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第26話 これからの展開(4)



「次の仕事は見つかったの?」


建物の最上階の一室で、アイクはコーヒーを飲みながらステイの言葉を聞き流す。

髪の毛の状態と顔の色からか徹夜で仕事に暮れていたのがわかる。



アイクは朝のあまり働かない脳を無理矢理にでも働かせ、彼女の言葉を理解する。


「俺のクビを切る気か?」


そんなはずはないという勢いでアイクが反射的に聞く。


「あなたのせいで私の肌と髪はボロボロよ」


「化粧をして、風呂に入れ」


「・・・フーベルトの独断専行はあなたの管理責任の問題よ」


「あいつはもう16だ。もう立派に一人で責任を取れる年齢だぞ、過保護め」


この世界の成人は18だが、彼は特別だ。


未成年の社会人など前代未聞なので、政府が特別に彼のみに適応される法律を作り、彼自身は書類上では青年と判定されている。

 

「なんのためにクロックを雇ってるんだ。生贄を捧げよ」


演技がかった風にアイクが話題を変える。


このような政治的駆け引きが必要な時はクロックが協会を代表して前線にに出ることになっている。


彼自身の力はあまりないが、彼の父親が相当な位の将軍であり、周りへの圧力をかけることができる。


だが、彼自身は突出した才能があるとは言えず、協会でやる仕事といえば意味のないパトロールぐらいだ。


「すでに献上済みよ。今回のことを口火に反魔論の火が広がり始めてるわ。抑えるのはクロックでも限界が近い」


そんな万能でも有能でもない彼の有能な父親の力を借りてさえも、この動乱が止まることはない。


それが世界のどれだけの人が魔族を未だに憎んでいるかの表わしていると言えるだろう。


「全てを平穏に解決するには真犯人を見つけて、民衆に引き渡すしかないのよ」


唯一の解決法を提案した、ステイはもう話は終わったとばかりに目の前の仕事に集中し始めた。





「さて、お前たちがこの職業につけるのも束の間だ」


自分のオフィスに戻ったアイクは三人から二人に減った部下たちへそう残酷な宣言をした。


「俺たちもクビ?」


アイクのその言葉に誰よりも早く反応したのは、夢の職業についたと思っていたマイクだった。


この協会の総責任者であるステイと話を終えてからの一言目はアイクの言葉でも信じるしかないだろう。


決してそんなことはないとしても。


「あの山姥も敵だ。俺たちが生き残る道は真犯人の姑息な魔族を引っ捕え、生き残りの魔族を救うことしかない」


アイクは部下たちを意味もなく焦らせているわけではない。


彼自身追い詰められた人間を見るのは好みだが、焦らすことで意見を出させるのが目的だ。


どっちの割合が高いかは言うまでもない。


「どうやって特定する?」


「・・魔族は未だに人類圏への侵入を許されていません。監視をすり抜け、こちら側に来ることは困難です」


フランは今の魔族が置かれている立場を挙げる。


戦後、彼らの生存圏は人類によって制限され、生き残った魔族は東方への移住を余儀なくされた。

それも監視付きなので簡単にこちら側の世界に来ることはできない。


「良く言ったぞ、だからこそ不可能では無い」


一人いなくなっての部下二人はアイクの言葉にピンときていない。


「奴、もしくは奴らは人と共に生活しているはずだ。砂漠の中からの砂まではいかないぞ、石を見つけるぐらいの難易度だ」


幾分、難易度がマシになったといえども可能性は無限にも近く、多くの時間をかけても見つかるかどうか不安なところだ。


そして今はその時間すらない。


「やることを絞るしかない。特定するために人類圏での魔殻の捜査をすると共に時間稼ぎ用の賛魔族の人権団体を作る、もちろんフランが担当するのは・・・」


アイクはそう言いながら、フランに「人の心に響く言葉」という本を渡しながら部屋を出た。





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