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第16話 犯人(3)


「今回は遅かったな」


アイク背伸びをしながら隣にいるステイと共に長い廊下を歩いている。


「あなたの優秀な部下のせいでね」


ここは魔法協会の白い建物。

アイクは目にする光景が檻から見慣れたオフィスに変わってもあまり感慨は湧くことはなかった。


二日前、カールという少年の事件を解決し終えた後、アイクは自分のオフィスで居眠りをしていた。

そこへ現れたのが護衛隊だった。

彼を牢獄へと連行し、丸一日そこで過ごした。

そして今朝ステイのおかげで協会へと戻れたのである。


「雇った甲斐があるってもんだ」

 

可能性が高く、考えられることとしては知り合いによる密告だ。

問題なのはそれが誰かだと言うことだ。


「この出費分は取り戻してもらうわよ」


ステイが忌々し気にアイクの方を見る。


アイクが誰かしらに通報され囚われる、その度にステイが保釈させている。

いい加減にしてくれと言いたい気分だろう。



だがステイがそれほどのことをするのはアイクにそれと同等の価値があると信じているからである。


「国からの依頼よ、せいぜいお金に変えて頂戴ね」


そしてステイは今回もそのアイクの価値を存分に利用するため、彼に恩を着せたうえで仕事を振るのだった。




「ただいま」 


アイクはいつものように揃っていた部下たちに話しかけた。


「ご無事で何よりです」


「お前もな」


フランの心配にアイクが少し安心したように答える。

アイクはフランも自分の煙草関係で捕まっていたと聞いていたからだ。

だが彼女はアイクが見る限りは元気そうだった。


「煙草を吸っていたんですね」


何も知らなかったマイクが呟く。


「言ってなかったか」


そう言ってアイクは懐から禁じられた薬物を取り出し、口に咥える。


「・・・満足か?」


アイクはおそらく利敵行為を働いたであろうフーベルトの方を見る。


「なぜ俺だと?」


相変わらずの無表情で答える。


「消去法だ」


フーベルトはアイクの言葉を聞いて鼻で笑った。

だがアイクはそれで確信を持った。

そしてそのあとすぐ、部屋に木のようなものが割れる大きい音が響いた。


「年季が入っているんだ」 


その音がした方、つまりフーベルトに視線が集まる。

そこには盛大に壊れた椅子とその椅子に全体重をかけていたであろう神童が床に座っている。


「なんだ?」


アイクは両手を上に挙げ、とぼけてみせる。


「陰湿だな」


「お前よりマシだ」


バチバチと互いの視線がぶつかり合う。


 *


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