第15話 神童(3)
フーベルトは周りから天才、神童だと持て囃されながら生きてきた。
彼自身もその短い人生の中で何度も他人とは違うということ感じていた。
そしてそのまま生きて、物語に数いる一人の英雄としてこの世界の歴史に名を刻んで死んでいくものと思っている。
だが、最近になって自分の成長に疑問を感じていた。
確かに、彼の10歳から13歳くらいの時の成長スピードは同年代と比べて目覚ましいものがあっただろう。
しかしそこからの13歳から16歳の今に至るまで、自信で伸び悩んでいると感じる。
多くの国で様々な学問を学び、フーベルトは最小年で現在に存在する難関の試験に合格し、その合格者たちの中でも多くない席を争い、勝ち取った。
だが彼はそれで満足していない
人より勉強ができるとか、人より喧嘩が強いとか、その程度では彼の理想を体現することはできない。
フーベルトが混ざす理想とは最強。
この世界の中で強さという基準での天井だ。
自分に足りないものは何か。
何かが彼の成長を妨げている。
それを取り除かない限り、フーベルトは道を進むこととはできない。
彼はそれを知るために協会へと来た。
だがこの協会に来てから彼が得たことと言えば、どれだけ効率よく書類を処理できるかだけだった。
フーベルトの決断は早い。
自分自身の糧にならないと判断したら、彼がそこに留まる理由はない。
若く、未だ肉体的全盛期にすら到達していない貴重な年齢の期間を無駄にするわけにはいかない。
自分の成長のみにしか興味のない神童は誰にでも牙をむく。
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