九章 ガルム騎行
ガルム牧場の傍にあるレンタルガルムの看板がかかった小屋の前まで来た私は
「間違いなさそうね・・後は予算と相談かしら。」
そう言いつつ扉を開けて中へ入った。
「おやお客さんか、ガルムをご希望かな?」
農夫のような恰好をした牧場主らしき老人が椅子から立ち上がり聞いて来た。
「そうね、長距離移動用のレンタルしたいんだけど・・・」
「人数は?」「5人。4人は荷物背負ってるわ。」
「ふうむ・・3頭で事足りるな。で、目的地は??」
「帝国第一国境まで。途中リョースロヴナで一泊したいんだけど。」
「お客さん、ウチの活きの良いガルムなら直行した方が早いですぜ。値段も安く済む。」
「そう、ロヴナで一泊した時の料金はいくらかしら??」
「少々お待ち下せえ。」
そう言うと老人はそろばんをパチパチ弾いて何やら考え込み・・・
「本来なら1ラディールと17ディールになりやすが・・・お客さんは運が良い、今の時期は閑散期なので特別に57ディールでようござんす。」
「特別・・ね、ロヴナを素通りしたら??」
「その場合は52ディールで済みますが。」
「私達、王国の騎士団の者で任務の為にガルムを借りたいんだけど・・・割引利くかしら?」
「馬鹿言っちゃいけねえお客さん、ガルムは雑食で餌代がかかるんだ、これ以上の割引は出来ませんぜ。」
「餌代・・・ね、じゃあリョースロヴナの第12騎士団が餌を提供してくれるわ。これでどうかしら。」
「ふむ・・仕方ありませんロヴナで一泊して52ディールで手を打ちましょう。」
「決まりね。」料金を支払うと老人が「ペリス!!!ペリース!!!」と声を上げた。
「何だい父さん・・」2階から老人の息子らしき若者が降りて来る。
「仕事じゃ。3頭で帝国第一まで駆け足。途中ロヴナで一泊。おぬしの回送は同じくロヴナで一泊、餌代は騎士団が肩代わりしてくれるとの話じゃ。」
「分かったよ今から準備してくる。」
「ウチの次男が先導役を務めるのでしばしお待ちを。」
「じゃあ全員連れて来るわね。」
トーリアストーンまで戻ると暇そうに駄弁っているウィルとナッセルが顔を上げて「どーよ、俺達ガルムに乗れそうか??」「首尾は上々かの??」と聞いて来た。
「そうね・・クソッタレな顔ぶれに朗報よ今からロヴナまでガルムで突っ走るわ。」
「おぉ!やりぃっぅ!!!」途端にウィルの顔が明るくなる。
「帝国第一までじゃないのか??」シンの問いに「心配無用、ロヴナで一泊したら翌日帝国第一までガルムで直行する契約だから安心して頂戴。もちろん値切ったわよ。」首を傾け得意気に片目をウィンクして返答した。
「これでもう歩かなくて済むんだね、良かった・・・」
ズクラッドがホッとした顔でつぶやく。
「坊主、ガルムに乗った事はあんのか?」
「馬鹿にするない、ミューンズドヴルメでガルムには飽きる程乗ってるから大丈夫だよ。」
「ハハッゥ、そうか・・小っこい身体で振り落とされないか気が気じゃなかったが・・それならOKだな。」
「そうだ!みんな・・渡したいモノがあるんだ。」ズクラッドの発言に「んあ?」「うん?」「なんじゃ・・」一同の視線が集中する。
「なぁに、おチビちゃん。」
「コレ・・」懐から小袋を取り出すと逆さまに手の平へ揺すって小豆サイズの丸い緑色をした代物がポロポロこぼれ落ちた。
「なんだこりゃ??」「・・薬かしら??」
「そう、酔い止めだよ。ガルムはよく揺れるからみんな乗る前に飲んでおきなよ。」
「随分と気が利くな。」シンが感心の声を上げる。
「えへへ・・オイラも仕事の役に立つなら喜んで提供するともさっぅ」両指をパチパチと打ち鳴らしてビシッゥと人差し指で決めポーズをする。
「でかしたぞ坊主!!!」ウィルがズクラッドの髪をクシャクシャにして称賛したが「やめてよ兄ちゃん嬉しいのは分かったから・・・」
