二十五章 スズリアサザード平定
「圧勝ね・・私達が出る幕は無いみたい。」
雪崩を打って敗走するスズリア軍を遠目にギルヴェリアが馬上で呟く。
「ああ、度重なる激戦を制して来た帝国兵は精強だ。連邦の干渉が無い限り快進撃は止まらないだろう。」俺は頷いて同意しつつ今後について考えを巡らす。
この15年で帝国の領土は拡大の一途を辿った。輝かしい帝国の栄光が連邦を刺激しないハズが無い。
「居城はサンクトコヴァリア城だったか??いよいよ徹底抗戦か降伏か迫る時じゃの。」ヴァルザックが干し肉を齧りながらフンと鼻を鳴らす。このドワーフは既に老齢で総白髪だが戦意は衰えを知らず覇気に漲り猛者の雰囲気を漂わせている。
ドカカッゥドカカッゥ伝令兵が駿馬で駆けて来た。
「英雄セス卿から報告!我追撃の用意有りっぅ」一応は総司令官を任されたが軍勢の指揮はセス卿に一任してある。
「いや・・猶予を与えよう。追撃は中止だ。」「ハッゥ!!!」
駆け去って行く伝令兵を見送りながら「敵に情けをかけるなんて・・ルアオッド、貴方らしいわ。弱者にはラの者のように慈悲深く強者にはルの者のように獰猛で・・でもそんな貴方が嫌いじゃない。」そう語る長年の伴侶であるエルフは若い頃から変わらぬ容姿で俺に常に全幅の信頼を寄せる弓と呪術のエキスパートだ。
無論彼女の信頼を裏切った事は一度足りとて無い。
「俺達は人殺しの集団では無い・・帝国の版図を広げるのが第一目的だ。そして、その上で帝国の在り方を皇帝と話し合い理想の国とする・・その為には労力を惜しまない。皇帝は俺を対等なパートナーとして認めた。後は期待に応えるだけだ。」
ギルヴェリアは溜息を付くと「貴方って最近皇帝の話ばかりね・・そんなに魅力的な人だったの??」やや嫉妬混じりながら少し呆れたように口にする。
「ふん、心ここに在らず・・かのう。ワシ等と皇帝どっちが大切なんじゃ??」
ヴァルザックも不満気に問いかけてくる。
「・・長年苦楽を共にして生きて来た俺達の絆は死が分かつまで誰にも崩せない。ただ・・皇帝は・・そうだな、ある意味で特別な存在だ。」
「答えになってないわよ、ルアオッド。まぁ・・良いけど。貴方が皇帝を信用するなら私達も同様よ。」
「そうじゃな・・ワシ等のリーダーが心を奪われる程の存在ならば、まず間違いはなかろうて。」
かつて俺の人生はこの2人との冒険こそが全てだった・・だが今は違う。ナルルカティア帝国の統治を皇帝と協議する事にも苦心しなければならない。いつの間にか俺の人生は次のステージへと移っていた。だがギルヴェリアとヴァルザックの意識は昔の俺を恋しがっているようにも感じられる。
人は変わる・・いや変わらなければならない。時代の変化の荒波に適応し人々の為に成すべきことを成す・・それが俺の人生なのだから。
「日が暮れる・・設営部隊に野営の準備をさせよう。」兵に命令を下し、我が軍はここスズリアサザード中央平原で野営に入った。
2時間後・・本営で我々は今後について英雄会議を開いた。開口一番、シャドルテルスが「拙者最前線で尽力したが・・噂に名高いルアオッド殿の実力、拝見出来ず残念である。」と実直な感想を漏らした。
小柄ながらも驚異的な身体能力であらゆる地形を踏破し漆黒の刃を振るって感染症のように死をばら撒くこの男は戦闘のスペシャリストであり新たな英雄でもある。返り血で滲んだ黒みがかった深い紫色の衣服に身を包み極めて鋭い眼光だけが露出しており只者らしからぬ佇まいだ。
「ん、今回は悪いが後方支援に徹した・・スズリア軍が奥の手を出して来た時には真っ先に馳せ参じよう。」
「何故追撃しなかった??完全勝利は目前だったが・・」セス卿が指揮官としての立場から意見した。
「降伏勧告をする。無駄な犠牲者を出したくはない。」俺が簡潔に返答すると
「ふむ・・では明日にでも使者を送ろう。貴公の狙い通りに事が運べば良いが。」セス卿は納得しつつも若干の憂慮を口にする。
