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二十二章 ガレアスの魔獣

ッパァァアアーーーンッゥ突如閃光弾が遠くで打ち上げられた。

「発見か!?」「行くわよ!!!荷物はこの場に捨てて駆け足!!!!」

全員荷物を投げ捨てると、一斉に走り出す。ズクラッドがハーモニカを吹きながらなのでやや遅れ気味だが我々が照明の範囲内であれば多少は構わない。

誰かの呪文だろうか・・明かりが照らされていたがすぐに消えた。と、同時にけたたましい悲鳴が聴こえる。「おチビちゃん明かりは絶やさずに!!!」「うん!」


閃光弾が打ち上げられた付近に到着すると死体が転がっていた。上半身が無い者、腹を抉られた者、袈裟懸け状に切り裂かれた者、そのあまりの凄惨さに戦慄する。

「こりゃ・・ひでえ。」堪らずウィルが顔を背け、

「天使よこの者達の魂を救済したまえ。」ナッセルが呟き、

「まだ近くに居るぞ・・」シンが抜刀して警戒する。

「みんな警戒して!おチビちゃんを中心に円陣を組んで!!!照明が消えれば全滅よ!!!」私は指示を出しズクラッドを守るように動くと両腰のラグナブレードに手を置いた。

「グルルル・・・」

「聞こえる・・来るわ。」

「ど、どこだよ・・」ウィルは剣を構えつつも及び腰だ。完全に気圧されている。

「グワォォオ・・・」

「・・10時の方向、40トーリア森の先だ。闇の中から俺達の様子を窺っている・・」シンが冷静に状況を把握し我々に知らせた。

ズクラッドは音域が上擦りながらも明かりの呪文を唱え続けている。

「ナッセル!閃光弾を打ち上げて!!そして爆炎の呪文を10時の方向へっ!!」

「ほいよっぅ!!!」

すぐさまナッセルは片手を天に上げ・・ッゥドォォオオーーーンッゥ!!!!

空高く閃光弾が閃光と共に轟音を発し会敵信号を仲間に知らせた。

続けざまに、両手から数十トーリアの爆炎を放射状に流し込む。木々が業火の炎に燃え揺れて・・

「ドルルルゥゥウウーーッゥグワァァアアーーッゥ!!!」

黒く巨大な獣が爆炎の中から街道上へと躍り出た。その距離15トーリア程・・・威圧する獣はあまりにも大きく・・身震いを禁じ得ない。

「俺が囮になる・・援護を頼む!」言うや否やシンが駆け出した。

「シン!!!そのまま真っ直ぐ!!!」私は叫ぶと死体からロングソードを取ってぶん投げた。

黒い巨体が身のこなし素早く避けたところにシンがタイミング良く斬り掛かる。

ザシュッゥ・・・「チィッゥ・・皮が厚い!!!肉を断ち斬れん!!!!」軽快にステップを踏み、体当たりを仕掛けた獣をシンは寸でのところで横転とジャンプで巧みに避けて逃れた。身体強化呪文が効いている。

「くっぅ・・狙うべきは顔面か!!!」

私はズクラッドの腰から投げナイフを掴み取り獣の顔面に投擲すると右手でラグナブレードを抜き突撃した。ドッゥドスッゥ!!!!ナイフが眉間に刺さるが、

「ギャォォオオオーーーッゥ!!!」それは魔獣を怒らせただけであった。

ガキィンッゥ!!!!首を狙い突き立てたラグナブレードが・・獣の牙に反発して弾ける。更に追撃するもキィィンッゥ獣の前脚の爪で阻まれた。

「口の中ならばどうだっぅ!!!」シンが開いた口から喉奥に剣を突き刺したかと思うとバリンッゥ!!魔獣はいとも容易にシェルスタニア鋼の刀身を噛み砕き・・獰猛に襲い掛かった。

鋭い爪が一閃し、瞬時に身を引いたシンの身体を掠めたかの刹那に彼の腕からみるみる鮮血が滲んだ。

「クソッゥ・・」「ナッセル!!治癒術!!!ウィル、援護をっぅ!!!!」

「うっぅうっぉおおおおおーーーっぅ!!!!」ウィルが精一杯の勇気を振り絞り雄叫びを上げて突進するのを見た獣は背を見せて脱兎の如く駆け出すや否や直後に反転Uターンして電光石火、ウィルに躍りかかった。

