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四十三章 急転直下!カフェ・ルーチェリア

私はカフェ・ルーチェリアの扉を開けるとヅカヅカと踏み込んで中央のテーブル席にドスンと座った。

慌ててウェイターが注文を受け付けに来る。

「また来られたのですね・・20番対応でよろしいでしょうか??」

「珈琲一杯。」

「へ!?は・・はぁ。」

怒るな・・怒っては駄目・・冷静になるのよエリューヴィン。

私は心の中で自分にそう言い聞かせると両手で頬をバシッゥと叩いた。

「お嬢ちゃん変わった肌をしているね・・冒険者かい??」

隣の席の老人が声を掛けて来た。

「えぇ、よく言われるわ。しがない冒険者だったらどんなに良かった事か。」

「その様子だと男にでも振られたのかのう??」

「そうかも。振られたというより裏切られたって方が正しいかしら。」

「こんな美人を裏切るとはとんでもない男じゃな。」

「あはは・・褒めてくれてありがとう、でも私は美人なんかじゃない。その自覚くらいはあるわ。」

「レギュラー珈琲お待ち!追加注文は無しでよろしいので??」

ウェイターが白いコップになみなみの珈琲をトンとテーブルに置く。

「今のトコはね。後でまた注文するわ。」

すぐに熱い珈琲を啜る。ほんのり甘く渋い苦味・・妙にアッサリだ。なるほどこれがラミューダの味か。

「珈琲だけを頼む奴には何かしらの事情があると聞くがのう。」

老人が続きを喋る。どうやら暇らしい。

「気分を落ち着かせるのに珈琲は最適だわ。少なくとも私にとっては・・」

そう、子供の頃から珈琲は私の大切な嗜好品だ。珈琲失くして我が人生は語れない。

「それが良え、嫌な事は珈琲で流して綺麗サッパリ忘れてしまうが吉じゃ。」

「少し違うわ。これは嫌な事に立ち向かう前に心を整える準備よ。」

「ほっほう、裏切った男に会いに行くのじゃな??」

「ん・・正解よ。」

グイグイとコップを呷りダンッゥ!!!テーブルに叩きつけた。

「ふぅ・・嫌いな男と駆け引きをするのに何かアドバイスはあるかしら??」

「そりゃ決まっとる、その男の笑顔を思い出すんじゃ。きっと上手くいくわい。」

別れ際のアハリルの高笑いを思い出して一気に毛が逆立つ。

ピキィッゥ・・ミシミシミシ・・バキャアッゥ!!!!

「ひぃぃ!?な・・なんちゅう力じゃ・・」

粉々になったコップを払い退けると恐れおののく老人に「落とし前を付けてくるわ。」と言い残してカウンターへと足を運んだ。

「ちょっと・・て、店長ぉぉおおーーっぅ!!!」

勝手に厨房の中へと侵入する私をウェイターが制止しようとするが邪魔だと言わんばかりにドンと胸を突いて振り切る。

奥から困惑気味な顔をした店主が出て来た。

「褐色の騎士様・・止めても無駄なようですね。」

「止められるモノなら止めてみなさい。」

毅然とした態度で言い放つ私に店主は気後れして躊躇しつつも「分かりました・・ただ一点、我らが主である騎士アハリルと対面する時、貴方の生殺与奪権は彼にあります。重々ご承知の上で面会して下さい。」そう言い接触呪文で壁の横をタッチするとゴゴゴゴ・・壁が半回転して螺旋階段へと続く道が現れる。

ランタンを受け取りつつ私は店主に皮肉たっぷりの毒を吐いた。

「私の生殺与奪権がアハリルに在ると言うなら逆に彼を殺してしまった場合は免責されるのかしらね。」

「それは・・有り得ない話です。お好きにどうぞ。」まるでアハリルの力に絶大な信頼を置いているかような返事に珈琲で鎮めた心が烈火の如く燃え上がる。

「じゃあ好きにさせて貰うわ。」

そう言い放つと奥底へと続く螺旋階段をダッシュで猛然と駆け下りて行った。

途中で動く石像が現れるが鬱憤晴らしと言わんばかりに粉々に打ち砕いて突き進んだ。

「ハッゥ・・木偶の坊風情がっぅ!!!」

そのまま最深部へと辿り着くと修理したと思われる厳重な扉を蹴り上げる。

バカァーーンッゥ!!!