少し嫌がって距離を置くのが微笑ましい。
全員が酔い止めを飲むとガルム牧場へと向かった。
すっかり準備は整っている様子で牧場主の次男坊・・ぺリスが鼻歌混じりにガルムの世話をしていた。
「来たか、アンタがリーダーか??」「えぇそうよ。」
「ガルム三頭でパックを組むぞ。アンタは俺のガルムと一緒だ。後ろに付いてくれ。残りの4人は2人ずつ乗って手綱をしっかり持ってな。パックリーダーが走り出すと勝手に追いかけるから難しい操作は必要無い。あと・・全員このネックレスを付けてくれ。」
そう言うと笛が付いたネックレスを手渡してきた。
「これは??」
「ガルムの走りは荒い。万が一振り落とされた場合に、すぐにこの笛を吹くんだ。そしたらガルムは止まるよう訓練されている。」
「ほぉ・・・最近のレンタルガルムは便利になったもんだな。俺が昔乗った時は・・」
「シン、おめえの苦労話はまた今度にしてくれねえか。さっさと乗ろうぜ。」
ウィルがズクラッドをヒョイと担ぎ上げると「ほら坊主落ちるなよ。」とガルムの背に乗せる。
「俺は坊主と乗るからシンはナッセルの爺さんと乗ってくれ。」
「ああ・・・いつになく乗り気だな。明日は竜の歯でも降るのか。」ぼやきながらシンはガルムに跨り手綱を持つ。
「ほっほっほ・・勢い付いて転ばぬようになウィルよ。さあてシンよ後ろから爺がしがみ付いておくからよろしくのう・・」
「ウィルったら、ガルムに乗れると分かったら急に元気になるんだから。全く正直よね・・よっこらせ、と。」
「ようし準備が良いなら出発しよう。」
こうして私達はガルムに乗り出発した。鼻息が荒いガルムがドカカッゥドカカッゥ・・と激しく走り出す。
「うひょォォーーっぅ速えぇーーっぅ」揺れるガルムの背中でウィルがはしゃぐ。
「まったく、お調子者ね・・」呆れて声が出るが
「はっはっはー、はいよぉォーーーッゥ突っ走れーーっぅ」何処吹く風である。
私は靡く髪をかき上げながら「ねえ、ちょっとぺリスさんロヴナまでどれくらい??」
「あぁ・・途中休憩入れて3時間半かな。夕方までには着くよ。」
それから1時間近く経過しただろうか・・・幾人かの行商人や通行人とすれ違い、ガルムは走り続けた。
持久力のあるガルムは長距離移動に打って付けだ。街ごとに馬を乗り換える伝馬制ならそちらの方が断然早いが非常事態でしか使えないので致し方ない。
ピュルルルルッゥ・・ぺリスが笛を吹いてガルムが止まった。
「息が上がったので一旦休憩だ。20分くらい待ってくれ。」
「了解。さあ私達も休憩しましょ。」
「俺はケツが痛くて仕方ねえや・・」ウィルが尻を撫でながら泣き言を言ってくる。最初の威勢は何処へ行ったのやら。
「我慢しなさい、全員そうよ。」私だってデリケートゾーンが痛いが従者の手前で弱音は吐けない。
「・・・力を抜いてガルムの動きに合わせろ。ウィル、お前は張り切り過ぎて腰が沿ってるんだ。まだまだ先は長いぞ。」シンが的確なアドバイスをするのを聞いて私も心の中でこっそり参考にしてみようかと考える。
「だってよぉ・・おめえみてえに長年ガルムや馬やラピカルダに乗り慣れてるワケじゃねえんだこちとら。そうそう真似できねえってば。」ウィルは半ばやり投げに文句を言った。
実にこの男らしい向上心の欠片も無い有様に「アンタっていつもそうよね・・少しは経験者の助言に耳を傾ける努力でもしたらどう??」反省を促してみる。
「へいへい分かりましたよ、我らが騎士様がそう仰るなら。」
「兄ちゃん前後交代しようか?ガルムは後ろの方がよく揺れるんだ。」ズクラッドが助け舟を出したのを見るにこのホビットは利他心に満ちているようだ。酔い止めの薬といい、一時的な仲間にせよ思いやりの心が非常に強い。
