三十六章 魔将軍ジェシュリー
・・この物語は北方戦争における悪夢の7年間で魔将軍ジェシュリーが行った極悪非道な数々の戦争犯罪を赤裸々に綴った記録書である。ジェシュリーに仕えた妖精の証言により彼女が如何に残酷で非人道的な虐殺を繰り返し行ったのかその全容が明らかとなった。魔王ウァルツの失策は彼女の暴走を止められなかった点にある。人間の身でありながらルの者に忠誠を誓い弱冠19歳で将軍となりその美貌からは想像も出来ない残忍な気質は生来の悪魔の申し子であると言えよう。
絶滅戦争以後の現世紀200年と少しの間に人間は徐々に大陸北方から去って行った。オウガの絶滅という目的を果たした以上、寒冷な気候は彼等に向いていなかったのだ。その空白を埋めるかのようにルの勢力が中心となり国を興した。バルパーミラと呼ばれるその国は瞬く間に領土を拡大し・・40年で大陸北方の4割程度を支配下に置いたのを受け脅威と捉えた周辺国は同盟を組んで戦争を挑んだ。
所謂北方戦争の始まりである。
「フンフン♪」彼女は上機嫌でバスタブの中で泡塗れになり身体を洗っていた。
黒く長い髪にエメラルドグリーンの眼で非常に美しい顔立ちをしており・・あどけなく可愛らしい外見だ。彼女は日に2回は風呂に入るのが日課で綺麗好きだ。
「シィィーーハァァーー!!!ジェシュリー今日もご機嫌だね!!!」私は彼女の周囲を飛びながらおだてる・・彼女専属の妖精として魔王より遣わされて2年・・本来の任務は彼女の監視だが普段は太鼓持ちとして上手に補佐するのが役目である。
ここ、アストン砦は彼女の支配する牙城だ。周辺の鉱山や農地の領主として過酷な圧政を敷いている・・が、魔王ウァルツの寵愛を受ける彼女を叱責する者など存在しない。そう、ルの者ですら恐れる程度には。
ゴトゴトン・・ズサッゥ!!!
「ん・・?」
物音がするや否や「両親の仇!!この糞畜生がぁぁあああーーーーっぅ!!!」
そう叫びながら少年が飛び出して無防備な彼女へと刀剣を一直線に突き刺しに来た。が、肌に触れる事もなくピタリとその動きが止まる。
「どうした?動けぬか・・あと10フェムトで我が心臓を貫けるところなのに残念だな・・」
そう語る彼女はエメラルドグリーンの竜眼をチカチカと輝かせていた。
そう、将軍に抜擢されるだけはあって彼女はクアッドの竜眼使いなのだ。
「シィィーーッゥ!!!ジェシュリー危機一髪!!!」
「換気口から侵入して来るとは・・ネズミのような連中だ・・」
「うっぅ・・ぐっぅ・・」
彼女はザパッゥと立ち上がり惜しげもなく柔らかく美しい女体を晒すと少年の顔に手をやり「そうか・・私が両親を殺してしまったのだな、すまない。代わりと言っては何だが素晴らしいプレゼントをしてやろう。」パキパキと刀剣が急激に錆びて朽ち果て床に落ちる。
衣服を身に纏うと竜眼で少年を宙に浮かして部屋を出て廊下を進む。
異臭がする部屋の前まで辿り着くと「ブッチャー、新しい餌だ・・可愛がってやれ。」少年を放り投げた。
「ブギッゥ・・ブっふふふ・・」血塗れな巨漢のゴブリンが喜んで少年をオモチャのように持ち上げる。部屋には切断された遺体があちこちに飾ってあり人間の生皮が床に散在していた。
「やっぅやめろっぅやめてくれーーーっぅ!!!」ジェシュリーは廊下の壁に腕を組んでもたれ掛かり・・「この私が糞畜生とか言ったな・・口は禍の元だ・・私を褒めてみろ。気が変わるやも知れぬぞ??」
「じっぅ慈悲深い美しきジェシュリー様!!どうかお助けをっぅ何でもします!!何でもしますからっぅ!!!」
