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第32話 調査委員会(5)



マイクがオフィスへと入ると、中にはすでに数人がいた。

フランとステイ、アイクの友人であるワシントンだ。

そして彼らの向かい側に座っている男。

マイクは知らない、小綺麗で高そうなスーツに身を包み、どこか違う雰囲気を纏っている。


「無事のようね」


部屋へと入ってきたマイクの顔を見てステイが一安心したように言う。

フーベルトの足は無事とはかけ離れたところにあるが、命に別状はないのでひとまず頷いたおいた。


マイクはこの場にアイクがいないことから、まだ事件は解決していないと考える。


「アイクはまだクロックの部屋だ。もちろん、万が一にも取り逃がすことはないから心配するな」


そのことを察知したワシントンが答える。

取り逃がす?

つまりはクロックが犯人だったと言うことなのだろうか。

マイクの頭の中で様々な疑問が浮かび上がる。

それを取捨選択し、1番の疑問を問う。


「なぜ手助けに行かないんですか?」


責めているわけではない、ただ純粋な疑問だった。

そこには何かしらの理由があると思ったからだ。


「フランよりも落ち着いて助かるわ」


そう言って、ステイが面白がる。それに反してフランはバツが悪そうだった。


「部屋へ行ったとしても中には入れないわ。どっちの結界かはわからないけど出入りするなということよ。それでも周りにはもしもの時のために信頼できる人を立たせてるし、そもそもアイク自身は「大丈夫だ」と言っていたわ」


「でも、まだできることはまだあるでしょう?」


マイクの言葉は静かだが鋭い。

部屋に入れなく、助太刀ができないとしてもここでおしゃべりをするよりは何か有益なことができるはずだ。


「アイクが大丈夫と言ったのよ」


「でも・・・」


「大丈夫、だと言ったの」


ステイの有無を言わせないアイクの実力への信頼、そして余計な口出しはさせないと言う決意が滲んでいた。

それを聞いてマイクは何も言えなくなる。


「それに、俺たちもサボってたわけじゃないしな」


そう言うとワシントンは椅子から立ち上がった。

彼の視線はスーツの男へと向けられており、今まで行われてた話し合いが無駄なものではないと語る。


「初めましてですね、マイク。私は聖邦連合評議会対魔諮問機関調停局調査部条約違反事案調査委員会議長――連合諮問調議長のヴィアラです」


彼はワシントンに釣られるように立ち上がり、マシンガンのように話された肩書きを全て頭の中で再々生ているマイクの方へと差し出す。


マイクは何も考えずに出された手を握る。

――柔らかい、武術を一度もしたことがないだろう手だった。

ヴィアラは握られた手を満足そうに見ながら、再び全員に向き直る。


「マイクが来たので一から説明いたしましょう。明日の明朝9時に条約違反事案、つまり今回の火事に連なる魔族のテロ活動についての調査委員会を開きます。そこであなた方の意見を聞きたく、馳せ参じた次第」


聖邦連合評議会での調査委員会による会議。


それは実質この世界での最高決定権を持つと言える場だ。

そこでの結論が黒なら黒、白ならば白になる。 


もちろん形式的にはその後、調査委員会の後に評議会という上位の存在があるのだが、そこで事前の委員会の決定を覆した例はない。


それは審議というより確認でしかない。


「あなたの考えている通りで間違いないです。この調査委員会での結論が実質的に聖邦連合の決定だと思ってもらってもいい次第」

 

マイクは思わず自分の顔を触る。

そんな考えを読まれやすい顔をしているのだろうかと疑問に思う。


ふと視線を時計へ。

明日の9時には世界の運命が決まる。

今の時刻はもう19時だ。

つまりリミットは最大で14時間。


「この調査委員会はあらゆる意見を取り入れ、公平な判断をするため様々な機関からの出席をお願いしています。もちろん枠には限りがありますがここ、魔法協会からは二人まで出席が可能という次第」


ヴィアラの口からスラスラと用意していたようなセリフが続く。


2枠。

アイクが不在なのでこの場の決定権はもちろんステイにある。

彼女がメンバーを決める。


「おそらくいろいろと相談があるでしょう。今すぐとは言いませんが、今日中に私へと連絡をくれれば問題ない次第」


ステイの方を見ながら意味深な笑い顔を浮かべる。


「では、サンクト・カテドラルで会いましょう」


そう自分の要件だけ早々に済ませて、軽い足取りで部屋から出て行った。




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