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三十四章 欺瞞の騎士アハリル

私達が飛空艇に戻るとガラガラと搬入口が開きゼアトルべ・ザックスが迎えてくれた。「フン・・期日の約束は守ったか。まぁ上出来だ。」老ドワーフは不機嫌そうに私達の顔を一瞥すると「レアウルスに帰還するぞ。」後ろへ振り向きざまに吐き捨てる。

「ゼアトルべ艇長・・一つお願いがあります。帰還の際に都市ラミューダへ寄って下さい。」すかさず私は申し出た。

「なんじゃ??最近の乗客は注文を付けるのか。国賓だと?何様のつもりか知らんがこの飛空艇の運航決定権はワシにしかないぞ。」

「非礼な要求だとは存じております・・ですが、我々が国賓として招かれた意味を成す為にも何卒お願い申し上げます。ランツィ公には貴方が非常に助けになったと伝えておきますので。」どうにかしてこの頑迷な老ドワーフを説得しなければ・・計画が台無しだ。

「何事だろうが夜の8時までにレアウルスに帰還する。それに間に合うのか。」

彼は見極めるかのように問いかけて来た。

「1時間・・いえ2時間頂ければそれで用事は済みますので・・」

「・・よかろう。今回に限り特別だ、二度とは無いと思え。」私はホッと胸を撫でおろすと我々はすぐに客室へと移り・・飛空艇は出航した。

「で、ラミューダって都市に何の用なんだよ??」ウィルが煙草を吸いながらそれとなしに訊いて来る。

「その地に第16騎士団の騎士アハリルが潜伏しているわ・・彼に協力を求める。騎士団の互助努力義務を有効活用してやるの。」私はミューンズドヴルメにおける唯一の王国騎士団の名を口にした。

「欺瞞の騎士か・・あやつは悪評名高い人物じゃぞ。騎士としてのその実力が故に一目置かれてはいるが・・赤髭のヴァロアスが思うように御せぬ曲者じゃ。ランツィも毛嫌いしておった。」ナッセルが煙草を灰皿でもみ消しながらある種の警告を発する。騎士団の内情に詳しい爺さんが言うのなら本当なのだろう。

「ミューンズドヴルメで困ったら頼ってくれって彼は言ってた・・利用価値はあるかな・・ってね。お互いに。諜報活動や対外工作、汚れ仕事もやる連中だわ。何らかの助力になってくれるかも知れない。」

あくまでも希望的観測なのは承知の上。他に選択肢など無い。

「剣の腕前と呪術に関しては一流と聞く・・が、その性質や言動に難があるとも。エリューヴィン、呑まれるなよ。お前さんより駆け引きは上手のハズだ。」シンの私の身を案じたアドバイスに「分かってる。最大限の注意を払って交渉するつもりよ。ところでおチビちゃんは??」

「ずっと甲板上で下界の風景を眺めてるよ。ありゃよっぽどだな・・」

ウィルが両手を後頭部で組んでやれやれと呆れた口調だ。


1時間後・・・飛空艇はラミューダに到着した。「おチビちゃんだけ付いて来て。後は全員待機。」そう言うと客室を出て搬入口へ向かう。

ゼアトルべが「良いか、2時間だぞ。1分でも過ぎたら置き去りにするからな。」と念を押してきた。

「分かりました。さあおチビちゃん、行きましょ・・・カフェ・ルーチェリアまで案内して貰えるかしら??」

「ルーチェリア??良いけど・・アソコには何も無いよ。」

ズクラッドが知らないのも無理はない。帝国に秘匿されたリシャーヴ王国騎士団のアジトだなんて、とてもではないが信じ難い話だ。ランツィだって把握してないに違いない。アハリルとランツィは不仲だった・・同時にランツィはアハリルの持つ強大な力と思想を危惧していた。アハリルに頼るのは危うさを孕んだリスクのある賭けかも知れない・・だが何よりも任務を成功させるのが最優先。

「サンスフィアに比べると落ち着いた中規模都市ね・・」

「そりゃそうだよ。もとよりミューンズドヴルメは貧しい土地柄なんだ、帝国の資本が真っ先に注ぎ込まれたサンスフィアは特別だね。」そう言いながらズクラッドは100%ビーフジャーキーの袋を片手にモグモグさせている。ウィルから貰ったのだろう。仲が良いのは微笑ましい限りだ。