「アハリル!!!どういう事か釈明しなさいっぅ!!!」

部屋へ入るなり私は怒鳴り込んだ。

「つくづく品の無い小娘だ・・探し物はコレかな??」

そこには壁に背を預けてレッドダイヤモンドが埋め込まれた宝飾品を片手に不敵な笑みを浮かべるアハリルが居た。

その姿はクリスヴァリアーズの司会者そのものだった。

「なっぅ!?・・そういう事・・だったのね。」

まさか司会者に化けていたとは。

「クックック・・・一目でコレが王家の財宝だと気が付いたよ。リシャーヴ王家に仕える騎士団の身としてこの価値を知らぬ者は節穴の目だろう。」

「落札された方は・・偽物??本物そっくりだったけど。」

右手を宙に広げて驚きの声で説明を求める。

「私が複製可能なのは顔面だけだと思っていたのかね??アレはただの木工だ・・2ヶ月もすれば元に戻る。」

目を細めて淡々と語るアハリルは何処か超然とした雰囲気を醸し出していた。

まるで私の存在など歯牙にも掛けぬように。

「演技にしては出来過ぎた司会だったわね・・どうやったのかしら??」

「接触呪文で彼の脳内記憶をインプットした・・後は火山の噴火口に突き落として終わりだ、なぁに簡単な仕事だったよ。」

「また人を殺したのね・・」

さり気無く殺人を犯した事をさも当然の如く語るアハリルに私は嫌悪感を示したが動じる様子すら無い。

「あぁ君がドレスを着て必死に入札を繰り返す姿は実に滑稽だったな。」

私の怒りのボルテージに更に追い打ちが掛かる。

「最初から私を弄んでいたのね・・意味のない事をさせて!さぞご満足でしょうね。」

「如何にも。人を騙すのは気分が良い。騙された者が非業の死を遂げるのは芸術的ですらある。」

私は深く溜息を付き軽蔑の眼差しを向けた。

こんな奴が騎士団に在籍しているとは。

「そう・・何はともあれ王家の財宝は手に入った。貴方の仕事は終わりよ。さあ、それを寄越して。」

若干警戒しつつも私は当然であろう要求をした。そうとも、騎士団の互助努力義務を果たしたまでの事だ。

「確かに最初はタダ働きしても良いと思っていたが・・現物を見て気が変わった。素晴らしい魔力が秘められた呪符石だ。これは私が預かっておこう。」

「!!!」

ウットリと宝飾品を片手に眺めるアハリルの返答にキッゥと睨み上げる。

一筋縄ではいかぬ、いけ好かない野郎だとは思っていたがここまでとは・・

「フザケないで。それは副王陛下から勅命を受けた私の重要な任務に関わる王家の財宝よ。アンタにそんな権限なんて無い。」

「ほぉう?では後で私から副王に届けるとするか・・それで万事解決だろう??」

「どうやら話が通じないようね・・」

私は両腰のホルダーに手を伸ばすと留め具を弾いた。

「10秒以内に考えを改めなさい。さもなくば実力行使するわ。」

「ハッハァァーーッゥ実力行使だと!?言うじゃあないか・・呪術も使えぬ褐色の小娘がっぅ!!!」

そう言い放つと彼は王家の財宝をベッドの上に投げ込み片手を壁に付けながらもう片方の手で剣を抜く。

「フゥッゥ・・騎士団のお仲間なら特別待遇だとでも思ったか!?ヴァラー、聞き分けの悪い褐色の騎士にお仕置きの時間だ。この私に歯向かう愚か者がどのような末路を辿るのか身を以て教えてやらねばな・・例外無くあらゆる過去から現在までの通りにっぅ!!!!」