「本当か!?そりゃ有難えや・・休憩終わったら是非代わってくれ!!!!」楽な対処法に飛びつかないウィルではない。
予想通りの反応に「ハッゥ・・」と呆れてモノが言えなくなる。
「だけどよ、坊主おめえは大丈夫なのか??」一応はズクラッドの身を案じるトコロがこの男の長所を現していた。そう、何かと優しいのだ。
「オイラは平気だよ!!ミューンズドヴルメで8年間ガルムを乗り回したからね、コツは覚えてるから安心して後ろは任せておくれ。」
「そっかぁ、そりゃ助かるぜ。ハハッゥ、役に立つなぁ坊主。」ズクラッドの頭をナデナデしてここぞとばかりに褒める。
「誰もこの老骨の心配はしてくれんのう・・・」ナッセルが寂しく呟く。
普段はウィルと仲が良いこの似非神父モドキはズクラッドに相棒を取られて嫉妬しているようにも感じられた。
「あら爺さん下手に心配したらまだそんな歳じゃないって怒られるかとばかり・・思ってたわ。」適当に茶化してみる。
「ワシは足手まといになったら引退する時じゃと決めておるわ。エリューヴィン、お主に迷惑はかけたくないからの。」
「そんな気概があるようならまだまだ頑張れそうね、安心したわ。腕のいい呪術士の代打を探すのは骨が折れるもの。」
「ほっほっほ・・そうじゃろう、そうじゃろう・・」遠回しに忖度するとニヤニヤするこのボケ老人は誠に以てチョロい爺だ。死ぬまで扱き使ってやろう。
「さあて皆、水分補給はしっかりね。トイレ行きたいなら今のうちよ。」そう促すと水筒から水を含み荷物から地図を取り出した。
「ぺリスさん、ちょっと来てくれる??」ガルムの調子を見ていたぺリスを呼ぶ。
「なんだ?」「今どの辺かしら・・」
「そうだな、大体この辺りだ。」リョースコノーティアから北に4万トーリア付近を指し示す。
「王都からは6万トーリアね。で、後3万トーリアでリョースロヴナ・・か。」
地図上のリョースロヴナをトントンと叩く。
「ああ。あと2時間と少しで付く。」
そこから更に視線を上げて「・・で、ロヴナから帝国第一国境まで3万4千トーリアくらいかしら。」
「聞いた予定ではロヴナで一泊するんだろ??それとも予定変更してこのまま走るかい??」
「いえ一泊するわ。で、明日の午前中には着くかしら。」
「任せておくんなせえ。」私は満足そうに頷いた。これなら明日の昼にはミューンズドヴルメに入国できる。ヨハン殺害の容疑者が出国してから3日遅れだが捜索に問題はないだろう。
それもこれも潤沢な支度金とナターシャの心遣いのおかげだ。
ただの殺人事件の捜査にしては第5・第6騎士団まで動員して大掛かりなのが気になるがそれだけゲーニヒス領域での発掘調査が王家にとって重要案件だったに違いない。
「まぁ・・上の都合なんて知る由も無いわね・・」休憩している仲間達を眺めながらポツリと呟いた。
ウィルがズクラッドに水筒を手渡し笑いあってる。誰とでも仲良くやっていけるこの男の気楽さはある意味で羨ましい。人間関係が煩わしい私の足りない部分を必要以上に補ってくれている感に改めて従者としての有難みを痛感さぜるを得ない。
ナッセルは呑気に帝国産の紙巻き煙草を吹かしている・・呪術士としての知見に長けたこの似非神父は何処か飄々とした柄も知れぬ雰囲気を醸し出しており、すぐに他者へ迎合するかと思えばへそを曲げれば梃子でも動かない。そして知識は語るが己は語らない。故に年齢も不明だ。素性も神父をしていた過去があるとしか分からないし、それが本当かどうかも怪しい。だが何かと役に立つのは確かなので下手に詮索して機嫌を損ねるのは止しておいた方がお互いの為だ。