「着いたよ、ここがルーチェリアさ。」

広い敷地に大きな建物、ガラス張りの解放的な空間・・カフェにしては広い。

「さぁて行くか。おチビちゃん、先に飛空艇へ戻っておいて。私は1時間後くらいになると思うから・・」

「うん、じゃ後でね!」

ズクラッドと別れるとガランとして客が少ないカフェ・ルーチェリアの中に入り、適当な席に座った。すぐにウェイターが注文を受け付けに来る。

「ご注文は?」「20番対応をよろしく。」

「お客さん、何を言ってるのか分かりませんが・・」

「王都第13騎士団のユンフィニス・リア・エリューヴィンよ。アハリルは居るんでしょ??呼んできなさい。」

「!!・・少々お待ちを・・・」ウェイターはすぐに奥へ引っ込むと入れ替わりに店主らしき人物がやって来た。

「その肌・・王都の褐色の騎士様で間違いありませんね。噂はかねがね伺っております、どうぞこちらへ・・」席を立つとカウンターを通り過ぎ厨房の奥の突き当たりの壁まで案内され・・店主が接触呪文で壁の横をタッチするとゴゴゴゴ・・壁が半回転して螺旋階段へと続く道が現れる。その先は真っ暗だ。

「呪術が使えないのは承知しております・・これをどうぞ。」用意されたランタンを受け取ると私は螺旋階段を降りて行った。数十歩歩いてすぐに私はこの螺旋階段が相当地下深くにまで達しており容易には辿り着けない事に気が付いた。

「帝国に感付かれた際の備えかしら。こんな堅牢な造り・・第16騎士団のアジトはミューンズドヴルメ紛争でその多くが潰されたと聞くけど・・ここは健在のようね。」

ビクッゥ!!!階段の暗闇の奥底から槍を構えた人らしき者がランタンの明かりに照らされて・・驚きと若干の恐怖を覚える。だがよくよく見ると・・

「・・なぁんだ石像じゃない・・驚かさないでよね。こんにちわご機嫌如何??」安堵の息を付いて石像の頭を撫でた次の瞬間、ガシャッゥ・・ブゥゥンッゥ!!!槍が宙を薙いで私は間一髪しゃがんで身を避けた。

「やっぱりか・・そう来ると・・思ってたわ!!!!」

ランタンを置くと飛び退いて瞬時にラグナブレードを抜き階段を力強く蹴ると疾風怒濤の勢いで一直線にバガァァンン!!!!石像の上半身を砕き抜く。グググ・・石像の下半身が動きを止めないのを渾身の力で蹴り上げるとバキャッゥ・・ドンッゥ、ガシャン!!!粉々になりながら螺旋階段を転がり落ちて行った。

「一丁上がりね。こんなガラクタで私の足を止めようなどと100年早い!!!」歯牙にもかけぬように言い放つとランタンを片手に更に階段を降りて行く・・と、ガシャ・・ガシャ・・下の方から足音が聴こえて来る。

「追加サービスなんて上等じゃない・・いぃぃい゛いい!?!?」6体もの石像が隊列を組んで上がって来ていた。いや奥にはもっと居る。

「ちょっぅちょっと・・勘弁してよね!!!」私は跳び上がると石像の頭を次々に足蹴にしてジャンプを繰り返し・・「さよなら!!!」10体近くの石像を後にすると一気に駆け出した。


とうとう最深部にまで辿り着くと大きな扉が私の来訪を待ち受けていた。ガチャッゥガチャッゥ・・施錠されてある。バキャァァーーンッゥ!!!扉を蹴破って部屋に侵入すると開口一番、

「ハァハァ・・アハリル何考えてんのよ!!!」私は青筋を立てて怒鳴った。並の人間なら途中で死んでいたかも知れない。

「これはこれは・・招かれざる客が来たようだ。」

そこには全裸の男性が2人抱き合っていた。

「だれ!?怖いよダスティーヌ!!!」

甘く柔らかい顔をした男性が恐怖に怯える。

「何も怖がる必要性は無いさ・・・愛しきラヴィアンヌ、君との素晴らしい時間もそろそろ終わりにしよう。」彼等は身体を離すと服を着始めた。

「貴方・・男色家だったのね・・」

「無論必要とあらば女とも寝るが・・男の方が趣味なんでね。紳士の嗜みだよ。」そう語るアハリルは彫像のように屈強な肉体美と、誰かの借り物ではあろう整ったハンサムな顔立ちをしている。