途端に爆発的な呪力の増強でアハリルの全身からこの世の物とは思えないドス黒いオーラが噴出する。明らかに並みの呪術士では無い。

勝てないかも知れない・・だが、ここで任務を放り投げるなんて以ての外だ。

「選択の余地は無さそうね・・今まで何人殺して来たのか知らないけど、私で打ち止めにしてあげる。」

覚悟を決めたその瞬間、全身が硬直して動かない事に気が付いた。

「ぐっぅ・・」

「身体が動かない、か?私の接触呪文が壁伝いに君の動きを封じた・・あぁもちろん呼吸や心臓を止めて楽に逝かせてやる事も可能だ。でもそれでは面白くない。」動けない私の腹に剣先をなぞるように当てるとアハリルはクックック・・と笑い声を上げて続ける。

「憎悪や恐怖を抱いて人が死ぬとルの者は喜ぶと言うが・・私の場合はもっとかも知れんな。そしてヴァラー、じっくりと彼女の右腕を壊したまえ。」

グギギ・・体感した事も無い圧倒的な力で私の右腕があらぬ方向へと捻じ曲がる。ボキボキャアッゥ

「ぎっぅあぁアッゥ!!!」

成す術も無く骨が折れる音と共に苦痛の叫び声が自然に口から出た。

「今なら泣いて許しを乞えば無礼は不問に処しても良い・・過去の例から言えば、あまりにもやり過ぎるとせめてひと思いに殺してくれと泣き叫ぶ破目に成ると思うがね。」

「くた・・ばれっぅド畜生野郎!!!」

痛みに耐えながらペッゥ・・と唾を吐き精一杯の悪態を付く。

「なるほど??あくまでも意地を張るか。次はそうだな・・」

アハリルが手慣れた動きで剣を振りかざすと一閃した。

ザシュッゥ・・

下腹部からひやりと冷たい感触が伝わり・・遅れて、静かにとめども無く血が滴り落ちる。

「ふっぅ・・くっぅ・・」

「腸を傷付けた・・君はもう助からない。苦しみの果ての死が約束された今の気分はどうだ??後悔の念に苛まれるなら泣き言の一つや二つ聞いてやらんでもない。フッフッフ・・生意気な騎士を嬲り殺しにするのは無上の喜びと快感だとも。違うか??ヴァラー。」

彼にしか見えないという精霊にそう語り掛けるアハリルは邪悪な笑みを浮かべていた。こんな奴に命乞いをするくらいなら王家への忠誠心を示して死ぬ方が100倍はマシだ。だが残された者達の事を考えると心が痛む。

「私を・・殺したらナターシャと副王陛下が黙ってないわ・・当然ロンシャイアやランツィも。」

同胞殺しという禁忌に触れるのみならず私を愛しみ育んだ者達の恨みを買う意味を警告した。血の代価を払う時が必ず来るのだと。

「なに心配するな、証拠隠滅はお手の物だ。そうだ、左腕だけは解放してやろう。我が刃から必死に身を護ろうとするか弱い片腕を斬り刻む楽しみを味わうのも乙なモノだろう。なぁヴァラー。」

ピクッゥ・・左腕の感触が戻ったと同時にズドンッゥ!!!

電光石火で左腰のホルダーからラグナブレードを投げ付けた。

壁に突き刺さったラグナブレードを間一髪で避けたアハリルが首を捻って見やり、冷笑する。

「フン・・今際の咆哮か・・」

その瞬間、私はポケットから金色に輝くアミュレットを取り出すと頭上に掲げてその力を解放した。

「アンタの負けよっぅアハリルっぅ!!!!」

キィィイイーーーンッゥ!!!!キュルキュルキュル・・無数の小天使が呪術印字を紡ぎ始め接触呪文の呪縛が解け、みるみるうちに傷が癒えて行く。

「天使の祝福!?何故貴様がっぅ!!!」

黄金色の輝きに包まれた私を目を見開いて凝視するアハリルは心底驚いているかのような表情だった。

「何故も糞もあるかっぅこのような時の為っぅ!!!!」

右腕でラグナブレードを抜きつつ猛然と斬り掛かる。ガキィンッゥ・・咄嗟にアハリルが剣で受けるもジジジッゥ・・黄金の覇気と漆黒のオーラが激突干渉して・・ズヴァァーンッゥ衝撃波が幾重も部屋中を駆け巡り振動する。

