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二十四章 帝国の英雄

太守の館への帰り道の途中、広場に出ると何やら騒がしい。ざわざわ人々が新聞を手に何やら語り合ってる。

「号外だよ号外!!!とうとうダダールブルクの獣が退治された!!!さあ買った買った!!」

人混みを掻き分けながら新聞の売り子に辿り着くと「いくらかしら??」尋ねた。

「20チャリンだよ!!!」私は投げつけるように彼の逆さまになった帽子の中へ20チャリン突っ込むと1冊手に取った。一面に巨大な獣の姿が印刷されてあるのが目に飛び込む。あの男の記憶の欠片がもう記事になるとは。

「号外だよ号外!!!」喧騒の広場から離れるとキョロキョロと辺りを見回し・・手近な喫茶店を見つけ・・タンデ・コマと看板にある店の扉を開いた。

店の中は満席に近く人々はいずれも新聞を熱心に読み耽っている。1カ所空いてる席を見つけると「相席良いかしら??」返事を待たずに座り込む。

「どうぞ・・」

相手はこちらに目もくれずパイプから煙を漂わせ新聞を眺めていた。

折角なので何か頼もう・・紙のメニューをテーブルの上に広げたその瞬間、

「お嬢さん異国人だね?」唐突の発言に私は目を向けるが新聞で顔が隠れている。

「えぇ・・この肌だから分かるわよね。そう、一昨日来たばかりなの。」愛想笑いしながら応えると「違う、メニューを広げた。地元の人間ではない・・そしてその腰に下げている二対の短剣は帝国兵の標準装備では無い。冒険者ギルドのメンバーはバウワウ16番の常連だからこの店には来ない・・確率論で言えば87.5%の確率で君は異国人だ。」

思わず目を白黒させた。「あぁ・・そう、私その・・確率とか計算とか苦手だからよく分からないけど・・」

「更に言えば一昨日来たばかりとの話だが私のナルルカティア語を完全に理解しており既に習得している。だが訛りがある・・妙に不自然だ。これは79.15%の確率で話術士に言語呪文を施されたと推定される。」

「あの・・」

「そして服に染み付いた血痕と汚れを平然と衆目に晒し、金色の首飾りが呪符石である事から・・何らかの任務の為にこの地を訪れている腕の良い戦士・・あるいは騎士である確率84.2%。」

私は訝し気に彼を見つめると「貴方・・誰??」警戒心を露わにして問うた。

「ほぉう当たりか・・どうやら私の感も鈍って無いようだ。いや、あるいは今まで以上に・・冴えている。」男は新聞をテーブルに放り投げると「職業柄の癖が出て失礼、私はレッソ・オリヴェ。ここ帝国領での探偵が稼業だ・・仕事なら何でも、誰でも請け負う人呼んでナルルカティアの解決屋。」

そう語る彼は中肉中背の人間の男性でその顔面は不健康なまでに青白くボサボサの白髪が乱雑に生えており刻まれた皺から控え目に見ても若者では無い事が窺える。だが老人にも見えない。

「探偵さんね・・驚かせないでくれる??てっきり・・」安心して口を開くと、

「同胞かと思った・・かな?あるいは君を始末する為に送り込まれた刺客かと??いずれにせよ的外れで残念だ。」唖然とする私を一瞥して「気にせんでくれ、君の立場や境遇に興味など無い。ただの癖だ。」彼はパイプを吹かして窓の外を見やり「君がこの新聞で確認したい事は・・表面か?それとも裏面かな??」トントンとテーブルを人差し指で叩きながら聞いて来た。

「さあ??貴方には関係無いわ・・」私は平然を装いつつも新聞を喰い付くように覗き込む。

とうとう35ラディールの懸賞金が掛かった害獣が討伐さる!!!!仕留めたのは何と冒険者ギルド!!!13人もの犠牲者を出しながら指揮し勝利を収めたギルドマスター・マニファン氏はこう語る!!一致団結した絆の勝利であると!!!一方不名誉な事態となった軍の司令官ザイファス氏はノーコメントを貫いており・・