「我々は既にスズリア軍と三度に渡って激突し勝利を収めている・・勝機が無いのは彼等も分かっているだろう・・それでも抵抗するのであれば俺が城攻めの最前線に立つ。ならば文句は無いだろう??」
「そういう事ね。私も全力を尽くすわ・・任せて頂戴。」
「ワシの腕を存分に振るう機会じゃな。まぁ見とれ。」
ギルヴェリアとヴァルザックが力強い意志を露わにした。
「使者を送るならば拙者にお任せあれ。闇夜に紛れて城に忍び込むのは拙者の得意とするところ・・国王に直接書状を渡すくらいお手の物である。暗殺でも承る。」シャドルテルスの提案に「そうか・・では頼めるか??ただし、暗殺だけは止してくれ。交渉する相手が居なければ戦争は終わらないからな。」
快諾しつつも俺は念を押した。
「承知!!では早速書記官に降伏勧告の書状を用意させて、準備が整い次第に出発致す・・では失礼。」彼が足早に去ると「存外に役に立つ者だな。戦場でも敵陣を切り崩すのに縦横無尽の活躍をしていた・・英雄に抜擢されるだけの事はある。」セス卿が感心の声を上げる。
「セス、俺が思うに・・君は彼と一度手合わせを願いたいんだろう?」俺の推論に「フッ・・貴公も同じではないか??」認めつつも同類である事を強調した。
「そうだな・・どれだけの強者か確かめたい気持ちはある。だがそれよりも・・」すぐにセス卿は意を察すると「ならんぞ。皇帝陛下を試すのは我が許さぬ。陛下は神の化身であり神聖不可侵だ。我等英雄とは、立場も次元も異なる。」語気を荒くして考えを改めるよう求める。
「例え暴君になったとしても・・かしら??」ギルヴェリアの問いに「有り得ぬ話だ・・だが仮にそうなったら・・貴公等の好きにするが良い。陛下の逆鱗に触れて死ぬのもよかろう。」そう断じた。
「なんじゃ最初からワシ等に勝ち目が無いような言い方は・・気に喰わんの。」
ヴァルザックが不機嫌を露わにする。
「話は終わりだ、解散しよう。」
俺達は話を切り上げると本営を出て宿営用のテントへ向かった。
「あぁ、良い月明かりね・・エパティマとアマルテアが祝福してくれてるわ。」
冷たい夜空を見上げながらギルヴェリアが呟く。
「なんじゃ・・ぬしの星占いがまた始まったか。」ヴァルザックが辟易そうに反応する。
「ドワーフは大自然から学ぶ事に疎いんだから・・情緒に欠けてるのよ。」彼女の文句に「自然は加工して有効活用してこそじゃい。豊富な鉱物を高度な冶金技術で昇華させる事こそがドワーフの本義で創造主への返礼じゃ。何を言わずんや・・」ヴァルザックも負けじと反論した。
「全く・・常識が違うのよね・・・」ギルヴェリアは匙を投げつつ「私達自然との共生を図るエルフと、自然を支配したがるドワーフ・・お互いに相容れない種族が920年前の絶滅戦争で手を取り合って共に戦ったなんて信じられない。」壮絶に皮肉った。
「それは人間が仲介したからじゃろう・・ほれ丁度ワシ等の間にルアオッドが居るように・・」
「俺か??俺は個人主義だ・・人種による隔たりは考えた事もない。ただ価値観や意志を共有する仲間として我々はここに居る・・違うか??」俺の問いかけに「ん・・そうねえ・・些細な小事はともかくとして・・大筋はそうだわ。」
「同感じゃ。」ギルヴェリアもヴァルザックも同意した。
テントに入ると中央の炊事場でギルヴェリアが茶葉を用意しながら「待ってて・・すぐにティーを沸かすから。」と仕度を始める。
「ワシは要らん。寝る前はコレと決めておるからの。」ヴァルザックは食材置き場から茶色い瓶を取り出すとポンとコルク栓を放り投げ一気にエール酒を呷った。
「ぷはっぅ酒こそが我が人生よ・・ぬしもどうじゃ??」瓶を片手に突き出す彼に「いや、今夜は遠慮しておこう・・いつもの飲み比べならナルルカティアに戻ってから存分に応じるつもりだ。」
「ガッハッハ、おぬしが勝った試しがあるか・・人間にしては酒豪だがワシの目が黒いウチは酒で負けるワケにはいかんのう。」嬉々としてそう語るヴァルザックはドワーフの例に漏れず酒の話になると上機嫌だ。