シンは木陰で両腕を組んで佇んでいる。剣の腕は一流、巻物も十全に扱いこなして主に戦闘面で頼りになる男だが人付き合いは悪く孤独を好む習癖があり滅多な事では他人に心を開かない。私とは気が合うようで深い信頼関係が構築されているが、第13騎士団に在籍しているのも今だけでいずれは去ると明言しているのできっと私も彼の人生における旅路で出会った数多くの一人に過ぎない存在なのだろう。
そう思うと胸が痛い。シンは私が騎士になってから最高のパートナーであり安心して背中を任せられる唯一無二の存在であると言っても過言ではない。だが私の口から未練たらしく追いすがるのは彼も望んでいないハズだ。そういう男だ。
「準備が良ければそろそろ出発しようか。」ぺリスがやってきて聞いて来た。
「OK,さあみんな出発するわよ。さっさと身支度して頂戴。」
「よっしゃ行くか、坊主準備は良いか?」
「もちろんだよ。置いてきぼりは御免だからね。報酬を貰うまでは一蓮托生!」
「ほっほっほ・・ワシャ歳のせいか疲れが取れんのう・・・が、まぁ付いてくぞい。」
私達は再びぺリスの先導の元ガルムで駆けだした。力を抜いて・・ガルムの動きに合わせる・・意識してみたものの「イマイチ慣れないわね・・」デリケートゾーンへの感触は先ほどとあまり変わらない。生理じゃなくて良かった・・・と思いつつ他の男メンバーは平気なのか疑問にも感じた。
「ま・・分かるワケないか。」
ガルムの背中で揺られ続けてどのくらい経っただろうか・・・途中休憩を挟みながらも走り続け私達の目前にとうとう美麗な湾岸都市リョースロヴナの景観が露わとなってきた。
リシャーヴ王国北側の中央山脈から流れるロヴナ河の河口流域にあるこの都市は、人口1万2000人程で運河や双極海を利用した海上輸送で栄えた都市として名高く王国北部の中核都市でもある。4年前のミューンズドヴルメ紛争で本営が敷かれ堅固なシャリアンヒルデ城に副王陛下が鎮座して指揮を振るったのが記憶に新しい。
流石に9万トーリアも王都から離れるとその影響は薄く独自色が強い・・俗に言うリョース文化圏の中心部だ。南北に伸びているリョース街道はロヴナの大動脈とも称される。帝国や連邦諸国との海上交易も盛んで経済力では王都よりも抜きんでている。
「ロヴナへは騎乗通行は出来ない、ここで降りよう。」「了解。」
ぺリスの言うがまま私達はガルムから降りて麗しい都市ロヴナへ向けて歩き出した。
「ロヴナへ来たことは??」ぺリスの問いに「一度だけ。綺麗な白煉瓦が特徴の街並みと城しか記憶にないわ。」
「そうか、君たちは??」
「俺はガキの頃に親に連れられて旅行で来た事があるぜ。特産品のイワシの蒲焼が旨かったなぁ・・・今でも夢に見るくれえ旨かった。また喰えると思うと感慨深いモンがあるぜ。」
まるでこれからイワシの蒲焼を私の奢りで食べるのが前提の話に「ウィル、アンタってばすぐ飯の話ね。言っとくけどアンタの食い道楽の為の遠征じゃないのよ。」
ピシャリと窘めるが「ほっほっほ・・とか言いつつもちろんワシ等にもイワシの蒲焼をご馳走してくれるんじゃろうな??」ナッセルまでその気で居る。
「俺は何度も来ているな・・双極半島を旅するにあたってこの都市は重要な位置にある。連邦諸国からリシャーヴ王国、マルネラント大公国、ミューンズドヴルメへアクセスするにはここが玄関口だ。」
「ほう、君は旅人だったのかい??」シンの話に興味を惹かれたのかぺリスが質問を飛ばす。
「ああ・・10年以上双極半島を旅してきた。行った事が無い都市は数える程だろう。」
「それが何故リシャーヴの騎士に??」
「騎士じゃない、ただの従者だ。ちょっと野暮用があって王都に留まっている・・」
「それで・・君からしてリョースロヴナは他国の都市と比べてどうだい??おれは外国を知らないんだ。一年中リョース街道を行ったり来たりの毎日だからなぁ・・ロヴナ以上の都市を見た事が無い。」