「ふぅ・・絆ですって!?よくもまあ・・」すぐ裏面を捲る。

「!!!」私は瞬時の驚きの後に勝利を確信し笑みを浮かべた。

「ふむ、裏面だったか・・」

レッソの呟きに対し「ハズレ・・両面ともよ。」凛と答える。

そこには指名手配!!!懸賞金5ラディールのこの顔を見たら軍へ一報を!!!!との太文字の下にデカデカとヨハン・ミシェルの顔が印刷されてあった。

懸賞金はランツィが気を利かせてくれたのだろう・・後で感謝の言葉を送らねば。

「お客さんタダ読みは困りますよ、ご注文は??」若いウェイターが注文を受けに来た。

「そうね、天国への階段を一つ。今の私にピッタリだわ・・これチップ込みで。」ディール銅貨を2枚渡すと「おっほう!!!なんてこった、今日はツイてるなぁ・・ありがとうさんよ!!!」上機嫌で手の平を振りながらウェイターは小走りに去ると「おやっさん!!!天国への階段一丁!!!」良い声を出す。

「なるほど??裏面の尋ね人を探してる異国人・・か、妙だな。」

私は溜息を付いて「良いわ、探偵ごっこにもう少し付き合ってあげる・・この男が今何処に居るのか当ててみせたら感服するかもね。」

レッソは一寸間をおいてパイプを片手に泳がせると「それは仕事の依頼として・・かな??であるとすれば何らかの情報提供が先だが・・」

「まさか。言えないし言うつもりも無い。」

「・・だろうな。どの道、明日にはミューンズドヴルメ全域にこの報が届く。私が出る幕は無いだろう。」

そう言うと再びパイプを吹かせて煙を撒いた。

「貴方暇なの??仕事は??」

「そうだな・・君は天使について何か知っているか??」

突然の話に私は言葉に詰まりつつ「・・・残念だけど知り合いにラの者は居ない。ただその比類なき力に付いては知ってるかも。」少し濁しながら返答してみた。

「よかろう情報交換だ。私は君が知りたい事を一つ答える。君は私が知りたい事を教えてくれ。」

「私が知りたい事は、この男が何処に居るかって話なんだけど・・」新聞の裏面をヒラヒラ見せ付けるように宙に流す。

「他については??」

「分かったわ、だったら帝国の英雄に付いて教えて頂戴。」

「お安い御用だ。英雄は今現在9名から10名ほど存在する。最も強大なのは黄金のジルヴェリオス。この者はワケあって帝都ナルルカティアから離れられない。

不屈のディオルゲーネ・・・彼女は史上最強のホビットと呼ばれる。様々な道具を駆使して三度負けても最後には勝つ執念深さで有名だ。悠久のデストランザ・・・若かりし日は閃光のという枕詞だったが年老いたリザーディアンで電光石火の俊足とかつてルの者を一撃で倒したと言われる神槍クィン・ルティス・ギアズを操る。

黒騎士レミダリアス・・・漆黒の刃での暗殺を得意とするが、正面切って戦う事も好む。だが黄金のジルヴェリオスとの決闘に敗れ評価を落とした。慈香のレアナ・グリュック・・・在籍はしているが300年以上使われている名前で一度足りとて表に出て来た事が無い・・欠番という意味かもな。

孤高のランフィスト・ヴァレリア・・竜眼でドラゴンと語り合いその能力を我が物とするともっぱらの噂だ。その目的の為に連邦を隠密に単独で踏破したとも言われる。珍しく酒好きのエルフで喧嘩っ早い。破滅のシェアイア・・声高に世界終末論を唱える破滅願望のノームで超一流の呪術士でもある。彼の出版した本を燃やすと火達磨になって死ぬ事で有名だ。機甲のラングリッド・・ディアスディアレ統率者のドワーフだ。彼が一度ディアスディアレに乗れば勝てる者は存在しない。傑物のランツィ・・ミューンズドヴルメを帝国に献上した功績で英雄となった成り上がり者だ。双刀使いで皇帝から永らく封印されていたライトニングブレードを賜ったと聞く。もう1本も神具だろう。10人目については・・今現在調査中だな。これで良いかな??」

探偵の看板に偽り無しの情報能力に私は舌を巻きつつ「まとめて聴いても・・頭に入って来ないわね・・その中で即応性がある者は??」再度尋ねる。

「ディオルゲーネ、デストランザ、レミダリアス、ランフィストの4名だろうな。ところで一つ助言だが、帝国の英雄と事を構える気なら止めておけ。君のその鈍臭そうな短剣では勝負にならない。」