瞬時に私はバックステップを踏むとシュバッゥダンッゥダンッゥ!!!目にも留まらぬ三角飛びでアハリルの死角からその背中を目掛けて飛び掛かった。

ジジッゥ・・ズヴァッゥ!!!背中から肩へ流れるように斬り刻む。

「チィッゥ!!ヴァラー!!!我こそは望む・・」

ドゴォッゥ・・即座に発声呪文を唱えるアハリルの胴を蹴り上げる。

「ぐふっぅ!!!」壁に叩きつけられた彼はそれでも詠唱を止めなかった。

「・・災いを齎す者よ今こそ契約を履行する時が来たりっぅ!!!」

ボウッゥ・・紫色に輝く次元の門が開きズォォオッゥ・・禍々しい翼を持つ小型の悪魔が這い出て来た。

シュッゥ・・私はすぐさま壁に刺さったもう片方のラグナブレードを抜き取ると、新たな脅威と対峙する。

「ハッゥ・・ルの者と通じてるなんてとんだ騎士ね。それともこれがアンタの流儀なのかしら??忌々しい!!!」

侮蔑の言葉を吐き捨てたが、アハリルの反応は無く・・沈黙を保ち傷を接触呪文で癒し始めた。

悪魔は仁王立ちで威嚇するかのように両手を広げてから口を開く。

「グワオォ・・フシュゥー・・弱き者よ、絶望するのだ・・爛漫に咲き溢れる命を蹂躙し我が糧としてくれようぞ。」

グググ・・顔面が奇妙に捻じ曲がったかと思うと途端に悪魔の口から横一線に熱線が迸り、その刹那に身を屈めた背後でジュゥゥーッゥと壁が蒸発する。

「!!!」熱線が追尾して暴れ狂いその軌跡が床と壁を焼き尽くす。私はジグザクに疾走回避しながら悪魔の懐に飛び込んだ。

ドズッゥ・・心臓にラグナブレードの一撃を喰い込ませる。

「キシャァァアアーーッゥ!!!」

怒りとも悲鳴とも似つかぬ叫び声を上げた悪魔がブルブルと翼を震わせて、一瞬にして空気が凍て付き氷気が広がって行く。

「な!?」

危険を察知した私はすぐさま刺さったラグナブレードを抜くと後方へ飛び跳ねる。

ピキピキピキ・・ビキッゥ!アッと言う間に悪魔の周囲2トーリアが氷に閉ざされ凍結した。

防御反応か・・様子を窺うも視界が悪い。

バリンッゥ!!ドンッゥ勢い良く飛び出た悪魔はそのまま天井に激突して首の骨を折りバタンと墜落する。

あまりにも間抜けな姿に唖然とするも、凍り付いた悪魔の翼が端から次々に細かく分離して高速で襲い掛かって来た。

「上等・・っぅ!!!」

カンッゥキンッゥガキャッゥ!!

祝福の力で異常に発達した動体視力は完璧でありラグナブレード二刀流で全て弾いてしまうのは造作も無い事だった。

翼が完全に消失しフラフラと立ち上がった悪魔へ躊躇する事も無くタタッゥと助走を掛けるとザンッゥズバッゥ!!!渾身の力で両手のラグナブレードを振るい首と胴体を二刀両断した。