「じゃあ僕は帰るよ・・またねダスティーヌ。」

「ああ、この門をくぐったら家の前だ。おやすみ我が愛しきラヴィアンヌ・・君との忘れられぬ束の間の情熱は良い記憶になる・・」彼は呪術を込めて部屋の片隅に光り輝く門を起動させた。

「なっぅ・・次元の門!?」私は思いがけない光景に驚愕の声を上げる。ラヴィアンヌとやらはそのまま次元の門を通り抜け消え去った。

「・・ズクラニア協定違反だわ。」

「そう、協定違反だな・・だがバレなかったら違反じゃない・・そうだろう??」彼は人差し指を上げてニヤリと笑いソファーに腰掛ける。

「・・で、何を頼みに来たんだ?生意気な褐色の小娘よ。第16騎士団を代表して協力しよう・・殺人から証拠隠滅まで何でもな。」

「そうね、実は・・・私が追っている王家の財宝が民間企業に流出してしまい・・2日後の土曜にオークションにかけられるの。主催はクリスヴァリアーズで場所はレアウルス支店・・どうにかして取り戻したいわ。」

アハリルは座ったままアゴに手を当てると考え込むような素振りを見せ・・

「なるほど??それは・・チト厄介な仕事だな。ところでさっきラヴィアンヌ・・彼が門を抜けた先は火山の噴火口か凍った湖の真ん中か・・どちらだと思う??」

「な!?貴方もしかして・・彼を殺したのね。」

アハリルはクックック・・と笑い声を上げながら肯定して「人生は一期一会だ・・恋愛も然り。二度と無いからこその格別な味わいというモノがある。それに、この場所を知った人間を生かしてはおけない・・あぁ君は例外だな。」

そう言うと彼は立ち上がり「仕事の時間だ、ヴァラー。」発声呪文を唱えると壁がゆっくり反転して・・そこには30は下らない精巧なデスマスクが不気味に飾られてあった。

「ヴァラー・・って??」

「気にするな、私にしか見えない精霊だ。さてどの顔で行くか悩ましいが・・」

トントンと足踏みをして優雅にデスマスクを眺める彼に「これって・・全員殺したのかしら??」息を飲んで訊いてみる。

「・・だとしたら?ランツィにでも報告してみるかね??任務の都合上必要な措置をしたまでだ。騎士団と王家の為に。」

「最低のクソ野郎ね・・」私は心底から胸糞悪い嫌悪感を覚えた。

「ハッハァー!言うじゃないか・・褒め言葉だと受け取っておこう。で、私は今から下準備に掛かるが・・君は2日後にオークションへ参加したまえ。そして王家の財宝に入札を繰り返して可能な限り時間稼ぎをする・・重要な仕事だが任せられるかな??」

「分かったわ。それで財宝が戻るなら簡単な仕事ね。で・・貴方が犯した殺人なんだけど今回だけは見逃してあげる。次見たら騎士団会議で副王陛下に報告するからそのつもりで。」

アハリルは目を細めて何処となく不気味な笑みを浮かべながら「ほほう・・人に物事を頼むにしては生意気にも上から目線で実に結構、君は良い騎士になるだろう。ただ副王陛下に報告したところで・・私が何の為に騎士団長の席を授からないのか知る由もあるまいに。」

彼はパチンと指を鳴らして次元の門を起動すると「さあ帰りたまえ。仕事を寄越した返礼として、今回だけは・・私の情事の邪魔をしたのは見逃してやろう。」

そう言う彼に私は万全の信頼を置くことなど出来なかった。

「いいえ、結構・・来た道を帰るわ。貴方の評判は聞き及んでるから。」

「ハッゥ、好きにしたまえ。」

「道中のガラクタは全部壊しても不可抗力よね。」返事を待たずランタンを片手に部屋を出て螺旋階段を上り出す。「豪華なドレスを仕立てて貰うんだぞ!!褐色の小娘よ・・ハァァーーーハッハッハ!!!!」

アハリルの高笑いが私を見送った。


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