追いかけて誘き寄せられた彼が硬直するのを見た私は「ウィル、避けて!!!」

咄嗟にウィルに体当たりをして吹き飛ばすとラグナブレードで魔獣の爪を受けた。

ガキャィンッゥ・・・ギギギ・・・鋭い爪が喰い込むがラグナブレードは私にしか使いこなせない究極の硬さと重さのみを追求した特注品。そう易々と壊される物ではない。

もう片方の前脚が素早く振り下ろされるのをキッィン・・ガキギィィッゥ・・即座に空いていた左腕で腰のラグナブレードを抜き両手で受け応える。

「なんて・・馬鹿力!!!」渾身の力を込めるも震える手は正直で明らかに力負けして劣勢という次の瞬間、ドスドスドスッゥ!!!矢が魔獣の背中に刺さり

「グギャォォオオオオーーーーッゥ!!!」魔獣は突進して私を振り払い逃れた。

「手応え有り!!」魔獣の首根っこにはラグナブレードが突き刺さっていた。

振り払われる一瞬の間に置き土産を仕込んでおいたのだ。だが致命傷では無い。

「大丈夫か!?」駆け付けたマニファンが声を掛けて来る。20人近くの冒険達が大挙して押し寄せて来てガレアスの魔獣を囲んだ。

照明係は4人となり明るさは十分だ。

「ウィル、剣を借りるぞ。」

シンがウィルから剣を取り上げ、私も残った一本のラグナブレードを構える。

「シン、防御に徹するわ・・残った武器で攻撃は危険過ぎる。みんなを守り切れないわ。」

「了解だ。今しばらく火消屋とやらの実力を拝んでみよう。」

「ドルルルッゥグハァアアアアーーーッゥ!!!!」

怒りの魔獣の咆哮が辺りに響く。


「アステラ、行くヨ!!!」青龍牙が合図を出し獣へ突っ走ると赤い眼のエルフが頷き弓を高速連射した。

魔獣は前後左右に跳躍を繰り返し矢を巧みに避けた・・・かと思われたが、外れた矢は次々に上空へ軌道を変え今度は天から降り注いだ。

「追跡矢かっぅ!!!」「高度な技を使うのね・・」感心する私達は防御の姿勢を崩さず傍観する。

ドスッゥドスドスドスッゥ!!!!

複数の矢が刺さり動きが止まったところを「ギャンッゥ!!!」青龍牙が下から腹をレガースで蹴り上げ巨体が宙を舞った。更に彼女は大地を蹴り瞬時に宙へ跳ぶと獣をナックルガードで地面に向かって殴り付けた。ドゥゥンンッゥ・・地に叩きつけられた魔獣が「グワォォオオオッゥ・・」よろめき立ち上がり唸り声を上げる。

「毒矢があまり効かぬ!魔弓を使うぞっぅ!!!一気に勝負を仕掛ける!!!」

「あい!!!」

アステラは矢を3本一度につがえると「ハァァーーッゥ!!!」発声呪文で矢じりの呪符石から呪力を解放し射った。

青龍牙を強敵と見做した獣は彼女から逃げるように距離を置きつつサイドステップを踏んで魔弓を避けてから・・・一直線にアステラの元へと疾風怒濤の勢いで駆け出す。それは迅雷のような速さであった。

「むぅうんっぅ!!!」彼は臆せずにすぐさま矢を射って迎撃する。

魔獣の右目に矢が刺さりジュワァアッゥと蒸発させ、続けざまに天からの追跡矢が尻尾と背中の一部を溶かすも「ギャォォオオオオーーーッゥ!!!!」猛り狂った叫び声を上げながら魔獣はそのままアステラへと突っ込んだ。

エルフの頭部が根本から千切れ飛んで魔弓の最後の一矢がその胴体を貫通する。

「アステラ!!!ちくしょう!!!」

直ちに手負いの魔獣は他のメンバーをも噛み砕き貪り食い吐き捨てた。

「ひぃぃいーーっぅ」恐ろしい光景に数人が走って逃げだすが・・

「ギャァォォオオア゛ア゛ッゥ!!!!」魔獣が突然身震いしたかと思うと

バリバリバリッゥ・・ズドンッゥドンドドンッゥ!!!!!