ボキンッゥ「ぎぇぇえぁああーーー!!!!」骨が折れる心地良い音にクククッゥと嘲笑すると「人間の、か弱く脆い身体と精神を圧搾するのはいつ試しても格別の快感だな・・見ろ豚のように鳴いている。」
「シィィーーハァァーーッゥ!!!ジェシュリーが慈悲深く美しいのは当然の話であって褒め言葉じゃないのだ!!!」
バキッゥ・・メキメキメキ・・グシャッゥ
「ぐぉぁああっぅ・・ひぃぃーーっぅうぎゃぁぁああっぅ・・たっぅ頼む一思いに殺してっぅあぎゃャァァアアア!!!!」それから20分程ひとしきり悲鳴を堪能した頃合いには少年は声を出さなくなっていた。
「若い命が奏でる断末魔は・・最高だ。欲を言えば食事を楽しみながら聴きたかったな・・」ペロリと舌なめずりをして彼女はその場を去った。
ジェシュリーは職務室で優雅な朝食を取りながら廷臣の報告を聞いていた。
「農地では深刻なジャガイモ疫病が発生しており食料供給量を満たしておりません。その影響で鉱山の産出量が前月比12%落ちております。また労働者の近隣国への脱走が相次ぎ労働力も不足しております。」
「んん・・このマルキャビーク産のヒレ肉ビーフステーキは最高の味わいだな・・料理長を褒めておくか。ジャガイモ疫病だと?食料の配給を抑えて調整しろ。餓死しない程度にな。鉱山の産出量については私が巡回をして士気を上げる。後は・・そうだな・・脱走した労働者の親族を見せしめの為に逮捕して皆殺しにしておけ。労働者など戦争でいくらでも奴隷を連れてきてやる。」
彼女はナプキンで口を拭くと「胡椒が足りていない・・・金貨の15%を胡椒との取引に充てろ。私の舌を飢えさせるつもりか。」
「シィィーーハァァーーッゥ!!!ジェシュリーの味覚を損なうなんて許されない暴挙なのだっぅ!!!!」
「やあやあ愛しき姫君・・何だかご機嫌斜めのようですね。」ノッポで痩せこけた金髪の青年が笑いながら職務室へと入って来た。彼はジェシュリーの副官だ。背が高く顔立ちも良い・・ただそれだけで選ばれた彼女の世話係。最も、闇への溺死の儀で半妖に落とし込まれた今となってはそれも過去の話だろう。
「当然だ。上質な胡椒が無ければステーキの旨味が引き立たぬ・・さあ食事も済んだし出掛けるか。」
立ち上がった彼女に「で、今日は農民と職工と鉱山労働者のどれですかい??」
青年が問いかける。
「鉱山だ。ラクワイア・・馬を準備させろ、出るぞ。」
ジェシュリーは副官のラクワイアと共に最重要地の金鉱山へと馬を走らせた。彼女が私腹を肥やしているのは誰もが知っている・・だがそれを告発する勇気がある者は既に死んでいるか国外に逃れているのでこの絶望に満ちた地は彼女の思うがままだ。
金鉱山へと着くと警備兵が恭しく
「こっ・・これはジェシュリー様、本日は何の御用件で??」尋ねて来る。
「責任者を呼べ。」「ハハッゥ!!!」
しばらくして人の姿に化けた下級悪魔が姿を現した。頭部には角が2本生えている。
「へへ・・ジェシュリー様・・わざわざこんな汚い鉱山にまでようこそ。」
「ようこそじゃない、金の産出量が減っているではないか。どうなってる!?」
「シィィーーハァァーーッゥ!!!ジェシュリー怒り心頭なのだっぅ!!!」
「そのう・・食料の配給が足らず・・申し訳ありません。」額に手をやり沈痛な面持ちで返答した彼は下手な言い訳は通用しないのだと悟っている様子だ。
「申し訳ないと言ったな??フフ・・悪魔がどんな悲鳴を上げるのか今から試してみようか。」
「ひっぅ!!いえそんな・・卑しくもルの末席の身でジェシュリー様に仕えるのは無上の喜びであって・・」怯えへりくだった彼は必至に取り繕う。
「・・だってさ、姫君ルの者を虐めるのは魔王の心証を害するかもだぜ。」
