三十章 宿屋モーニングジョー
その時若い女性が駆け寄って来て
「ハァハァ・・あの・・私知ってます。」と声をかけて来た。
唐突な話に私はキョトンとして「・・貴方は??」
「プルスゴファーのメイドです・・実は・・宿屋モーニングジョーに・・この男が出入りしているのを見ました。」そうポスターを指差しながら言う。
「それって・・いつの話かしら!?」
「2日前です。ですが・・私が喋った事は内密にお願いします。モーニングジョーと揉めたら・・あの手この手で潰されるんです。この界隈では有名な恐ろしく凶暴かつ無法っぷりな姉弟が雇われていて・・軍の上層部とコネがあり衛兵も放置している酷い連中なんです・・仮に拷問にかけられても私の事は言わないで・・幸運を祈ってます・・では・・」
彼女はやや戸惑いと後悔の仕草を見せながら立ち去った。
軍上層部とコネがあるゴロツキか・・何の、こちらには上級部長のヘイムスティルの許可があるしランツィお墨付きの紋章もある。何を怖がる必要があろうか。少々の暴力沙汰になろうが躊躇する事などない。それよりも問題はようやく得た手掛かりを活かしてチャンスに繋げられるかどうか・・
「それにしても遅いわねあの2人・・いつまで時間掛けてるのよ・・」
そのまま30分くらいベンチで横になってると
「おい寝てる場合じゃねえぞっぅ!!!朗報だ!!とある宿屋に出入りしていると目撃情報があったぜ!!!」
ウィルが私の顔を覗き込みながら収穫有りと興奮気味に叫んで来た。
「モーニングジョー・・ね??」
「おう当たりだ、おめえも掴んだんだな・・」
「間違いなさそうね。これで疑いが確信に変わったわ・・おチビちゃんモーニングジョーって何処にあるか分かるかしら??」
「うん、そこなら知ってる・・案内役ならお安い御用だよ。」
私達は別の街路にあるという宿屋モーニングジョーへと出向いた。結果として占いは外れていたが幸運の女神は微笑んでくれたので良しとしておこう。
「デケェ宿屋だな・・3階建てか。」
「隠れるのに最適な場所ね。」
果たして匿われているのかアジトなのか・・偵察がてらに店構えを眺める。
「オイラは泊まった事は無いけど、ここの宿屋はガラが悪くて有名なんだ。料金はボッタクリだしオマケに怖い用心棒が居る。」
「それって・・私よりも??」
「お姉さんは怖いを通り越して悪魔だよ。」
「あ~ら生意気な口を利くわね、おチビちゃん。」
コンコンと脳天をノックしてみる。
「はは・・怒らないで、オイラ弱いんだから・・」
「さあ行くわよ。良い?まずは様子見だから喧嘩腰にならないように。」
「ハッゥ、それをおめえが言うかよ。すぐ喧嘩腰になる癖して。」ウィルがせせら笑うのを「黙りなさい。」素っ気なく一蹴すると私達は店内へと踏み込んだ。
「らっしゃい!お泊りか??」
「いえ・・この人物を探してるんだけど心当たりはあるかしら。」
ぺらっぅとポスターを見せるなり「知らないな。」
店主は不愛想に返事をすると背を向けた。
「ここに出入りしてるって情報があったんだけど・・」
「知らん。」
「・・本当に??もし知ってたら20ディール払うわ。悪くない取引だと・・」
「しつこいなアンタ・・おい、ボンペニ!アレファレニカ!!厄介なお客さんだ。」
すると奥から身長2トーリアはある巨漢の大男がのそりと現れ「ぶひっぅしししっぅ・・でめえさっさと去ね。ざもなくばオデ暴れちゃうぞ・・」と私達を見下ろして手をズパァァンッゥと叩き合わせる。力自慢の独活の大木か・・そう思ってるとその後ろから「出て行かないなら痛い目を見るよアンタ等。」鞭を片手に柄をトントンと睨みを効かせたスレンダーな女が脅迫紛いのセリフを吐きながら現れた。