怒涛の稲妻が連鎖的に駆け巡り・・逃げ出した者もそれ以外も相次いでバタバタと倒れて行く。

「間一髪・・じゃったのぉ・・」接触呪文で避雷針&呪力吸収のダブルを発動させ私達を護ったナッセルが苦々しく笑みを浮かべた。

「ナイス爺さん・・頼りになるわ。」

いつの間にか空高く跳び上がった青龍牙が、襲蹴の態勢で絶叫しながら発声呪文を唱えた。

「ホォォオァァアアアアーーーーッゥ鳳凰滅龍翔天脚!!!!」

怒涛の勢いで降り落ちる彼女の脚をガレアスの魔獣が避けた直後、

ズガァァアアアーーーンッゥ大地が割れ、揺れ動き、地面に半径3トーリアほどの衝突痕が深く刻まれる。シュゥゥーーーッゥ・・辺りに灰塵と煙が立ち込めた。

「チィッゥ・・チョコマカと!神具さえあればコンナ奴!!!」

明らかに彼女は手玉に取られているのがはた目からでも分かる。魔獣は彼女を最後の獲物と決めたようで構わずに他の者を襲い囲いを徐々に削って行く。

悲鳴と殺戮の混乱の中、1人、また1人と惨たらしく喰い殺され・・動揺と恐怖に染まった我々は退くも攻めるも成す術が無かった。

「マズイな・・エリューヴィン、もう片目を潰せる算段はあるか??」

「あったら当にやってるわよ!!!!赤眼のエルフが死んで足止めすら出来ないんじゃ・・天使のアミュレットを荷物の中に置いて来たのが仇となったわね・・アレさえあれば私独りでも・・」後悔するも時すでに遅し、である。

後方から事態を眺めて居たヴェルドラは「フフ、これは酷く・・素晴らしい・・」ペロリと舌なめずりをして心地良い感慨に耽っていた。

「おめえも戦えよっぅ火消屋だろ!?何しに来たんだ!?」レイファンスの怒りに「ハハハッゥ、私は観光案内が仕事ですから!無理言わないで下さいよ!」

ヴェルドラは笑って答える。

「なんだとぉっぅ!?うぎゃぁぁアあっぅ」ガレアスの魔獣がレイファンスの腹を鎧ごと食い千切るとペッゥと吐き捨てた。

「ですから戦いなんて野蛮な行為なんて私には到底無理・・って聞いてます??」彼はレイファンスだった血を吐いて痙攣する遺骸を笑顔のままツンツン弄ってから「ふむ・・何やら体調が悪そうですね・・ではさようなら、ご機嫌よう。」

そのまま見送った。

魔獣は青龍牙を翻弄しつつ相次いでギルドメンバーを思うがままに食い散らかして行き現場は地獄の様相を呈していた。

「駄目だっぅこのままじゃ全滅するぞっぅ!!!」

マニファンが悲痛な叫びを上げる。

「畜生!!この魔獣、ファルギルダイテを再現するつもりだっぅ!!!俺達は死ぬんだっぅ!!!」絶望の淵に立たされた冒険者達の命運は尽きたかに思われた。

「シン、こうなったら破れかぶれで突撃するわよ。」

「ああ・・あの格闘女が生きている間がラストチャンスだな。」

「さあて・・そろそろ良いでしょう。」ヴェルドラの眼がキラッゥキラッゥと燐光を発すると・・ガレアスの魔獣を中心に天空と大地が漆黒に染まり・・赤く発光する巨大な黒いチェーンが勢いよく飛び出して来てあっという間に魔獣を束縛した。

「ガハッゥ・・ガルルルッゥ!!!!」魔獣は力のあらん限り暴れるもチェーンはビクともしない。

ヴェルドラはゆっくり歩いて行き魔獣と相対して宙に横一線、指をなぞった。

「クゥゥ~~ン・・」ガレアスの魔獣がか弱い鳴き声を上げて這いつくばる。

「おう、よしよし・・在るべき世界へ帰りなさい。」ヴェルドラが魔獣の額に手を当てると瞬時に黒い炎が舞い上がり・・それは白い粉となり崩れ去った。

刺さっていた剣や矢が地面に転がり落ちる。私達は唖然としてその光景を見つめていた。

「驚いたな・・」シンが絶句する。

「ええ、暗黒呪文の使い手なんて初めて見たわ。何者かしら・・」

「ふむ・・ルの者と契約でもしておるのか・・凄まじい呪力じゃ。おまけに竜眼と来た。」ナッセルが只者では無いとばかりに語る。同じ呪術士ならではの見解だろう。

「た・・助かった・・」ウィルが緊張の糸が切れたようにその場に崩れ落ちる。

ズクラッドの発声呪文も落ち着きを取り戻したのを感じられて・・

私は大切な仲間が誰一人とて死ななかった事を神に感謝した。「ふぅ・・まさか、生死の瀬戸際に立たされるなんて・・ディールに目が眩んだ罰かしらね。」

「何よいきなりマジになって片付けちゃってサ。本来アステラの仇を討つのはウチだって。」青龍牙がブツブツ文句を言っているが彼女に仕留めれたとは思えない。

「助かったよ・・だが最初からアンタが本気を出して居たら犠牲者は出なかった。何故だ!?」マニファンの怒りの抗議に「・・13人死にました。」ヴェルドラは澄ました顔で応じる。

