第19話 進展(3)
「何よりは発火原因だな」
大量の資料に、文字で埋め尽くされたホワイトボード。
そしてその情報の世界を乗りこなしているのは16歳のフーベルトだ。
それを見ていたマイクは、この天才少年の頭の中の一部を垣間見たような感覚になる。
「一度現場に行ってみたらどうだ?」
自分との才能の差に気落ちしたことを悟られないように声をかける。
「それはお前の役目だろ」
おそらく以前の空き巣に入ったことを指して言っているようだった。
マイクは納得がいかないと言う顔をする。
「お前は何もせず待っていたらいい。なに、すぐに次の仕事も見つかるさ」
フーベルトは自信満々にそう言ってのけた。
自分が負けるとは一切思っていない。
マイクは賭け金を設定した身の上、フーベルトの邪魔をした方が得だが、そんなことをすれば彼に殺されかねないと判断しやめることにした。
そして会議室で一人、二万は賭けすぎたかと不安に思うのだった。
*
「お前は空き巣もできないのか?」
「声が大きいですよ」
アイクたちはオフィスから出て現場から情報を集めることにしていた。
フルパーティーなら調査は部下に任せるアイクだが、今のチームは道徳心だけが取り柄のエルフしかいないので直々に出ることになったのだ。
「なぜ遺族の家を?」
「・・趣味でこんなことやってるわけないだろう?」
アイクの言葉にフランが頬を膨らます。
彼女はそうしていれば、外見だけで簡単に出世することができるだろうアイクは思う。
この世には変なおっさんも多く、彼女のルックスならそれを職業とするだけで食には困らないだろう。
だが、彼女はそれでもここにいる。
魔法しか取り柄のないアイクからすれば理解することができなかった。
「自然火ではここまで強い火にはなかなかなることはない」
答えが返ってくることを期待していなかったのか、フランがアイクの返答に驚いた。
「魔法だと?テロではないと言いませんでしたか?」
「テロではないかもしれないだ」
魔族のテロ、それは考える中でも最悪のシナリオだ。
だが可能性は排除しきれない。
フーベルトのこともあり、最悪の事態になりかねない。その時には、緊急用の弁が発動するのを祈るしかないだろう。
「・・上の連中は俺たちに魔族の仕業だと判断してもらいたいのかもな」
「なぜ?」
アイクはこの事件の依頼主が政府だと言うのも少し引っかかっていた。
ただ普通の連続火事の事件なら政府がわざわざ魔法協会、それもわざわざアイクの部署へ回すことはないからだ。
「魔族にはお前みたいなやつが多いからだよ」
適当を言ってフランをはぐらかす。
「?・・・先生はどうするつもりですか?」
「連続している火事を止め、上も納得させる。犯人が魔族かをはっきりとさせるぞ」
アイクはそう言ったものの、魔族と再び関わることになる可能性があることに嫌気が差していた。
*