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第27話 ドーナツとコーヒーと魔人共栄連盟(4)



「・・・寂しくなるな」


建物の仮眠室でリラックスをしながら、アイクに話しかけているのはワシントンだ。

彼はもうアイクが置かれている状況を理解しているようだった。


「死にはしない」


アイクが淡々と返す。


「だが、クビなんだろ?感慨深いな」


ワシントンはアイクがクビなることを心底喜んでいる。

その優越感をこれ以上なく表した顔を見て、アイクが呟く。


「最後には絶対巻き込んでやる」


「無駄だな、そういえばフーベルトをクビにしたって?」


ワシントンはアイクのチームでの出来事をすでに把握していた。

チーム内でたった先程に、起こったことをなぜこいつが知ってるという疑問に陥る。

いくらなんでも早すぎる。


「俺の部下は何故こうもお喋りが好きなんだ」


「お前に似たんだろ?」


アイクの脳裏にマイクの顔が浮かぶ。

アイクとワシントンが交友関係にあることを知っていて、クビのことを以上に恐れているのは彼だけだからだ。


先のことを相談していてもおかしくはない。


持っていたタバコを吸い終えたワイントンが部屋を出ようとする直前に、思い出したようにアイクに話しかけた。


「手を貸そうか?」


以外な提案に、思考が止まる。

ワイントンがこんなことを言うことは珍しいので、何か罠があると考えるぐらいだ。


だが、ただの嫌がらせだということ理解した。

ここでワシントンの力を借りれば、確かに、最悪の事態を防ぐのに選択が増える、

だがそれ以上に厄介なことになる。


「・・ああ」


アイクは迷いながらもそう答え、断るだろうと思っていたワシントンが少し驚く。


「で、何をしたらいい?」


ニヤけながらそう聞くワシントンに、アイクが今欲しいものを書き留め、渡す。




「ドーナツとコーヒーを買ってきてくれ」






「収穫は?」


アイクが持っていた茶色の紙袋を重たげな音を立てて机の上に置く。

その中からは腹をくすぐる甘い匂いがする。

マイクが中を開けると、いろいろな種類のドーナツが入っており二人分のコーヒーもセットで入っている。


「ありがとうございます。魔殻の方は全然です。世界がこんなにも広いとは」


紙袋の中に手を入れながらマイクがそう答える。

彼が選んだよのは甘さの濃い、砂糖がふんだんに使われたドーナツだった。


「財布には痛かったが、礼には及ばん。魔族を守ろうとする変わり者集団はどうだ?」


「成果はイマイチですよ、変わり集団のボス。ドーナツはどうも」


そんなフランの目の下には徹夜の跡がくっきりと浮いていた。


この反魔族論が勢いに乗る中、その波に逆らう集団を一から作っている。

マイノリティを作り、その意見を通すには多大なる時間、もしくはテロ以外では不可能だ。

だが今はその時間がなく。テロに至っては起こした側を擁護するのだから人を増やすのは困難極まりない。

この瞬間でさえ、彼女のやるべきことは増え続けているが、アイクの呼びかけで渋々集まったのだ。


「・・フーベルトはクビ?」


マイクの時にアイクが即答する。


「もちろん。うちの情報を漏らす奴は今すぐにでもクビだ」


マイクは反射的に目を逸らす。

ワシントンの件でマイクは釘を刺されてしまう。


「考えるぞ、魔殻が見つからない理由は?」


それ以上は言わず、話題を切り替える。


「調査する場所でしょうね」


マイクが口にしたのは当然の前提。

ま魔殻が見つからな以上、村や町をアルファベット順から潰していくしかないのか。


「俺たちが世界中を旅行しているうちに、魔族が先に滅ぶな」 


冗談混じりの口ぶりだが、依然として可能性は存在する。

そもそも時間も多くなく、もし村を一つでも見逃していると永遠に迷宮入りになってしまう。


「なら、魔法を使ってないから魔殻が見つからないというのは?」


「そんなことをしていたらすぐに異変に思われる」


魔族が身バレ防止のために魔法を使っていないことは考えられるが、現実的ではない。


今は魔法を行使することが当たり前の世の中なので、魔法不能者とバレればすぐに噂になる。

そして魔法不能者は政府によって登録しなければいけない。

つまりその不能者の中に魔族がいる可能性はある。


「世界旅行よりマシだ、魔魔法不能者のリストを当たれ。他の可能性は?」


「周りに人がいないとか」


異変に思う住民すらいない状態の可能性。

つまり、独立していて人里離れた家に住んでいる住民のことだ。


アイクが頷くとフランとマイクが同じように動き出す。

だが、アイクはフランの一歩を遮るように立つ。


「二代目ボス、組織を忘れるな?」


この数日の間に、フランが掲げた理想だけの船は、早くも現実という荒波に揉まれていた。

そん中で、目に見えない成果を追うような仕事から抜け出したくなるのもわかるが、アイクはそれを許さない。

フランは不満を隠すこともない顔を見せた後、マイクとは別の方向へと歩き出した。








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