「だから!?無駄死にだぞっぅ!!!」「・・だからですよ。」「は??」

ヴェルドラは記憶の欠片を取り出すと「・・これを役所に提出しなさい。ディールが欲しいんでしょう??取り分が増えて良かったじゃありませんか・・」さも皮肉そうに語った。


その後・・夜通しで私達は死体を運び埋葬する後始末に追われた。冒険者は保険に入ってるとは言うが大半は身寄りのない単身者、死亡保険が出たところで受け取り手が居なければ何の意味も無い。

「うげえ・・こりゃしばらく肉は喰えねえなぁ・・」ウィルが死体を荷車に乗せながら正直な感想を漏らす。

「こんなにも死人が出る仕事なんて初めてね・・王都が如何に安全か思い知らされたわ。」

「俺は昔・・連邦で野性のドラゴンの討伐隊が全滅した跡を見た事があるが・・」

「へえ?どんな感じだった??」シンの発言に私は興味深く尋ねた。

「黒焦げの死体が散乱していてそれは酷いモノだった・・カラスでさえ食べようとしない。」

「惨いわね・・」

「我らが騎士様、よぉぉーーく聞いておいてくれよ?今度はドラゴン退治とか言い出したら堪ったモンじゃ無いからな。」ウィルの危険予知信号に「言わないわよ、そこまで愚かじゃないわ。」完全否定する。

ドラゴンの恐ろしさは凶悪な爪や吐息だけでなく、その竜眼にもある。訓練された呪術士数名でも命懸けの死闘だろう・・疑う余地もなく我々の手に負える相手じゃない。

「帝国にはドラゴンが居ないからね、安心しておくれよ兄ちゃん。」ズクラッドが噛み砕かれた足をヨイショと持ち上げながら不安を静めるが「甘いな坊主、我らが騎士様は根っからの戦闘狂なんだ。帝国の英雄と戦うって言っても不思議じゃねえくらいのな。」ウィルは私への不信感が拭えないようだ。私を何だと思っているのか・・・

夜が明け墓地に死体を埋葬し終えた私達は冒険者ギルドへと朝日を浴びながら帰還し・・ギルドの片隅で簡素な朝食を頂いた。チーズにパンとスープに水。

「ふぃ~、ようやく一息付けるな・・風呂にでも入って染み付いた血生臭い汚れを洗い流したいところだが・・」そう言うウィルがチーズをつまみながらこちらをチラと見やるも「報奨金を頂くまでここで待機よ。」私は優先事項を強調して断る。

「ギルドとの正式契約じゃないからな・・今ここで受け取らなかったら有耶無耶にされても可笑しくはない。」シンが水を含みながらイマイチ冒険者ギルドは信用が置けぬといった態度を取った。

「アンタの新しい刀剣を購入するのにもディールは必要よね・・」

折角のシェルスタニア鋼の刀剣が、物の見事に噛み砕かれたのは彼にとっても誤算だったに違いない。

「オイラもうクッタクタだよ・・」トロンとした眼でズクラッドは疲労感を露わにパンにパクついている。

「おチビちゃんのおかげで死なずに済んだわ。私達の守護精霊ね。」

「えへへ・・お姉さん厳しい一面もあるけど持ち上げるのも上手いんだね・・」

ズクラッドは褒められて満更でも無さそうだ。

「オッホ、オホン、これこれ・・ワシの活躍を忘れて貰ってはこまるぞい。」

ナッセルが咳払いをしてアピールする。

「もちろんよ、爺さんが居なかったらそれはそれで全滅だったかも。」第13騎士団唯一の呪術士は無くてはならない存在だが同時に曲者でもある。過剰に褒めると調子に乗るので生かさず殺さず扱き使うに限る・・そう思ってると、