「・・・でしょうね。英雄の名誉ある評判と圧倒的な強者として讃えらえる名高い声望は理解しているつもり。彼等に勝てるとすれば伝説のリアル・ラ・テスマくらいかしら。」

私はかつて連邦で高潔な意思と双極半島最強の名声を兼ね備え、ズクラニア戦争で3名の英雄を屠った高位騎士の名を口にした。

レッソは少し考える風に視線を落とし、「ふむ・・天使よりもより天使らしい民の庇護者でありその聖剣ファルゲリュシアは正義の名の元にのみ振るわれると謳われた聖騎士テスマか・・確率論で言えば800年に一人の逸材だな。ズクラニア戦争が連邦の勝利に終わったのは第一にドラゴンの大群、第二にテスマの武勇、第三に皇帝がテスマを殺さなかった事と評されるが・・君はテスマでは無い。」

パイプを吹かしながら彼は淡々と語る。

「では仮に私が天使・・・ラの者の力を借りれるとするならどうかしら??」私の問いにレッソは目を見開き「そう、それだ。君は天使に付いて造詣が深いようだ。それを教えて欲しい。何しろ帝国では天使がその姿を消して久しい・・異国人ならではの見解を聞きたい。」

彼が何故ラの眷属の情報を求めているのかは知らないが・・私の知っている範囲であれば答えても問題は無いだろう。

「良いわ。情報の等価交換ね・・ラの者は人々を慈しみ、護り、時にはその願いを叶えると私の故郷では信じられているわ。また信仰の対象で偶像崇拝が盛んに行われてる・・人の姿に化けて世をさすらう習癖があり貧者や困窮者に恵みをもたらすとも。」

「なるほど??ラの者やルの者が人の姿を模る・・古文書にそう書き記されているのは承知だ・・が、我々の時代に事実として記録には残っているのか??」

「事実・・ね、残念ながら概ね伝承や神話でしか確認は取れないわ。ただ、現世紀1412年に聖者ルオノンティスが吸血鬼の始祖ユーヴァラスを追い詰め封じた後に金の粉が天に舞い上がり彼は消滅して行ったと記録に残っててその正体は天使であったと言われてる。これは帝国の人は知らないでしょうね・・・私も特権を行使してようやく知り得た話だから。」

私が騎士に任命され最初にしたのは部外秘の王国図書館で歴史を学ぶ事だった。

「うむ・・実に興味深い話だ・・で、その比類なき力とやらに関しては??」

すっかりレッソは私の話に熱を入れて耳を傾けていた。

「今でも一部の人がラの者と契約をしてその力を行使してるのは確かね。私が実際に目撃したのは驚異的な呪力の増幅に神具の修復と天候の操作、そして怪我や病の完治。私自身は契約者じゃないけど・・契約者が天使の力を他の人に分け与える事は可能だわ。」

彼はフムフムと頷きながら「そうか・・ならば契約者がその力を行使して人為的に天使を造り出す事は可能かな??」

「まさか!有り得ないわ!」突拍子も無い発言に私は叫んだ。

「何をどう考えても・・そんなの不可能よ。仮に天使を造り出す事が出来るとしたら神の力のみによってだわ。」

「へい、天国への階段お待ち!!!特別にクリーム多めだよ!!!」その時、私が注文していた軽食がウェイターの手で運ばれて来た。

三重のパンケーキの上にホイップクリーム、そして白濁色の珈琲がテーブルに並ぶ。

「なるほどな、参考になったよ。」

レッソは立ち上がると帽子を被りながら「では私はここで失礼する。君がこれから何を成すのかは訊かないでおくが・・忠告しておこう、天国への階段を踏み外さない事だ。一寸先は闇かも知れない。」

「それはどうも。じゃあね、探偵さん。」

足早に去って行く彼を見送る事も無く私はパンケーキを切り始める。帝国の英雄が何だと言うのだ。任務の障害となるならあらゆる手段を講じて排除するまでの事。ランツィが私を売るなんてあろうハズが無い。天使の祝福を使えば私だって・・「あら美味しい。上等な蜂蜜使ってるわね・・」思わず口に出る。

そのままムシャムシャ食べながら珈琲を片手に流し込む。

「ぶっぅ・・クリーム多すぎるわよ・・・コレ。折角の珈琲の味が台無しだわ。」悪態を付きながら私はホットケーキを攻略して行き・・あっという間に平らげると珈琲をグビグビ一気飲みしてガバッゥと立ち上がった。「さあ行くか。」


意を決して館に帰ると、玄関で出迎えてくれたメイドに「後で良いから汚れた服の洗濯お願い出来るかしら??それと着替えも頼むわ。悪いわね。」今から死ぬかも知れない人間が衣服の汚れを気にするなんて、馬鹿馬鹿しい・・そう思いながらも頼み込む。

