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第5話 動き(1)




「メークシティ郊外に住んでいた6歳の子供、世界一の広さの高原に住んでいる9歳の遊牧民族、東の最果ての島国に出稼ぎに行っていた18歳スラム出生児、こいつらに共通するものはあるか?」


アイクが煙草を片手にそう聞いたのは隣にいる無精髭を生やした男だ。

友人のワシントンは一瞬、頭の上に?を浮かべた後、ピンと来たのか意味深な笑みを浮かべた。


「唐突かつ具体的、その顔を見るに今やっている件か」


「いいから答えろ」


「人、じゃないのか?」



そう答えたワシントンはアイクの持っている煙草を見ると小指を自分自身の方へ二度、三度自分の方へと向けた。

それを見たアイクは、ポケットに入っていた銀色の箱から煙草を一本取り出し、ワシントンの方へ投げる。


ワシントンはアイクが吸っている時に偶に自分も吸いたがることがある。

ワシントンに強烈な頭痛はないし、こいつには先天的な解毒体質があるのでハイになったりもしないが、それでも煙が欲しいと言う。

アイクは前に一度その理由を聞いたことがあったが、しっかりとした答えは返って来なかったのでもう聞くのはやめることにした。


「おい、違うなら違うって言えよ。もしかして合ってたか?」


ワシントンがもしやと言う表情をする。

アイクももしやという表情だけしてから答える。


「・・・気づかなかったぞ!」


ワシントンを小馬鹿にするような声の音色でそう言った。

ワシントンは面白くなさそうなその場から離れる。


「どこへ行く?」


「ちょっとしたバカンスさ」


そう言ってから、勝手にもう一本だけ煙草を持って去っていった。


 *


「何か分かったか?」


場所は戻ってアイクのオフィスだ。もう一度情報を統合し、判断しないといけない。


「誕生日に血液型、仕事の職種、休日に何をしているか、事件が起こる前の日に何を食べたかまで調べたが収穫はゼロさ」


フーベルトがなんのなしに成果が全くの0であることを告げる。


「二人を隔離して別々の質問、幼少期の秘密や、少し引っ掛けた質問などをしてみましたが効果無しというか、違和感しか感じません。口裏でも合わせてないと不可能です」


「双子の愛か」


アイクはフランの言葉からこのオフィスへと入った時の違和感に気づいた。

部屋が広いと思ったら獣人のマイクがいないり


「マイクはどうした、サボりには役者不足だぞ」


「被害者に会っています」


アイクは考える。

確かにあの耳と尻尾なら6歳はメロメロになってしまうだろう。

だが、それだけのために会いにいくとは思えない。

フーベルトの嫌がらせの線も考えるが、その思考をフーベルト自身がストップさせる。


「両親に呼ばれたらしい」


アイクは胸にもやっとした嫌な予感を感じる。



 *



「おい、その辺にしといてやれ」



「何もしていません。急に苦しみ始めました」


マイクからそう報告を受けた時にはもう事態は動いていた。

カールが小さなベッドの中を痛みから逃れようとして暴れていた。

アイクがカールへと近づく。


「おい、起きろ、どんな風に苦しい?吐きそうなのか、どこかが痛むのか?」


「い、痛いんだ!なんとかしてよ!」


カールは痛みで冷静になることができず、頭に浮かんだことを出しているだけだった。


「どこだ、どこが痛いのか言わないとその痛みでお前は死ぬことになるぞ」


アイクが脅し、カールが少しだけだが落ち着く。


「わ・・・、割れる、・・頭だ」


フランが痛みから解放するために眠らせようとするが、アイクが止める。


「なぜ!?」


「まだだ」


アイクはカールへと向き直る。


「・・針の時は泣いたな、また泣くのか?」


「い、痛い、あの時と同じくらい痛い。我慢できない」


アイクはすぐにカールの手首に巻かれている双子を区別をするための文字を書かれた手首のラベルを見る。

B、と書いてある。


「いや違う、お前は泣いてないはずだ少年B」


事件は深刻化していく。



 *


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