第18話 分裂(3)
「国からの依頼を賭け事にしたの?」
アイクは再びステイに部屋へと呼ばれ、入室早々にそんなことを言われた。
「フランか?」
一番の可能性がある容疑者の名前を挙げる。
「そんなことをして、もしそれが遺族にでもバレたら、私はクビ。あなたも無事じゃ済まないわよ」
さすがの危機管理能力だ。
ステイはこういうときだけ目敏い。
「心配するな、フランもそこまでバカじゃない」
「本当に大丈夫なんでしょうね」
アイクは情報が漏れることはないと伝える。
「任せておけ、・・ワシントンは俺が負ける方に1万かけた」
アイクのその言葉に信じられないという顔をしたが、すぐに再びアイクへと向き直った。
「あなたに二万よ」
参戦表明をしたステイはそう言ってから、アイクを部屋から追い出した。
*
「なぜあんなことを?」
そう問いかけたマイクがいるのは魔法協会の一室だがアイクのオフィスとは違うある会議室だ。
ここは協会の職員認証カードさえ持っていれば誰でも借りることができる。
そこにいるのはマイクだけでなく、賭けの当事者であるフーベルトもいた。
ここへ移動した理由はフーベルトの言い出した勝負のせいでアイクのオフィスで仲良く仕事をすることができなくなったからだ。
「そんなことが気になるから俺についてきたのか?」
フーベルトが不満気に言う。だがマイクも好きでここに来たわけではない。
「アイクに言われた、子守をしろと」
「・・余計なことを」
資料から目を外さない忌々しげなフーベルトが呟く。
「もう一度聞こう、なぜ勝負なんかを?」
マイクがずっと気になっていた一番の疑問を問いかける。
「・・俺のためだ」
理解できなかったマイクはフーベルトは構うのはやめて自分の仕事をすることにした。
*
「煙草は?」
定員の半数となったアイクのオフィスで、我慢ならなくなったフランが吐き出すように言った。
「説教は聞き飽きた」
「・・なら、フーベルトのことを」
アイクはそれぐらいは答えてあげてもいいかと考える。
「浮かれた子供の鼻を折るにはいい時期だ。お礼参りも済んでない」
それを聞いたフランはうんざりしたような顔はしたものの何も言わなかった。
「マイクは二万、お前は?」
アイクがフランにこの勝負にいくらかけるのかと聞く。
フランは表情を変えることなく言い捨てた。
「賭けません」
*