「がっはっは・・」客間から馴染み深い笑い声が聴こえて来る。来客だろうか??だとしたら・・既に彼等はここに来ているのだ。

ランツィが一緒ならば少なからずチャンスはある。死中に活を求める思いで急いで客間へ駆け寄った。「ランツィ!!!」

「おぉ、帰ったかエリュー。害獣退治での活躍は聞いたぞ、流石はリシャーヴの宝だ。」

私はランツィと対面している大きな甲虫のような黒い甲冑に兜を被った大柄な騎士と金髪の天使のような可愛いあどけなさのある少年を交互に見やった。

「私は大したこと出来なかったわ・・火消屋ってのがケリを付けて・・」

彼等が帝国の英雄??敵意はまるで感じられない。

「紹介が遅れたな、ワシの愛娘エリューヴィンだ。」

ランツィが私の肩をポンと叩き自慢気に紹介する。

「ほぉう??貴公がリシャーヴからやって来たというランツィ公の御息女か。」

黒い騎士がフルフェイスで表情は見えないが興味深げに聞いて来る。

「えぇ・・血は繋がって無いけど。貴方達は??」すぐにラグナブレードを抜けるよう臨戦態勢を保ちながら問いかけた。

「我は黒騎士スンツェルニム・レミダリアス。この姿からビートルと賤称される事も多い。普段は皇帝陛下の命を受けて、帝国の治安と保全を担っている・・・が、今しばらく出番が無くてな。領主でも無いので暇潰しにここミューンズドヴルメへやって来たのだ。よろしく頼む。」そう言うと黒騎士は片手を差し出して来た。

「こちらこそ、よろしく・・・」私は探偵レッソの情報通りの人物に英雄だと確信しつつ警戒心を解かず握手に応じた。

「僕はヴァリカルギア・ラスキュリン。民を助け民を愛する為に英雄となった帝国臣民の下僕であり皇帝陛下の忠実なしもべ・・安心して、君に危害を加えるつもりは無いよ。」

私は本心を悟られたと同時に少年が英雄を自称した2重の驚きに声を上げた。

「貴方が英雄!?まだ子供じゃない・・」レッソの情報に彼の存在は無かった。

調査中の10人目とはこの少年の事か。

「あぁ、この子は特別でね・・詳しくは言えないが他の英雄とは異なる。その性質も役割も。」黒騎士の説明に「それはワシにも言えぬか?」ランツィが口を挟むが「残念ながら・・英雄にも序列があるのでね。陛下の信認を得た者しか知る権利は無い・・貴公が認められれば明かされるだろう。」

どうやら英雄も一枚岩では無いらしい。

「まぁワシは所詮外様だからな。それに皇帝陛下の靴を舐める気も無い。お互いに利用し合ってるだけで十分だ。」

「貴公らしいな・・傑物のランツィ公よ。だが断じて忘れるな、貴公が陛下の心を害する事があれば我の漆黒の刃が暗躍する破目になるやも知れぬ。」

ランツィは気にも留めず一笑に付して「その前にジルヴェリオスに借りを返すのが先ではないか??」黒騎士の屈辱の過去を掘り起こす。

「あの愚か者は陛下を裏切った。二度と立ち合う事は無いだろう・・奴は強い・・が、忠誠心無き力は闘技場に封じられるのが相応の末路だ。」

「あの・・ところで何の為にミューンズドヴルメへ??暇潰しって言ってたけど・・」私は思い切って尋ねてみた。

「そんなの決まってるよ。害獣が民を苦しめていると聞いて僕がレミを誘って一緒に来たんだ。でも無駄足のようだったね・・」ラスキュリンが笑顔で返答する。

「それと・・・リシャーヴの騎士が悪い奴なら追い払おうかとも思って。でも杞憂だったね、君は良い人そうだ。」

「・・もっとも、陛下の密命とあらば貴公を手にかけるのも厭わぬが・・」

黒騎士の不穏な発言に「駄目だよレミ。彼女は善人だ。それに人を殺めるのは僕のサガに反する。」

「はっはっは、レミダリアスよその気ならまずワシを倒してからだな。」

ランツィとラスキュリンが牽制をした。

「冗談だよ・・挨拶も済んだしそろそろ帰るか。」

「うん。獣を退治してくれてありがとう、エリューヴィンさん・・戦場で会ったらお手柔らかにね・・命までは取らないよ。」感謝の意と恐らくは心の底からの善意ではあろうが・・騎士に対する侮蔑の発言に