カランカラン・・

「青龍牙、アステラの事は忘れなさい・・良い厄介払いが出来たと思えばよろしいでしょう。」

「だってウチの相棒になってクレる人なんてそうそう居ないヨ。困るネ。」

ヴェルドラと青龍牙が入って来た。

「おぉ!!これはこれは!!!」私を一目見るや否やヴェルドラは颯爽と駆け寄って来て私の両手を取り「ミス・ユンフィニス・・麗しき貴方が無事で何よりです!もっとも杞憂に過ぎないとは分かって居ましたが・・それでも万が一の事があればと思うと心が落ち着かず・・私の命に代えてでも貴方を御護りする覚悟でありましたとも!」

「あっそう・・こっちはアンタの顔をもう見なくて済むからせいせいするわ。」

手を突っ撥ねて不機嫌を露わにする。

「まったくもう!いけずなんですから~そんなお茶目なところも実に愛らしい!」ヘラヘラ笑うこのオカッパ頭の男を殴りたくなる衝動を抑えつつ「・・何人死んだと思ってるの??それともアンタにとっては些細な小事だったかしら??」冷たく言い放った。

「いやすみません、貴方のお気に障ったなら謹んでお詫び致します・・・ですが、私なりに全力を尽くした事だけはお忘れなく・・」

「フーン・・にわかには信じ難い話ね・・」冷たい視線を浴びせるも「ハハハッ、よく言われます!他人に嫌われるのは慣れっこですから!しかし・・貴方がいくら私を嫌おうとも・・私が心から貴方を敬愛する気持ちに嘘偽りはありません。永遠に誓いますとも。」全く気にする様子もない。

「ハァ・・」溜息を付く私の意を汲んだのか「なあ・・おめえ我らが騎士様の何処に惚れたんだ??初対面だぜ??」ウィルが目くじらを立てて問いかけた。

「全てです!!その気品溢れる美しさ、透き通るような声、気高き魂の煌めき・・こんな女性はお目にかかったことがありません。」

聞いているコッチが恥ずかしくなるような嘘臭いセリフに吐き気がしてくる。私は頭に手をやり「あぁー・・分かったから放っておいてくれる?」手でシッシッゥと追い払うように安易に近づくなと伝えた。

「またまたぁ~~照れ隠しなさらずとも良いではありませんか!!私は本当の事を言ったまででして・・」

カランカラン・・「みんな!報奨金の35ラディールを受け取れたぞっぅ!!!」マニファンが興奮の声を上げながら駆け込んできた。

「おぉぉ!!」全員が喜びに沸く。悲惨で憂鬱な気分が消し飛んだかのようだ。

そう、皆この為に命を賭けて戦ったのだから。

「あまりにも死人が出過ぎたから報酬は1人当たり2ラディール配当出来る。残りはギルドの蓄財に充てよう。」思わぬ収穫に場が熱狂した。

「イェェエエーーッゥ」「やったな!」「シュゥーーッゥ!」

「本当か!?神よ・・」ギルドメンバーが銘々に歓喜の感情を口にする中、私達も色めき立っていた。

「我らが騎士様よぉ・・2ラディール銀貨は没収とかねえよな??」

「まさか!好きに使ってくれて構わないわ。私が管理するのは騎士団としての財産だけよ。」

「やったね!!!オイラ今回の雇用契約で大儲けだよっぅお姉さん達とパーティー組んで良かったぁ~・・」

「新しい剣が買えるな・・中古だが。」

「ひっひっひ・・帝国産の上質な紙巻き煙草をカートン買いするかのぉ・・」

「みな、まず異論は無いと思うが・・全員の前で示しておきたい事がある。」そう言うとマニファンはヴェルドラの片手を上げて「今回の仕事の一番の功労者だ・・アンタが倒したんだ、特別に4ラディール受け取ってくれ。」

マニファンの申し出に彼は素っ気なく手を払うと「私は結構、その分被害者の保障金に充てて下さい。誰が倒したか?関係ありませんね・・記録には全員で倒したと記載しておきなさい。私は望みが満たされたらそれで十分です。青龍牙、そろそろ帰りましょう。もう用事は済みました。」唖然とする衆目を尻目に踵を返して帰途に付いた。

「ディールも名誉も欲しがらない冒険者だなんて、初めて聞いたわ・・信じられない。」私の呟きに彼はカランカラン・・と扉を開くと「ハッゥ、ディールに名誉!誰がそんなモノを必要とするのです!?今度バン・ガリトゥーレにおいでなさい、最高の珈琲をご馳走しますとも!」

「え!?ちょっと!なんで私が珈琲好きだと知ってるの!?」

「分かりますとも!!!親愛なる私の貴方ですから・・ではご機嫌よう。」笑顔で捨て言葉を残して去って行った。

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