「そうか、ロヴナは・・・そうだな中規模ながらも景観が良く観光するに悪くない名所だと思う。」
「あ~ら、無理に褒めなくて良いのよシン。どうせ帝国のナルルカティアやティストレテと比べたら吹けば軽く飛ぶ田舎街じゃない。」私の指摘に「おいおいリシャーヴの騎士様ともあろうお方が帝国礼賛かよ、かぁぁーーっぅ世知辛いねえ・・」ウィルが文句を付ける。
「まぁ流石に規模が違うからな・・・だが片田舎の都市でも風情はある、エリューヴィンお前さんにもいつか分かるさ。」シンの諭した様な論調に続いて「だってよ、我らが騎士様は愛国心が足りねえなあ。」イラつく余計な一言に私は爆発寸前になった。
「はいはい、私が悪かったわよ・・・どうせ本でしか知らない私の帝国事情の知識なんてあまり役に立たないって分かってるからっぅ!!!!」そう怒鳴ると一同が静まり返る。
「お姉さん、帝国を旅したいならオイラがいつでも案内するよ??」ズクラッドがおずおずと申し出るが少し怖がっている様にも見える。
「あら助かるわおチビちゃん、でも私は騎士として王都の治安を担う責務があるから帝国へは私用で旅出来ないの。そうね、私がその責務から解放された暁にはよろしく頼むわ。」
「・・・旅なら俺も案内出来るが。」
「シン、アンタどうせ王都での用事とやらが済んだら独り旅に出るつもりでしょ。私は数年で騎士を辞める気はサラサラ無いわ。悪いけどタイミングが合わないのよね。」
「へえ・・君たちは色々と個人的事情があるようだね。騎士団にしては少し毛色が違う。面白いお客さんだ。」何が面白いのか理解不能だが寄せ集めの雑用騎士団なら所詮こんなモノだ。
「おや・・検問してるな珍しい・・・」
ロヴナへの入り口付近に第12騎士団の者だろうか・・・?それらしき人物が複数たむろしているのが確認できる。
「何か事件でもあったのかしら。」
「それにしちゃ暇そうだな。忙しい俺等と代わって欲しいくらいだ。」
「ほっほっほ・・ウィルよ第12騎士団の従者は転勤族じゃぞ。僻地へ飛ばされても文句は言えんのう・・」
「げげっぅ何だよそれ。冗談じゃあねえ・・俺には向いてないな・・・」
検問所へ近づくと「待て、貴公等何者だ??」案の定呼び止められた。
「第13騎士団の者よ、はいこれ証明書。」
「第13騎士団だと!?待っていた、城へ急行してくれ。」
「ハァ??私達の任務に何か関係が??」
「詳しくは我々も知らん。ただ第13騎士団が到着したら城へ呼ぶよう命令を受けている。」
「なんだ・・俺達の為の検問だったのかよ。」「まさかの事態じゃな。」「厄介事で無ければ良いが。」口々にぼやくと私達は城へと向かった。
年季の入った石畳の路上を進むと真っ白な煉瓦で建てられた建築物が立ち並ぶ。空には快晴の中、カモメが鳴きながら飛び交い双極海が眼下に広がっており沢山の船が波止場につないである。
シンの言う通り悪くない街だ。
「そろそろ近場の牧場へガルムを連れて行くつもりだが・・・」途中ぺリスが提言するが「餌代はコッチ持ちでしょ??城の馬屋につないでおくよう話を通しておくからこのまま来てくれる??」断っておいた。
城の前まで来ると「そこの、止まれ!何用か!?」
衛兵が詰問して来たので「第13騎士団の者よ。城へ行くよう指示されたんだけど・・・」と答えると「何!?そうか、通れ。だがガルムは駄目だ。」
「このガルム達、馬屋へつないでおいてくれないかしら・・任務に必要なの。アルキュレイア騎士団長とは話が通ってるから。」適当なデタラメを吹かしてみる。
「我らが騎士団長と!?承知した、では馬屋へ案内しよう。」
「ついでにガルムに残飯でも与えておいてくれない??協力に感謝するわ。」
その場で馬屋へ連れられて行くぺリスに「明日の朝8時で城の前に来てくれる?」そう別れを告げると私達は城の中へと入って行った。