なるほど、こういう事か。あのメイドはよっぽど仕返しが怖いのだろう・・確かに下手な冒険者よりも手強そうだ。
「で、どうする我らが騎士様よ??」
「そうね・・揉め事は望むところじゃないわ。御免なさい、どうも私の勘違いだったみたい。じゃあ・・」私達はサッサと玄関からモーニングジョーを立ち去った。
「どうしたんだよ、おめえなら楽勝だろあんなチンピラども・・」
ウィルがもどかしそうに訊いて来る。
「もし居なかったら??衛兵に捕まるのは私達よ。」
「そりゃ・・そうだろうけど千載一遇のチャンスだったかも知れないだろ。」
「パトリアの宝冠だね。」唐突にズクラッドが呟く。
「なんだそりゃ??」
「例え話だよ。とある国の王が大事にしていたパトリアという宝冠があってね・・ある日その宝冠の中には全知全能の天使が閉じ込められていて砕いた者に大いなる力が宿ると噂になった。そこで騎士アルフレッドはその力を求めて王が不在の時に宝冠を手に取った。だけど宝冠を砕いて中に何も居なかったら死罪になるのは確定している。騎士アルフレッドはそのリスクに耐えられず結局王冠を砕けなかった。王を超えられる唯一のチャンスをフイにしてしまったんだ。」
「へえ、面白い話ね・・」
「で、結局中に天使は居たのか??」
「王はもちろん砕かないさ。天使の力より宝冠の方が大切だったんだから。つまりさっきの宿屋の連中にとっては・・知らないと答える方が価値が高かった・・ってこと。」
私は考えを巡らし「・・ヨハン殺害の容疑者は大量のディールを持ち歩いているのは分かってる。口止め料としてかなりの金額を受け取っているのかも・・懸賞金の5ラディールよりも随分と多目にね。」
「それなら20ディールぽっちで買収出来ないのも合点がいくな・・こっから逆転の作戦でもあるのか??」
「向かいに喫茶店があるわね。おあつらえ向きにも、屋外テラス席が空いてる・・そこで見張りましょ。」
「あぁ、うってつけだな。のんびり煙草でも吸いながら様子を窺うか。」
私達は喫茶店菜の花に入ると
「ハイ!3人なんだけどテラス席でも良いかしら??」と問い合わせる。
「やあいらっしゃい、お好きな席でようござんす。ご注文は??」くたびれた感じの中年マスターが迎えてくれた。
「珈琲を一つ。」「俺は紅茶を。」「オイラはフレッシュジュースで。」
注文を終えるとテラス席に陣取って監視を始めた。早速ウィルは火打石を取り出すとガカッゥと煙草に火をつける。
「その帝国の一等級煙草は美味しいのかしら??」
「なんだよおめえも欲しいのか??」
「いや別に・・ただ味の違いがあるのか知りたいだけよ。」
彼は大きく煙を吸い込むと「香りが全然違うんだよな~、刺激的ながらもほんのりと甘く焦がしたような良い味だ・・・帝国に来た甲斐があったぜ。」青白い紫煙を一筋の糸のように揺れ流して至福の一時に浸りながら語る彼は実に幸せそうだ。
「そう、それは良かったわね。私は任務が終わったらリトベスタ産の高級豆を買うわ・・タップリと贅沢に味わうの。任務成功してこその味わいをね。」
その時ドリンクが到着した。
「シンと爺さんは上手くやってるかなぁ・・下水道だなんて汚物を被ってなけりゃ良いが。」紅茶を啜りながらウィルが心配そうに語る。
「大丈夫だよ・・帝国最新設備の下水道だから通路は雨でも降らない限り安全さ。まぁ・・今頃ドブネズミと遊んでるかもだけど。」ズクラッドはそう言いつつ軽くジュースを流し込み「ただ、臭いは3日は取れないと保証するよ。目に染み込む汗よりもドギツイ奴がさ。」とまるで見て来たかのように新次元の体感を約束した。それまでにささやかな珈琲の香りを堪能しなければ。下水の臭いのする珈琲なんて冗談じゃあない。