「ガガッゥ・・グォワォオ・・」床にコロコロと転がる悪魔の頭が断末魔を発し、シュワァァアア・・その身体は燃え広がる羽毛のように雲散霧消して行った。

「見事なモノだ、下級とはいえルの者を圧倒するとはな。」

振り向くとアハリルが壁を背に腕を組んで佇んでいる。悪魔と同時攻撃をして来なかったのは私を試していたのだろうか??少なくとも彼には余裕が見て取れた。

「傷は癒えた・・さあ第二ラウンドと行くかね??」

こちらの動きを観察していたのか、それともこれから本気を出すのか・・いずれにせよ祝福の効果が切れる前に勝負を仕掛けるしか無い。

祝福に寄る圧倒的な活力の増幅と興奮を実感しながらも・・激しい頭痛がする・・吐き気も。

「フゥーッゥフーッゥこれが最終警告よ・・王家の財宝を寄越しなさい!!!」

「おやおや、気分が優れないようだな・・だがまあ、今やり合えば殺されそうだ。好きにすると良い。」

そう言うとアハリルはベッドの方向へ首を振り顎で指し示す。

「・・・・」私は右手のラグナブレードをホルダーに仕舞うと左手で構え警戒しながら移動しベッドの上の王家の財宝を手に取った。

「フフ・・そう怖い顔で睨むな。これで一件落着だろう?騎士団の同胞として丁重にもてなしたつもりだ、まだ不満があるかね??」

どの口で言うのかと怒りをにじませるが彼を利用したのも事実。

「手を貸してくれたお礼に私を殺そうとした事に関しては報告しない。二度とそのツラを見ないで済むと思ったら清々するわ。」

そう吐き捨てるとアハリルに相対しつつ出口へ向かう。彼に背を向けるのは考えるまでもなく自殺行為だ。

「言い忘れていたが・・ここに在る次元の門は注ぎ込む呪力次第では、リシャーヴ王国と直通だ。私の呪力で一方通行だが送ってやっても良い。」

「その手には乗らない。どうせ凍り付いた湖の上か火山の噴火口でしょ。悪いけど信用ゼロよ。」

反吐を飛ばすとダッシュで扉を通り抜けダンダンダンッゥ・・超人的な動きで左右に壁を蹴り上げ一挙に螺旋階段を駆け上がった。

そのまま厨房まで突き抜けると驚きの表情の店主やウェイターを無視してカフェ・ルーチェリアを走り抜けて大通りに出る。

夕焼けの空に照らされた大通りを全速力で突っ走った。道行く人々が凄まじい速さで駆ける私に奇異の目を向けて来るがそうだろう、私自身も天使の祝福の力がここまで身体能力を増強させてくれるとは知らなかった。

あっという間に郊外へ達しレンタルガルムの看板が見えた頃に祝福の力が切れた。激しい疲労感で荒い息をしつつ「ハァッゥハァッゥ・・ようやく手に入れた・・」

しっかりと握りしめた赤い宝石が輝く宝飾品を感慨深く見つめてホッゥと一安心する。

「これが有れば任務は達成したも同然・・後は帰途に就くだけよ。」

しばらくその場に座り込み息を整えてからレンタルガルム屋の扉を開いた。

チャリンチャリン・・「らっしゃい!ガルムをご要望で??」まだ若い細身の店主がカウンターに両手を突きながら溌溂とした声で迎える。

「ええ、州都レアウルスまでお願い。大至急で。夜8時までに着くかしら??」

「任せて下さい!特急便でお一人様なら14ディールですが支払いは??」

「前払いで。14ディールね・・」

銅貨を数えて渡すと店主はカンカンカンとハンマーで金属の板を叩く。

すぐに少し日焼けした精悍な顔付きの青年が姿を現した。

「フューロー、仕事だぞ。レアウルスまで特急便一名様だ。荷物は無し。」

「了解。お嬢さん、見かけない肌の色だね・・」

青年はジロジロと物珍しそうに私を見つめて口に出す。

自分の心に素直なのだろう。

「お客様に向かって失礼な事を言うな。」店主が咎めるが「ああ、別に良いの・・よく言われるわ。」気にしていないと伝えて穏便に済ました。

「さ、こちらへ付いて来ておくれ。」青年に先導されガルム小屋へ向かい・・立派な体躯をしたガルムの前で立ち止まる。

「中距離の早駆けならキングの出番だ、さあ乗った乗った。」

トンッゥ・・キングと呼ばれたガルムの背中の後ろにジャンプして飛び乗ると、

「お嬢さん、慣れてるねぇ。」

彼は笑顔で称賛しつつガルムの首に手を掛けてよじ登った。

「じゃ、よろしくね。」

「あい、2時間も掛からないよ。キングは大飯喰らいで頑丈でタフなんだ。」

手綱を持ちゆっくりと路地へ出ると青年は木の棒でガルムの腹を叩いた。

途端にキングが鼻息荒く駆け出す。ドカカッゥドカカカッゥ・・そのままガルムの背中で揺られ私は任務の達成感に浸りながらラミューダを去った。

これで第13騎士団は安泰だ。ナターシャや副王陛下も認めてくれるだろう。騎士の名誉に賭けて任務を全うする喜びはこの上ない事だ。

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