「それは・・どうも。私も子供を殺す気はサラサラ無いわ。」私はこの純真無垢な少年への無意識な反発感を口にする。随分と見くびられたモノだ。

「子供・・か、ふむ貴公にはそう見えるのだな・・まぁ良い、次は戦場で会おう。リシャーヴの騎士よ。」黒騎士が踵を返すと玄関の方へ歩いて行く。

「何だ、もう帰るのか??」ランツィの問いに、

「ああ、この田舎街の空気は性に合わん。我も華やかな帝都の風に慣れ過ぎた。」「じゃあね、バイバイ♪」ラスキュリンが笑顔で手を振ってレミダリアスを追いかけ彼等は去って行った。


「なぁに、アレが帝国の英雄??聞いてたのとは少し話が違うわ・・やけにフレンドリーじゃない。」

私の正直な感想にランツィは頷くと「いくら英雄といえ所詮は人の子だからな・・皇帝の体の良い駒に過ぎぬ。だがエリューよ決して油断するな・・レミダリアスは見た目通りだがあのラスキュリンとかいう小僧、得体も知れぬ超越感を醸し出しておる・・皇帝と同類の匂いがする。人間かどうかも怪しいぞ。」

彼の見解に私も同調した。

「何て言ったらいいか・・例えが失礼だけどまるで副王陛下の万能感みたいなものを彷彿とさせるわね。でも邪悪な感じはしなかった・・」

ランツィは私の言葉の語尾に反応し「ふむ邪悪か。ルの者はそうだと思うか??」

「もちろんよ。」

「ワシは・・そうは思わん。」

「何故??リシャーヴ王国は王家代々に継がれる守護天使ラ・メディス・アルティーナによって護られている・・逆にルの眷属は人々を誘惑し騙し混沌に陥れファルギルダイテを再現させる・・どちらが人々により良い存在か瞭然だわ。」私は書物で得た知識で反論した。

「確かに・・一般的にはそうかも知れん・・だがな、ルの者でも人の治世に役立つ場合もあるのだ・・」ランツィはやや歯切れが悪く、だが確信的に述べる。

「例えば??」

「・・この話はまた今度にでもしよう。エリュー、お前に言いたい事は自分を信じる事だ。そして何があってもワシはお前の味方だ。それを忘れないでくれ。」

話を切り上げた彼からの何処となく配慮と愛情の籠ったアドバイスに

「ありがとう・・今はその言葉で納得しておく。私もランツィ貴方の為ならいつでも力を尽くすわ。家族だもの。」私なりの愛情表現で応えた。

「ん、ところで頼まれていた指名手配は今日から明日にかけてミューンズドヴルメ全域で完了する。ポスターは大量に用意した・・新聞にも載せた。衛兵や自警団に欠片も配った。すぐに容疑者が見つかる事だろうて。」

「さっき新聞見たわ。懸賞金まで掛けてくれて・・本当に助かる。手ぶらで帰ったら副王陛下とナターシャに何て言われるか・・」一抹の不安を口にすると

「ガッハッハ、ナターシャは昔からお前に厳しかったな。それだけ期待をしていたのだろう・・手塩にかけて育てたと言えば聞こえは良いが・・まぁなんだ、今回の件を功績として期待に応えてやれ。」

ランツィは豪快に笑って何も心配は要らんとばかりに私の肩に手を置いて揺する。

「ん・・・育ててくれた恩返しくらいしないとね・・そろそろ部屋に戻るわ。昨日から寝てないの。」

「そうか、冒険者ギルドは人使いが荒いからな。ゆっくりと休んで吉報を待つのがよかろう。」私はランツィとハグをすると様々な安堵感を胸にその場を離れ自室へ向かった。

部屋に戻ると中央に木製の籠が置いてあり・・中に着替えが入っている。なるほどこういう事か。私は着替えを取り血と埃で汚れた衣服を脱いで籠の中に放り投げると部屋の前に出しておく。

「シルクのパジャマね・・んん~快適だわぁ・・」テーブルの上にサンドイッチが用意されてあるのを鼻歌まじりに摘まむと「私の大好きなツナサンド!!!今日は私のラッキーデイかしら??」心地よい気分でベッドに寝転がり小説を手にした。

「英雄王ルアオッド・・貴方の願望は叶ったのは知っている・・でも、今しばらく楽しませて頂戴。」


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