「ん・・この強烈な苦味・・アマルテアブレイクね。」私は一口飲んで断定する。
「月が何だって??相変わらずのコーヒーマニアだなおめえは。」
「元々はヴォラキニアって名前の珈琲豆だったんだけど・・現世紀1800年頃の著名な画家センドリュヴィンが眠れない夜中にアマルテアを眺めながら飲んだら傑作として知られる【天使の輪の上で奏でられる聖歌】を一気に完成させた奇跡からそう名付けられたの。」
「へー・・」
興味無さそうにウィルは煙草を吹かしてモーニングジョーを眺め続けている。
「センドリュヴィンってさ連邦にも帝国にもパトロンが居た稀有な画家だよね・・オイラでも知ってるよ。」
「そうそう、おチビちゃん話が合うわね・・何処かの無教養な馬鹿とは大違い!」
「はいどーせ俺は教養を嗜む趣味なんてねえよ。そんなモンが生きる上で何の役に立つってんだ?騎士団の仕事が捗るか?副王陛下に胡麻をするにゃ良いかもな。」ハブてたウィルは当てつけのように嫌味を言いながら灰皿に煙草を押し付けた。
「しかし何の動きもねえな・・」
「そうね・・人の出入りは少ないし、ヨハンの紛い者も姿を見せない。部屋に引き籠ってるのかも。」
そのまま夕暮れが近づいて来た頃にシンとナッセルが姿を現した。
「ここだったか探したぞ。」
「うむ、こんなトコで何を遊んどるんじゃ??進展はあったのかの。」
呪術か巻物で私達の居場所を突き止めたのだろう。
「お゛ぇぇ・・聞いてた話よりとんでもねえ悪臭じゃねえか・・」下水道の調査を任せておいた私がなんとも言い難い事をウィルがズバリ率直に遠慮なく言ってのける。
「あぁ、ウィル・・行かなくて正解だ。鼻がもげるかと思ったぞ。」
「丁度今、私もそう思ってるトコよ。早急にでも何処かに風呂と洗濯付きの宿屋が・・あっぅ!!!」私はモーニングジョーの看板を目にしつつ閃いた。そうだ、この手があったか。
「訊くまでも無いけど収穫は無かったんでしょ??」シンに確認を取ると「んん、下水道は浮浪者のコミュニティとネズミにゴキブリの巣窟だった。その口ぶりからすると突き止めたようだな。ある程度の目星は付いてる・・そうだな??」
流石に察しが早い。
「えぇ、とりあえず今から全員で目の前の宿屋に泊まるわ。話はそれからよ。さあ行きましょ・・」
「イマイチ話が読めんのじゃが・・まさかこの宿屋に容疑者が居るのかのう??」ナッセルが憶測混じりに呟くのを「そのまさかよ。」ウィンクして首をクイッゥとモーニングジョーへ向けた。
「ああ・・俺等ずっと見張ってたんだ・・が、尻尾を出しやがらねえ。外から調べても分かんねえなら中から調べるっきゃねえか。」ウィルも鼻をつまみながら賛成する。
「いよいよかぁ・・お姉さん成功報酬に上乗せ忘れてないよね??」
「もちろんよ。おチビちゃん大活躍してくれたからね!」私達はモーニングジョーへ突撃して行った。
「また来たのかアンタ・・ぶぼっぅヴぉぇぇっぅ・・何だこの臭いは・・とにかく知らんモンは知らん。おいボンペニ!!」店主の荒い語気にすかさず異を唱える。
「違うわ・・泊まりに来たの、5人だけど大部屋あるかしら??」
店主はへ?とした表情をして「そりゃ構わんが・・他の客に迷惑はかけるなよ。まずは服を脱いで風呂に入ってくれ。服はすぐに洗濯させる。大部屋の宿泊料は一泊50ディールだ。」
「えぇ!?そんなに!?ロイヤルスイート級じゃない。」
ボッタクリとは聞いていたが想像以上だ。
「迷惑料金上乗せだよ。文句があるならお引き取り願おうか。」店主の後ろで先程の大男とスレンダーな女がこちらを睨み付けている・・