ラクワイアの宥めの言葉に彼女は少し思案するような表情を見せ
「・・そうだな、よし労働者を全員集めろ。私が直々に士気を上げる。」
ホッとした下級悪魔は冷や汗を拭いながら振り返ると
「おい!!!全員集合だっぅ!!!さっさと集まれボンクラどもっぅ!!!!」
鬱憤を晴らすかのように怒鳴り散らした。
数分後・・100人余りの労働者が遠巻きに無表情で我々を見つめていた。鉱山では私語は禁止されてあるので囁き声すら無い。
「ノルマ未達成の・・いや最下位の者をこちらへ。」
「はい・・えぇと・・マカフィア・ノートン!!!前へ出ろ!!!」
書類を目に通して悪魔が叫ぶ。
小柄なおどおどした男性が怯えながら前へ進んで来た。彼女と目を合わそうともしない。
「貴様はどうして働きが悪いのか。怠け者には理由があるのか。」ジェシュリーの質問に男性は恐怖で震えながら「どうかお許しを・・・一日にジャガイモ2個では力が出ません・・とても過酷に過ぎます・・」
「そうか・・貴様は役立たずな屑の上に無駄飯喰らいという事だな??」
「いえ、そんな・・」
「両腕を出せ。持ちきれぬ程のジャガイモをすぐにでも食べさせてやる・・」
「シィィーーハァァーーッゥジェシュリーは優しいのだっぅ!!!!」
男が手を伸ばしたその瞬間、彼女は腰にかけた剣を瞬く間もなく一閃させた。
ザンッゥ!!!無惨にも男の両腕が切り飛ばされる。
「ぎゃぁぁあああっぅ俺の手がっぅ手がぁぁあああ~~~~っぅ!!!!」
身をよじりながら泣き叫ぶ男の悲鳴が鉱山に響き渡る。
ジェシュリーはジャガイモの木箱を蹴散らすと「さあジャガイモだぞっぅ!!!!ほうらこんなにもっぅ!!!どうした喰わないのか??欲しかったんだろう??」
「あっはっは・・くっく・・あぁぁあーーーっはっはっはぁ!!!!」鉱山労働者達は口を閉じ地獄のような風景を眺め・・ただ彼女の笑い声だけが場を支配した。
「いいか、これがノルマを果たせなかった者の末路だっぅ!!!!毎月1人同じ目に遭わせてやる・・死にたくなければ必死に働け!!!!」
「どうら俺が喰わせてやる・・」
ラクワイアがジャガイモを拾って男の口に運ぶも
「手がっぅ手がぁぁあああ~~~!!!!」
「・・・喰う気なさそうだな。」
金鉱山を後にすると
「次は鉄鉱山に行くぞ。ラクワイア、お前が処罰してみせろ。」
馬上でジェシュリーは命令した。
「へっへ・・姫君良いんですかい??脱いでも・・腹ペコなんだ、1人や2人では済まないかも知れやせんぜ。」
「構わん。むしろ効果的だ。生きたまま腸を食いちぎってやれ。」
「シィィーーハァァーーッゥ!!!ジェシュリー緊急招集なのだっぅ!!!」
「緊急招集??何かあったのか・・ラクワイア、予定変更だ。砦へ戻っておけ。」
接触呪文で数段階強化した馬を全速力で走らせ2時間後・・銀色の光沢が眩い魔王ウァルスが居城シャルムージアに到着した彼女は瀕死の馬を乗り捨てると浮遊の呪術を使い城の最上層・・天上評議会へと一足飛びに駆け上がりストッと着地した。
「遅いぞジェシュリー・・王を待たすとは何事だ。」広大な評議場で5つの椅子が等間隔で並べられており中央には特段に大きな椅子にウァルス王が座っている。
「私の領地に次元の門は無い・・これでも急いだ方だ。」ジェシュリーは左端の椅子に座る半妖のコルケツァル・ゲシューネに反論しながら右端の椅子に向かった。
「魔将軍が全員揃った事で私から本招集の理由と今後について説明させて頂きます。」玉座の王の隣に控える執事パペンダークが笛を吹き発声呪文で大きな映像を宙に投影した。そこには数多くの兵士が進軍する姿が確認出来る。
