02 檻山
ゴブリンに殴られて気を失った自分はどうやら引きずられて森の中にいるようだ
扱いが雑で、足を引っ張られながら背中、頭をゴリゴリと地面で削られながら移動していた
さすがに起きた
ちなみに小銭は相変わらず零れている、どんな原理だ
雑だがボロボロな縄にグルグルに縛られていたので抵抗は出来なかった
それならばと状況を判断しようと周りを見ていたがあまりにも暗くて何も見えなかった
時間帯は変わらず夜だ
それほど時間は経たずに、どうやらゴブリンは目的地に着いたようだ
少し慣れてきた目は、森の中に建物?を確認した
…いや、牢屋か
カマクラのような丸っこい山に、入口にあたるところは鉄格子がはめ込まれている
中には人がいるようだが、暗くてよく見えない
この小さな山の上には別のゴブリンがいて、俺を持ってるゴブリンを呼んでいる
自分はそのゴブリンに引き渡され、山の上から落とされた
上は空いていたようで少しの落下の後硬い地面にぶつかる
べしんっ ジャラジャラっ!
痛みと共に硬貨が散らばった、訳分からん体になってしまった
「ひっ」
体は置いといて、芋虫のように起き上がると周りに視線を感じた
人だ、この檻の中には人がいた
◇
ゴブリンの檻の中にいたのは4人
月明かりがここだけ照らすように、ほんのりと明るい
1人は全身傷だらけのボロボロの男、体格はいいが虫の息で死んだように寝ている
1人は女性、見るのも躊躇われる姿なのが一瞬視界に映っただけでも分かる
ゴブリンの生態が自分のファンタジー知識と同じなら
…吐き気がした、考えるのはダメだ
あとの2人は自分と同じようにボロ縄で巻かれた女性
身奇麗さからまだ助かっていると思う
…1人は子供じゃないか、2人とも横たわっているため背丈が分かりずらいが、檻の角で蹲っているのは子供のように見えた
分析するように目線を向けていると女性と目が合った
「〜?〜…?」
「えっと」
硬貨を拾ってまじまじと眺める女性どっから出ているのか聞いているようだ
しかし硬貨を垂れ流す理由は自分ですら分かっていないのだ
「これはお金で」
「…?〜〜?」
何を言ったのか分からなかった
しかし、懐から何かを出す
女性が身動ぎしながら見せてくれたのはどうやらお金のようなものだった
どうやら縄は解けているらしく、どうも逃げ出すチャンスを伺っているようにみえる
女性の見せてくれたお金?を見ながら、周りの状況も確認した
ゴブリンは複数匹いるようだが
この檻山から少し離れたところでギャイギャイ言っている
檻の上もゴブリンはいない
開けたところに檻があるようで月明かりで見えるが、少し先は暗くて見えない
「金貨、銀貨、銅貨」
女性の見せてくれたお金はなんとも微妙なものだった
規格もバラバラで質量がだいたい似通ってる程度
偽金が随分と作りやすそうと思った
「…」
女性は自分を怪しい存在と決めたようだ
まぁ貨幣を知らなかったらそうだし、会話が出来ないしな
目線が痛い、どう弁解しようか考えていたら
グイと体が引っ張られた
「ギャギャ!」
いつの間にかゴブリンが檻の向こうにいて、自分から伸びている縄を握っていた
その縄を引っ張っている
グイグイと引っ張られ、檻に体がくっついた
べコンっ ジャラジャラ
唐突に殴られた
檻の隙間から木の棒を振るわれ頭を殴られた
めちゃめちゃに痛い
さらに体をつつくように刺してくる
これも痛い
「あ、あの!?い、痛い、いたい…」
あまりの痛さに涙が出る
コイツら加減というものを知らない
そして自分から出た金貨、銀貨を拾ってニタニタしている
「…〜〜」
後ろから女性の呟きが聞こえた
それを聞いて自分も気づいた
自分から出ていた硬貨が日本円から綺麗な銀貨、金貨になっていたのだ
今の一瞬で何が変わったのか、そもそも出てる理由も分からないのに説明できるはずもない
ただ、とにかく痛い
「あの、おがね、おがねならあるんです」
手からマジックのように金貨を出してみるが
残念ながらゴブリンは笑うだけだ
ただ、ただ殴られた
自分は泣きながらお金を出すことしか出来なかった
頭はぼんやりとしていた
すぐ近くで、ボロボロの男性が檻越しに殴られていた気がするし
ボロボロの女性がゴブリンによってさらにボロボロにされていた
さっき会話?をした女性も檻の外側に引きずられる
中途半端に解いたせいか首元に引っかかっていて苦しそうだった
この夢は覚めない
地獄に金は必要ない
ぼんやりとした視界の中で、女性は必死に抵抗していた
そりゃそうだろう、死んだ方がマシな目に遭わされるんだから
その様子を朦朧とする意識の中で見ていた
ゴブリンはどうも自分のことを叩けば金貨が出るおもちゃか何かと思っているらしい
…違いないかもしれないな
女性の抵抗は上手くいったようで、彼女はゴブリンのおもちゃにはならなかった
その過程で男性も女性も自分すら彼女が檻から距離をとるために足蹴にされたが
ボコボコにされた自分はもう何も思わなかった
イライラした様子のゴブリンがもうひとつの縄を引っ張った
角でうずくまっていた子の縄だ
「…ひっ」
フードを深く被っていて表情はよく見えないが涙がボロボロとこぼれていた
その子と目が合ったような気がした
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