「分かったわ。50ディールね!良い夢が見れそうな値段よね・・」
私は羽ペンで記帳をしている途中で手が止まった。左上の欄にはヨハン・ミシェルという名前がハッキリと書かれてある。
Aー3号室・・思わず笑みを浮かべて心の中でガッツポーズを決めると皆が記帳を済ませるまで待って「ほら3階だよ・・チェックアウトは朝10時だ。」と宿屋の旦那から鍵を受け取り風呂場へ向かった。
中規模の浴場で石鹸を片手に身体を泡塗れにしながらフンフン鼻歌を鳴らしてると「・・予想は的中したな、エリューヴィン・・」
隣のシンが視線を逸らしたまま語りかけて来る。
「ええ、尻尾を掴んだからにはもう逃がさないわ・・A-3号室・・・問題はいつ身柄を確保するか、だけよ。」
「ひっひっひ・・今回の遠征は失敗かと思っとったが・・案外とやるのう。おぬしは強運じゃ。」
2つ隣のナッセルも賛辞を送って来た。
「それはそうと爺さんとシンは念入りに洗ってよね!その凄まじい悪臭で寝つきが悪いのは勘弁よ。」
「なんだ?いつの間にどうやって部屋番まで割り出せたんだ??」
・・どうやら気が付かなかったのはウィルだけのようだ。
「アンタって本当に注意力散漫よねぇ・・」
「そりゃ悪かったな!どーでも良いけど若い女が丸裸で目のやり場に困るぜ我らが騎士様よぉ・・」
「・・同感だ。」
ウィルとシンの反応に「あ~ら、ガサツなゴリラとか普段言ってる癖に・・どーせ魅力も一応は無い事も無い程度なんだからラッキースケベにもならないわよ。」
「恥じらいも糞もねえな・・」
「どこぞの淑女じゃあるまいし騎士たる者裸を見られたくらいで動じない!!!」私は身体を洗い流すと湯舟に浸かった。ズクラッドも飛び込んで来る。
「で、お姉さん今後の計画は??」
「そうねえ。可能なら今晩にでもとっ捕まえたいけど・・夜間に取り逃したら追跡は困難だわ。あの用心棒どもの相手をする羽目になるかもだし・・明日の午前中にでも準備を整えてA-3号室のドアを蹴り上げるのがベストかもね。」
「・・お前さんにしては随分と慎重だな。」シンが湯舟に入りながら何気なく口にした。私の気性は彼の知るところだ。
「慎重にもなるわよ・・全てはこの時の為に、遠路遥々やって来たんだから。副王陛下とナターシャの厳重な訓令よ。失敗は許されないの。」
「へえ、そんな重要な任務を雑用騎士団に任せるとは王家の威信も地に墜ちたモンだぜ。」減らず口を叩きながらウィルも湯舟に浸かり込む。
「まぁ、ぶっちゃけ私のコネありきの作戦よね。ランツィを利用してやろうという魂胆丸出しでイマイチ気乗りしなかったけど・・せめてもの救いはランツィが私と会えて喜んだ事かしら。」
「おめえも嬉しそうだったじゃねえか・・」
「そりゃ・・もちろんそうよ。育ての親を嫌うワケないじゃない。」
「いちち・・ワシャ肩こりが酷いわい・・もう歳じゃのう・・」ナッセルの爺さんが辛そうによっこいしょと湯舟に身を投じるのを見て「そうだ!肩こりによく効く呪文を唱えてあげる!リラックス効果もあるよ!」たちまちズクラッドはランラン歌い出して風呂場に彼の歌声が響く。途端にピリピリと湯舟に電気が流れ、身体を刺激して行き・・するとみるみる血行促進が感じられ固まった筋肉がほぐれていくのが体感出来た。
「ほっほう・・優れものじゃなおぬし・・ホビットにしては上出来じゃわい。」
「う~ん最高ね!やるじゃないおチビちゃん。」
「ああ・・溜まった疲れが一気に吹き飛ぶな。これは良い。」
「へへ・・坊主スゲエなお前!」私達は口々に褒めちぎり絶賛する。