かつてドワーフの力の源は酒と豚肉だと賢者ヴァルタニアスは断定し自らの身体で実践して見事に痛風となり・・弟子であるカレリロンに馬鹿にされたという逸話がある。曰く人間とドワーフの体質の違いすら分からぬとは我が師、耄碌したか滑稽に過ぎると。
「さあ帝国産の茶葉のティーよ。私の故郷の程は美味しくないけど・・」
「ん、貰おうか。」俺はカップを片手で受け取ると啜った。寒い夜に身体を温める飲み物は身に染みて心地良い。
微かな茶葉の苦味を楽しみながら何気なしに口を開く。「俺は13歳の頃に大陸を放浪し始めて・・何故人々が地酒を振舞って旅人を迎えるのか??・・最初は理解出来なかった。」
「あらそれ知ってるわよ・・純粋なラの者やルの者や吸血鬼などの闇の眷属はお酒が飲めないって。エルフの神話でも出て来るわ。」ギルヴェリアの指摘に俺は頷き「ああ、酒が神聖視される由縁だ。古来よりの経験則で人々は知っていた。自衛策と言ってもいい。」そう言うと再びティーを啜る。
「フン・・仮に人であったとしてもドワーフ王国では酒が飲めぬ奴はお断りの門前払いじゃな。それかディアスディアレを叩き斬る勇士でもなくば。」ヴァルザックがドワーフの伝統と流儀を口にした。
「エルフは来訪者をティーでもてなすわ。ラの者はエルフの尊ぶところよ・・ルの者はティーが飲めないから、判別が付き次第に葬り去るの。ティーが飲めない人間にはお気の毒だけどご愁傷様ね。」ギルヴェリアもエルフならではの独特な旅人を迎える儀礼を述べる。
「いつか皇帝と酒を酌み交わしてみたいモノだ・・愚痴の一つや二つ聞けるとしたら面白い。神の申し子とはいえ少しは人間らしさも残っているだろう。」
途端にギルヴェリアの表情が暗くなり「ねえルアオッド・・今の貴方が皇帝に心酔しきってるのは知っている。でも・・これだけは覚えておいて。仮に貴方の最大の理解者が皇帝であったとしても・・私達の絆は永遠よ。」
俺は彼女の複雑な心境とそれでもなお絶大な信頼感を寄せるその気持ちに「ああ、もちろんだ。死が分かつその時まで生きる喜びも惨めな死を迎える時も共にあると約束した。二言は無い。」僅かな不安を払拭させるように言い聞かせた。
「フン、おぬしが約束を違える奴ではないと分かっておるわ。だがまあ皇帝を討つなら、ワシ等3人が揃っておる今を置いて他には無いぞ。」ヴァルザックが言うに及ばずと前置きしつつも時には猶予があまり無いと直言する。
「いや・・皇帝は俺と会う時は一時的にせよ命を預けに来ている・・信用出来ぬなら殺せとな。その誠実な信念を裏切る事は俺には出来ない・・それに俺は後数十年もしたら死ぬ定めだ。帝国の統治は今後、数百年・・いや数千年続くやも知れん。俺はその礎となればそれで十分だ。」
「それがおぬしの答えか。まあええわい。」ティーを飲み干し空になったカップを炊事場に置くと「明日は早い、もう寝よう。」俺達は就寝に入った。
翌朝・・我々は予定通りにスズリアサザード王の居城へと軍を進めた。敵兵の姿は見えず悠々と進軍する我が軍を阻む障害は無いかに思える。
「いよいよ城攻めか・・腕が鳴るのう。」馬上のヴァルザックが金剛の戦斧を剛腕で振り回しながら豪語し闘争心を示す。
「流石に降伏するんじゃない?私達の攻城戦は常に短期決戦で成功して来たわ・・彼等も知ってるハズよ。籠城したところで無駄だって。まぁ城壁に並んだスズリア軍を寸刻で途切れなく射貫き落とすのもやぶさかではないけども。」ギルヴェリアが楽観視しつつも必要とあらば最善を尽くすと明言した。
「俺としては早期降伏を望むが・・いずれにせよ、スズリアサザードの陥落は確定事項だ。何らかの切り札を投入してくる可能性はある・・が、排除するまでだな。俺達に勝てる敵はこの地には存在しない。」
そう・・例え数多の天使や悪魔やドラゴンであろうとも、我々の脅威足りえる存在などもはや双極半島に居ない。ただ時間のみが我々を打ち負かせるのだ。
「ねえ、覚えてる??大陸南東部で燐赤竜ガラリア・ジャクターンを討伐した時の事・・」ふと出し抜けにギルヴェリアが懐かしい名前を口にした。
