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第23話 勝者なし(3)



「見つけたぞ」


アイクは森の中でついに事件の第一容疑者を発見した。


「これは・・火の精霊?」


フランが目を凝らしながらそう言う。


「いや、魔殻だ。しかもまだ火の魔素でもある」


「・・どうしますか?」


フランが不安気に聞く。

この森は観光地であるとともに戦後の人類の希望を表す、聖地の一つだ。

下手に手出しすることはできない。


「・・・やり方は色々ある。まあこっちは任せて、お前はあいつらの喧嘩を止めてこい」


だが、アイクは心配することはないとはっきり言う。

それに嫌な予感を嗅ぎ取ったフランがアイクの前へと立つ。


「先生?何をするつもりで」


だが彼女のその先の言葉は続くことはなかった。

この場所から消えたからだ。


「魔族か」


そう呟いたマイクは煙草に火をつけながら、魔力を練り始める。

 



 *


 


攻撃を受けたとはいえ、倒れると言う致命的な好奇を逃すほどフーベルトも愚かではない。



マイクの脳がフーベルトの追撃に凄まじい危険信号を送る。 



マイクは瞬時に判断し、左腕のみで攻撃を防いく。


そして倒れた原因でもある完全に凍りかけていた右足を体から切離し、無傷の右腕と左足だけでフーベルトから距離を取る。


フーベルトはマイクのその行動に驚きながらも自分の回復へと集中する。


マイクは右足と同じ容量でボロボロの左腕を手刀で体から切り離した。

そして、細胞分裂を活性化させ、治癒するのと同時に応急の義足と義手を作る。



一息ついたマイクはフーベルトが使っている魔法を一度頭の中で整理する。


フーベルトが今、行使している魔法は最大で4つ。


中和術式で対応している周囲を凍らす魔法。

腕と足には中和術式が効かなかったことから別の魔法だと考えられる、空気中の水を固体化し武器にする魔法。

それを不可視にする魔法。

そして身体操作系。



この複数の魔法を同時併用で扱えるということが彼を神童と称される理由ではない。


マイクにもこれら魔法を使う可能だ。

しかしそれを同時となると一気に魔力器官が耐えられずに、自壊し、脳が使い物にならなくなる。



フーベルトという少年は、一度学習すると忘れないという天才肌に、4つもの魔法を稼働させることに耐えることができる魔力器官、そしてそれを自由に操ることを可能にしている脳、そして自分に対する限界はないという精神性で構成されているのだ。



それを理解したマイクは降りることにした。


対等な同僚という立場で戦うことを。


マイクは特段自分が優れていると思ったことはない。


何をやるにも人並みの時間がかかり、取り柄といえば身体能力だけ。


そんなマイクが小さな拘りを持っている余裕などない。


魔法協会という高等で、高貴な組織を構成する一人な以上、彼が育った街での風土を出すわけにはいかない。


そんなくだらない矜持はなんの役にも立たない。


たとえ属する組織が変われど、その人が変わるのは表面上だけ。

はるか底の心に深く根を張った生き方は隠すことはできない。



一呼吸置き、マイクは魔力を一つだけのことに集中させる。


中和術式に頼ることをやめたマイクの体は外の気温差に耐えられず、皮膚はもちろん、体の中の血液、肺の中までもが凍り始めた。


だが彼がそれを気にするそぶりは見せない。


やることは単純。マイクの体の限界が来る前に泥臭くてでもフーベルトの意識を奪う。



近づいたマイクに何かあると理解したのだろう。


フーベルトがさらに気温を下げ、自分の身体能力を強化する。



さらに、フーベルトはマイクに攻撃をすることをやめない。

マイクは迫る矢を拳で砕き、フーベルトへより近づく。


砕かれた矢がその瞬間から氷始め、マイクの手へと侵食し始める。


だが、それは欠けた部分、義手の方だった。

それに気づくのにワンテンポ遅れたフーベルトの防御は間に合わない。


マイクが致命的な攻撃を入れる。




「くだらない喧嘩ね」


そんな呑気な声と共にフランが結界へと入ったと同時に破壊した。

マイクがフーベルトへ拳を入れようとする直前にフランの魔法が発動する。



そうすると突然に、マイクの呼吸がしやすくなると同時に身体機能が急激に低下、スピードを制御できなくなった彼はそのまま結界の外へと放り出された。


「アイクはもう解決しちゃったわ」




 *


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