それから約10分間ズクラッドは歌い続け・・ナッセルの肩こりが完全に取れると私達は湯船から上がり風呂場を出た。着替えが用意されてあったので全員着替えると服を洗濯BOXに出す。
「うへえ・・その染み付いた鼻がひん曲がる臭いは取れるのか・・呪われてるぜ。」ウィルの冷やかしに「取れなかったら捨てるさ。新しいのを支給申請する。それくらいのディールはあろうだろう??」シンは私に承認を求めてきた。
「そうね・・今なら資金潤沢よ。王都へ帰った後でいくらでも・・ただそれまでは我慢ね。」
「ワシを下水道に叩き込んだからには服の2枚や3枚のサービスは当然じゃろうて。」意外に根に持つ爺さんだ。水路に落ちて死んでしまえば良かったモノを。
3階の大部屋に向かう途中で2階のA-3号室の前へ立ち寄った。
「ここがA-3号室ね・・」
「ようやく追い詰めたな。」
「今頃ベッドでグースカ寝てるんだろうがそれも今宵限りだぜ。」
シンとウィルも俄然ヤル気だ。
「オイラの4ラディールの為にも絶対に捕まえてみせるよ。」
ズクラッドは成功報酬が気になって仕方ないみたいだが無論私もそのつもりだ。
任務成功の暁にはディールくらいくれてやる。
「今はまだその時じゃないけど・・明日の朝に勝負を仕掛けるわよ。さあB-1号室へ行きましょ。」
3階へ行きB-1号室の扉を開けると私は口をあんぐりさせて落胆した。
「はぁ・・コレの何処がロイヤルスイートなのよ・・」
「馬小屋よりはマシだな・・」
「ほら言ったでしょ、ボッタクリだって。」
お粗末な木製のベッドに経年劣化してヒビの入った壁、壊れかけた机が並んでいて歩くと床はギシギシと頼りない悲鳴を上げる。窓ガラスは白濁していて2級品だ。
「俺は雨風が凌げれば何でも構わん・・幸いにも床ジラミは居なさそうだしな。」独り旅で野宿に慣れたシンが上出来だと椅子に座りつつ余裕の表情を見せるが直後にバキボキッゥと椅子の足が壊れて転ぶ。
「まぁ・・少しボロいようだが。」
「・・50ディールはヨハン殺害の容疑者を捕まえる為の代償として考えれば安いものかしらね。」ベッドに腰掛けつつそう自分を納得させた。
「おい、見ろよ酒が置いてあるぜ!!!ワインにウィスキー、バーボン、ウォッカまで!!!選り取り見取りだっぅ」ウィルが嬉々とした声を上げると「ほっほう、良いサービスしとるのう。こりゃ深酒と洒落込むかの・・ウィルよ付き合え。」
ナッセルの爺さんが率先して音頭を取り仕切る。
「俺はワインを貰おうか・・どうせ安物だろうが。」シンも飲む気のようだ。彼はワインの事となると目が無い。
「オイラはウィスキー頂いちゃうよ!兄ちゃん酒の飲み比べしてみるかい??」
「おう、受けて立つ!!!」
「こらこら・・明日の朝、決行なんだから程々にしといてよね。二日酔いになっても知らないんだから・・」私の心配を余所に、銘々が酒の瓶を取り出してコップに注ぎ出す。そうして私達は就寝までつかの間の団欒の時間に移った。
ウィルとナッセルとズクラッドは酒を酌み交わしながら雑談に興じている。いつもの通りウィルのくだらない笑い話だ。どうもこの3人は相性が良いらしい。冒険者を雇う時には馬が合うかどうかが重要なポイントとなって来るが、結果オーライでいわんや仲良くやっている。
シンは独りベッドに腰掛けてワインを片手によろしく楽しんでいるようだ。過度な馴れ合いを嫌う彼らしい。以前妹の命日に弔いの献花がどうとか言ってたが私では彼の家族代わりに成れないのは確かだ。気心が知れる仲間ではあるが何か見えない壁がある風に感じる時もある。そっとしておこう・・
私は荷物から小説を取り出すと「英雄王ルアオッド・・貴方の最後の活躍を見届けさせて貰うわ。」ろうそくの明かりの下で熱心に読み耽り出した。