「我等がバルパーミラは本日宣戦布告を受け・・ルドミトア連合王国、ガークシュア人民共和国、カルサリアランド都市国家連邦、そしてアナンケシュタイン帝国と交戦状態に陥りました。」
「なんだと!?人間風情が侵略か!!!」
「姑息な人間どもめ・・数を頼りに攻め込んでくるとはな・・」
「知らぬ間に同盟を組んだか。計画的だな。」銘々が忌憚の声を上げる。総じて、人間を格下と見做す我々の目にはそれは愚かしい蛮勇として映った。
更にパペンダークが笛を吹いて映像が切り替わる。
「地図上では我等がバルパーミラは、北を除き東西と南を各国に囲まれており・・非常に危うい状況にあると分析されます。そこでユーヴァラス将軍はルドミトア連合王国へ、コルケツァル将軍はガークシュア人民共和国へ、ザルドリアック将軍はカルサリアランド都市国家連邦へ、ジェシュリー将軍はアナンケシュタイン帝国へ軍を率いて対処・あるいは逆侵攻しこの逆境をチャンスに変えてやろうというのが王の意向でございます。」
「余の領地は吸血鬼で満たされておるが故に異存は無い・・ザルドリアックの土地も魔族が占めているので問題はなかろう・・だが、コルケツァルとジェシュリーは人間の兵士に頼らざるを得ん。4方面作戦は厳しいのではなかろうか・・」大柄な体格に荒れ狂うような銀髪の・・吸血鬼の始祖ユーヴァラスが疑問を呈する。彼は魔将軍の中でも最も強大な武勇を誇り闇の勢力としてバルパーミラに参画したが、本来は魔王ウァルツと肩を並べても遜色の無い強者だ。
「ハッゥ!!この私を過小評価するつもりか・・?吸血鬼如きに心配される言われなど無い。口を慎んで貰おうか。」ジェシュリーは心外だなとばかりに対抗意識を剥き出しにした。この中の誰よりも戦果を上げる自信はある・・そう言わんばかりに。
「そうとも。ワシとて人間の扱い方ならよぉく知っておる・・」身体半分が赤色に、もう半分が青色に輝く半妖のコルケツァルも自負心を露わにする。
「・・で、我は何をすれば??」竜と悪魔の合いの子である魔竜ラディアンドロスが尋ねた。
「ラディアンドロス殿につきましては、戦局の推移を注意深く見守り劣勢な戦線に加わって頂くのがよろしいかと・・」パペンダークは卒なく答える。
「決まったな・・すぐにでも戦の準備をしよう。我等がルの者に逆らう愚かな人間どもに鉄槌を下してやろうぞ!!」燃えるような赤いオーラに身を包む真性魔族のザルドリアックが豪語した。
「最後に我等が王から一言・・訓示を賜ります。」
「・・よいか皆の者・・」魔王ウァルスが静かに口を開く。
「我等・・魔の眷属や闇の眷属が人間どもの繁栄の影で息を潜めて耐え忍ぶ時代は終わった・・我々こそが劣等なる人間を支配し大陸の覇者となるのだ。これは宿命である・・かつて神をも滅ぼしたルの軍勢の復活は近い。600万の我らが同胞をファルギルダイテから呼び戻す為にも貴様等はその先駆けとなるのだ。奮起せよ。」重厚で煌めくフルプレートアーマーを微動だにさせずウァルスは述べる。
現世に生き残った序列8位の高位悪魔の言葉には重みがあった。
「それでは皆様の活躍をご期待しておりますので・・我等がルの者の国家、バルパーミラが今後飛躍的な成長を遂げるのか・・それとも滅亡してしまうのか・・この難局を乗り切れるかは各々の肩に掛かっております事を重々ご理解の程、よろしくお願い申し上げます。」パペンダークの締め括りが解散の合図となった。
「ジェシュリー・・まずは貴公に助力しようか。」
魔竜ラディアンドロスが声を掛けて来る。
「要らん。貴様まで私を愚弄する気か?」