「ああ・・竜眼で語り合ったが・・何故人々を苦しめ虐げるのか?という俺の問いに人には人の、竜には竜の生き方がある・・それが天命なのだ、と奴は答えた。」
ドラゴンの心は不可測で気紛れな秋の空との故事がある・・その時の気分によって悪戯に人を殺すかと思えば情け深く人を助ける例も数多い。
「それで・・ならば人に屠られる天命というモノを、その身で以て教えてやるって貴方が啖呵を切って戦闘の火蓋が切られたのよね。」
「ありゃ激戦じゃったのう・・何百年生きた古竜か知らぬが結局深手を負った奴は海の方へ飛び去って行った・・ワシ等が殺せなかったドラゴンは、後にも先にも奴一匹だけじゃ。」ギルヴェリアとヴァルザックが懐旧の念で思い出を呼び起こす。
「奴が寝床にしていた山のように蓄えられた財宝を見て大臣は目を回して気絶して王子がこれで国を再興出来ると喜んでいたが・・あれからどうなったか、知る由も無い。国家は人材在りきだ・・強固な産業基盤が無ければ棚ぼたの財宝なんて如何ほどの役に立つものか・・」
その時、先遣部隊の兵が馬で駆け寄って来た。「報告!!!城に白旗を確認!!!繰り返す城に白旗を確認!!!!」
「ほう?やけに早いな・・書記官はどのような脅迫めいた勧告状を書いたんだ??」俺の呆れたような物言いに「ぬしが直筆の書状でなくて良かったのう。」「そうねえ・・ルアオッドったら甘いから・・貴方の博愛主義は好きだけど少し度を越しているわ・・」2人とも正直な感想を漏らす。
「セス卿には伝えたか!?」「ハッゥ、既に!!!報告済みであります!!!」
「ようし・・血が流れるのは必要最小限で良い。戦後の統治にも影響を及ぼす・・ヴァルザック、出番は無くなったが不貞腐れないでくれ。」
「フン、老骨の身にムチを打って奮戦せずに済むとはよっぽど有り難い話じゃ・・クソッタレが。」ヴァルザックは皮肉気味に怒りを露わにした。年老いてなお気焔を吐くこのドワーフはよほど老衰という言葉を知らぬかに見える。
それから我々は城を目指し2時間程度の行軍を続け・・サンクトコヴァリア城の目前にまで辿り着くと頂上に高々と白旗が掲げられていた。慌ててペンキで塗ったのだろうか、元の国旗が透けて見える。城門は開いておりセス卿とシャドルテルスが傍に佇んでいた。
馬から降りて近づくと「やあ今日は良い日になりそうだな・・少なくとも血生臭い戦いをする必要性は無い。」多少緊張感を解き穏やかに語りかける。
「貴公の目論見通りとなったな・・実に結構な事だ。では参ろうか。」
先を急かすセス卿に待ったの手を掛け「その前に・・シャドルテルス、良い働きをしてくれた。感謝する。」
「なに、お安い御用・・拙者の働きが役に立つならいくらでも貢献致す。」微塵も功績を驕らず控え目に接するその態度は・・英雄としてはあまりにも謙虚に過ぎている。彼には名誉欲など無いのだろうか。
「相手方は既に用意を整えているらしい。行こう。」「ああ。」
我々は選りすぐりの数十名の兵士を連れてスズリア兵の案内のもと城門を潜り王の間へと向かった。
広い王の間に入ると、そこには10数名の着飾った王侯貴族と思われる人々が膝を突いて悲しい面持ちで待ち受けていた。
「ラファレックス7世の名において全面降伏致します。この通りです!!どうか、どうか・・何卒寛大な処置をお願い申し上げます。」国王とその親族、貴族、側近らしき者達が平伏して祈るかのように許しを請う。
「アァァ~~ひゃっひゃっヒャ」玉座の隣で道化師がクネクネ踊り狂っていた。
まるで国王達の姿を嘲笑うかのように。
「どうか娘だけはお救い下さい、この私めは串刺し刑でも何でも・・」
「・・串刺し??」俺は涙ながらに訴える国王の手からバッゥと降伏勧告状を奪い取ると「・・降伏せねば一族郎党生きたまま串刺しの刑に処す・・正気か??」
内容を確認して隣のシャドルテルスに詰問した。
「拙者の故郷ではこれ当たり前。少し色は付け申したが・・」俺は額に手を当てて考え込んだ。やはりこの男に任せたのは間違いだったのかも知れない。そう思いながら下の方に目を移すと・・【国王の名において降伏しますケロケロケロッピー】と調印されてある。
