになりつつある。
「偽物の方が自我を保てなくなっている?」
「本物の可能性もある」
部下たちの焦りの色が見える。
それはアイクも同じことだった。
「時間がない、カールの意識障害が起こったのは双子現象が起きてから約4日。この計算でいくと明後日には残りもこの状態になる可能性が高い。そしてこの症状は頭痛で終わると言う保証もない」
「誰かの無差別の攻撃の可能性は?」
フランが一から資料を読み直しながら言う。
「そうなったら俺たちの手に負えるものじゃない、それを考える必要はないぞ。万に一つを探し出すんだ」
アイクが否定する。
真相が無差別テロなら次の被害を予想するのは1日の犯罪率を0%にまで持っていくことぐらい不可能だ。
「なぜ被害者は日が経つにつれて増える?」
アイクはそもそもの疑問へと立ち返る。
「元凶がいてそいつの接触が原因なら筋は通ります」
マイクが不安そうな表情で言う。
その何かを解き明かさない限りこの事件は解決しない。
「呪いは?発動時間をずらして混乱させた」
唯一変わらないフーベルトが問いかける。
「身代金でも要求された場合その可能性はある、そもそも1日に数組ずつ出す意味がない」
だがその可能性もアイクによって否定される。
それを聞いたフランが何かに気づいたように言う。
「被害者の発症順に意味があるのかも」
「年齢?」
「ええ、若い順で発症している、つまり精神がまだ未成熟なの」
アイクはあらゆる可能性を考慮しながら、判断する。
「フランの線でいこう、呪いと仮定して脳から神経に関連する呪いの検査をしろ」
*
「結局お前のチームは獣人に、魔族、神童か。俺の予想通りだったな」
「おい待て、まさかお前もバカンスなんて言うんじゃないだろうな」
アイクの目の前にいる男は友人であるクロックだった。
アイクとの付き合いは長いとは言えないが、気づいたら会ったら話すような間柄になっていた。
今アイクがいるのはクロックの部屋で、彼はそこで仕事ではなく、荷造りをしている。
「お前にしては勘が冴えている」
「おい、俺一人を放っておくのか、それが人のやることなのか?」
流石に、ワシントンとクロックが一緒に行くとは思えないが何か気に入らないアイクだった。
「いいご身分なことだ」
「お前は旅行すらできない身分だもんな、お気の毒なことだ」
アイクは、ふと頭に浮かんだ可能性をより深く考える。
クロックはそのアイクを見て話しかけるのをやめた。
この時に会話を振ってもまともに成り立たないからだ。
そして、思考実験が終了したアイクは部下たちへと連絡を取った。
「被害者の今までの渡航歴を調べろ。共通点はついに見つからなかったが旅行先の趣味は会うのかもしれない」
*