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第49話 フーベルトの疑問(7)



「まだ退院はできないのか?」


ロッペンが少し不機嫌になりながら言った。


「原因がわからないからな」


返事をしたのはフーベルトだ。


「病院の判断か?」


「すでに病院は関係ない。権限はすでに俺たちに委ねられているからな」


だが次の瞬間には彼からその不機嫌さは無くなっており、いつもの穏やかな表情に戻っていた。


ここはロッペンの病室で、フーベルトと二人きりだ。


「答えが見つかるといいな」


ロッペンは紙面いっぱいに文字が書き込まれた資料から目を離さずに言う。


「・・・一つ聞く。なぜお前は他人と関わりを持ち、親密になろうとしたんだ?」


フーベルトが教師に答えを聞く様な生徒の調子で尋ねる。


「妙なことを聞くな」


その言葉でロッペンは彼を見て、首を傾げる。


「そうでもない。人は弱く、脆い。その弱点を補うために群れるということを必要とする。なら群れる必要がないぐらいに個体値が高い者はそうではないということだ。俺はお前もその一人だと思っているから疑問なんだ」


フーベルトは同じ様な生き方をしてきた、ロッペンにどんな心の変化があったのかを知りたがっている。


「お前の言葉には人の生理的観念からの視点が抜け落ちているが・・まあいい、先に質問に答えよう」


「答えは単純、知りたいからだ。彼が何をして、何を為し、何になるのか。彼女がどんなことに関心を持ち、何に影響されたのか。そしてそこから俺は何を得ることができるのか」


フーベルトはまだ納得していない。

ロッペンは気にすることなく続ける。


「お前の言いたいことはわかる。かつては俺もそうだった。他人は重荷でしかなく、関わるだけ時間の無駄。自分の貴重な時間を消費してまで接する価値はない。そう思うのも無理はない」


ロッペンは遠い目をしながら、天井を見上げる。


「だがある時に気づく、己に限界があることに。どこまでいってもただ一人の人間であるということに。もちろん、十人の凡人と一人の天才では天才に分があるだろう。だがそれが百や千にまでもなれば天才も群れる必要が出てくる」


フーベルトは何も言わない。


「今話したのは単純な弱肉強食、自然摂理の話だが俺が言いたいのはそこじゃない」


ロッペンの口元にはわずかな笑みが浮かんでいる。


「・・面白いじゃないか。俺と同じように生まれてきた人間が周りの環境によって全く違うような種族の生き方をする。寝る暇も惜しんで勉強するような奴もいれば、神に傾倒している奴もいる、ベジタリアンの奴もいるし、たった16年で魔法の専門家になるような奴も」


「そしてその原因を特定するには人と関わる以外にない。加えて人との接触とは不思議な物なんだ。双方に必ず変化をもたらす」


「それはマイナスの変化の場合もあればプラスの場合もある。それは本人次第であり、どうにでもなる問題なんだ」


「だがらフーベルト・・お前は・・」


「・・・どうした?」


ロッペンの姿勢が崩れていることに気づき、フーベルトは身を乗り出す。

ロッペンの口から雑音が聞こえる。

首元を押さえ、咳き込んでいる。だんだんと呼吸が浅くなっていくのがわかる。

フーベルトはすぐに病室の外へ出た。


「おい!誰か来てくれ」


廊下にいた看護師が駆け寄る。

その様子を見て、フーベルトはこの問題がまだ終わっていないことを痛感した。




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