「シィィーーハァァーーッゥ!!!ジェシュリーの名誉を貶めるのはよくないのだ!!!」
ラディアンドロスはしばし沈黙し・・
「ジェシュリー・アトリアナ・ユーハー・・貴公は人間の身だ。」
「それが??」
「心配しているのだ。ルの者は例え消滅してもファルギルダイテに追放されるだけだが・・人間は死んだら終わりだ。」
「・・案ずるな。身体は人間とて、心は悪魔よりも強靭なつもりだ。そうだな・・助けと言うならアストン砦まで送ってくれ。馬が死んでしまった・・」
「承知した。」グググ・・ボォウワァァアアーーッゥ!!!みるみるラディアンドロスの身体は膨張変質して行き・・天空評議会に黒く巨大なドラゴンが出現した。ジェシュリーを背中に乗せるとドラゴンは一気に空へと羽ばたき舞い上がり飛び去る。妖精の私は必死に追いかけたがみるみると空の彼方へと消え去って行った。
アストン砦まで彼女を追い掛けねば。
1時間後・・追い付いた頃には既にジェシュリーは砦に到着しており職務室で檄を飛ばしていた。
「大至急兵を集めろ!!!アナンケシュタイン帝国と戦争だ。」
「恐れながら・・兵士は飢えに苦しみ万全の状態とは言えず・・数も5000名程居るかどうかでして・・」廷臣の報告に「質はどうでも良い!!衛兵や警備兵・・鉱山の監視兵も全てかき集めろ。根こそぎ動員だ。場合によっては、農夫も幾らか徴兵させろ。私の将軍としての名誉を地に墜とす事など断じて許さん!!!!他の将軍に後れを取るなどと良い笑い物だ。」彼女はさながら血に飢えた猟犬のような顔付きをしている。
「シィィーーハァァーーッゥ!!!ジェシュリーは勝利の栄光を求めているのだ!!!」
「ジェシュリー様、兵糧が最大でも3日分しか用意出来ませぬが・・・」
「兵糧など現地で略奪するから構わん!!3日分あれば十分だ。言い訳は聞かぬ、とにかく可能な限り兵を集めてアナンケシュタイン帝国を打ち破る。絶対にだ!!!」そう息巻く彼女はまるで勝利が当然と考えてる風であった。
「姫君、もう勝つ気ですねぇ・・アナンケシュタインは3万規模の常備軍を保有しているって聞きますが。」ラクワイアの呆れたような口調に「3万だろうが10万だろうがそれがどうした?私の力を知らぬ貴様ではあるまい。丁度労働者が減って困っていたところだ・・奴隷を集める良い機会でもある。」
「はいよ好都合だってね・・俺も頑張りますか・・」ラクワイアは金髪を掻きむしりながら適当な戦意を見せる。
「フフ・・しかし私の心配をするとは可愛い奴め。」
「何ですかい??」
「いや独り言だ。」
翌日の朝・・アストン砦前に7000名の兵士が整列・・というよりは乱雑に並んでいた。装備も統一されておらず武器を持っていない者すら居る。兵科区分なんて有って無いようなモノだ。栄養失調でその場に座り込んでいる者もちらほら見受けられ・・とてもではないがお粗末に過ぎる軍隊だ。
「兵士というよりは物乞いだなこりゃ・・」ラクワイアが目も当てられないと嘆く様子を余所にジェシュリーは発声呪文で演説をブチかました。
「皆の者!!!良いか!?まずは我が領内に侵入して来た敵軍を迎え撃つ・・その後はアナンケシュタイン帝国領へと侵攻し・・食料・物資・貴重品を思うがままに略奪するが良い!!!女への暴行も許可する!!!全て貴様等のモノだ!!!存分に欲望を満たせ!!!」途端にウォォオオオーーー!!!!と大歓声が上がる。
絶望の淵から蘇ったかのような精悍な顔色の兵士達に「物乞いを飢えた野犬に変えやがった・・流石だぜ姫君は。」彼は目を剥いて呟いた。
「シィィーーハァァーーッゥ!!!ジェシュリーは天才なのだ!!!」