「・・このケロケロケロッピーとは??」
「あの道化師が勝手に書いたんです、私に恥じを掻かす為にぃぃ・・うぅ・・」
もはやそういう芸なのか理解に苦しむが「アヒャヒャっぅふひヒャっぅアぁ~ひっひッゥ」踊り笑い続ける道化師も命懸けの仕事だとしたら大した胆力だ。
「どうぞ玉座にお座り下さい、もはや私の席ではありません・・」国王がそう玉座を指差しながら申し出た。
「いや・・俺の席でもない。帝国から太守が派遣されるまでは空位で・・」
「ぐぐっぅぎょ・・」「ぁあ゛あひっぅ」
「ん!?何だ!?」
「ぐげっぅグゴゴゴ・・」「あぎゃっぅ・・ぐひぎぎぃぃ・・」ボキボキバキャッ国王と王妃の首が一周し捻じれて曲がる。
「ひぃぃーーっぅ」王女が悲鳴を上げると同時に後ろに居た大臣らしき人物が立ち上がるとパンッゥパフゥッゥ・・一気に膨張し服が飛び散り・・ズォォオオーッゥ巨大な悪魔がその姿を現した。
「ルの者に汚染されていたかっぅ!!!!」セス卿がライトニングブレードを抜刀して叫ぶ。
「クソがっぅ」「やるわよっぅ」ヴァルザックとギルヴェリアも武器を構えた。
「役に立たぬ国王だったな・・我が眷属が支配している領域に人間如きが踏み込むとは死して後悔するが良いっぅギャオォォオオオーーーッゥ!!!!!」不気味で恐ろしい雄叫びを上げる悪魔に場は混乱に陥る。
「闘いの天使ラ・バルシューム・シェアインホルテよ!!我こそは至高なる天空の軍勢を導き終末戦争を共にする履行者であり・・悪魔の軍勢を滅ぼす意志を示す者なりっぅ今一時我にその絶大な力を授けたもう!!!!」
悪魔の斜め頭上に光り輝く異空間の扉が開いた次の瞬間、光の雹が凄まじい勢いで降り注いだ。ズドッゥズドドドドーーッゥ瞬く間に悪魔の上半身が砕け散り頭蓋が吹き飛び肉片が散り散りに弾けて、ビクッゥビクンッゥと下半身が痙攣しつつ・・ドシャッゥと崩れ落ちた。
「ヒィィ~~ヒッヒッヒ」狂った道化師の笑い声が響き渡る。
「む、やはり貴公・・ルの者を歯牙にもかけぬか!!」セス卿が剣を鞘に納めつつ感服する。
「拙者英雄の末席なれど真の英雄とは何たるかしかとこの眼で見たり。」シャドルテルスは数本のクナイをクルクル回転させてホルダーに戻しながら呟いた。
「相変わらずねルアオッド・・」ギルヴェリアが安堵と信頼が混じった溜息を付き「なんじゃワシ等に出番をくれぬとは・・」ヴァルザックもやや不満気ながらいつもの事かと戦斧を背中にしまう。
俺は竜眼で残りの者を見通すと「この場にはルの眷属はもう居ないようだ・・だが安心は出来んな。」放心状態で立っている王女の手を取り「すまないがナルルカティアまでご同行願おう。君が後継者だ。」
「報告!!!報告!!!」傷だらけの兵士が王の間に駆け寄って来た。
「スズリアサザード南側にて斥候部隊全滅!!!」
「何・・!?何があった!?」
「ハッゥ・・突然同士討ちが始まり・・見つけた・・英雄見つけた・・」
「ん??何を言ってる!?」
「見つけた・・要らない・・もう・・要らない・・ぐぼぼヴぁっぅ」ドヴァッゥ・・突然兵士の身体が内側から破裂し血と内臓がブチ撒けられた。唖然とする我々はしばし沈黙の後、
「・・どうやら南側に行く必要性がありそうだな。まだ何かが居る。」
「何かって??」ギルヴェリアの問いに「分からん・・ルの者かラの者か・・あるいは呪術士か。」
「何だって構わんじゃろう、とにかく倒せばそれで済む。」息巻くヴァルザックに「貴方らしい意見ね・・まぁ、別に構わないけど。」ギルヴェリアは呆れた口調で同意する。
「拙者いつでも準備は良い・・覚悟完了である。」シャドルテルスが両の拳を突き合わせ戦意を表す。
「強敵かも知れん。俺達だけで行こう・・セス、それで良いか??」
「うむ。ルの眷属だとしたら我等英雄が討伐するは責務・・異論は無い。」セス卿が頷き我々はサンクトコヴァリア城に兵を残したまま出撃する決意を固めた。




