十四章 帝国第一国境~出国
威風堂々とした立派な第11騎士団の詰所を見て・・、ウィルが保存食のサラミをクチャクチャさせながら「凄えな・・これに比べりゃ俺達の詰所はウサギ小屋以下だぜ。」感想を述べる。
「ああ・・4年前のミューンズドヴルメ紛争でランツィ公はここを抜けず中央山脈を挟んで反対側の第二国境から侵攻した。リョース文化圏はリシャーヴ王国の心臓だ。守りを固めるのにも理由がある。」シンが詳しく説明するのを「へー・・でもラガシュ・ロアだって大都市だろ??」と返す。
「ロアまでは広大なヴァルガリュシュの森とカレリア平原がある・・あえて国境ではなくそこで食い止めるのが騎士団の意向なんだろう・・現に4年前の紛争では、それで勝利した。」
「あと連邦からの援軍はリョースロヴナ経由だからね。ロヴナさえ死守していたら勝てるわ・・仮に王都が陥落しても。」私の補足説明にウィルは首をかしげて「・・で、何で4年前は連邦軍は来なかったんだ??」
もっともな疑問に「それは・・帝国本土が無関係だったからかしらね。ミューンズドヴルメはリシャーヴの属国だったから内紛には干渉せず、の立場を貫き通したのかも。」と持論を展開した。
私だって事情を事細かく知れる立場じゃない。
「ほっほっほ・・唯一の誤算は、劣勢を察したランツィが保身の為にミューンズドヴルメを帝国へ献上したという事じゃな。帝国が属州へ据え置いたのも連邦諸国を刺激したくなかったんじゃろうて。」
ナッセルの爺さんは物知りだが、いい加減な言説も多いから話半分だ。
ズクラッドが堅パンをパクパク頬張りながら「帝国にはモグモグ・・最新の呪力で動く飛空艇があるし・・・ゴックン、英雄も居るから連邦軍なんて敵じゃないよ。帝国の繁栄を観たら自明の理さ。」さも当然であるかのように語るが、シンが水を差した。
「・・その帝国は300年前のズクラニア戦争で大敗を喫し英雄も数名戦死したと聞く。連邦を甘く見過ぎた結果だ。その後のズクラニア協定で次元の門は数を制限された・・もう大軍同士で激突する時代ではない。可能性があるとすれば第二次ズクラニア戦争であって双方の次元の門から隔絶されたリシャーヴは蚊帳の外だ。」
そうこう言ってる間に国境が近くなって来た。
「私、ミャウゼン騎士団長へ挨拶に行くから・・手続き済ませたら待っててくれない??」
「どうやら・・その必要性は無さそうだぞ、アレを見ろ。」
シンが指差した先に赤シャツを着込んだミャウゼンが仁王立ちして待ち構えている姿が・・凄い気迫がこの距離からでも伝わって来る。
「こりゃぁァアアあーーーーッゥ!!!!!さっさと来んかぁぁあああーーーっぅ褐色の小娘がっぅ!!!!!」
一際大きな怒声に入出国の手続きをしている周囲の人間が振り返る・・が、あまりのその険しい形相と鋭い眼光にすぐ全員が目を逸らして関わったら負けだと言わんばかりに知らぬフリをした。
誠意を示す為に小走りで駆け寄った私は「遅れて申し訳ありません、第13騎士団ユンフィニス・リア・エリューヴィン以下4名と冒険者1名、出国の為に赴きました。」謝罪しながら報告をするも怒気が収まる気配は無い。
「・・おぬしはワシの胃に穴をあけるつもりか!?帝国が偽装工作を疑って2日前から警備兵を大幅に増員しておるっぅ!!!!ワシ等第11騎士団も2交代制で緊急出動に備えて対処しておるんじゃっぅ!!!!!この極限の緊張状態を解くには通告通りおぬしが出国するしかない・・それを全く分かっとらん!!!!」
「ハッゥ、夜間行軍やガルム調達など全力を尽くしたのですが・・何ぶん馬が用意出来なかったもので・・私の不備不始末で第11騎士団に多大なるご迷惑をお掛けした事を重ね重ねお詫び申し上げます。」
「全力を尽くしたじゃとぉぉおお!?ロヴナでワシのメッセージを受け取ったなら徹夜で走ってこの場に辿り着いてこそじゃっぅそれを今頃になって、こんな昼間にノウノウと・・むぅ!?そこのっぅ!!!何を呑気に喰っとる場合かっぅ!!!」
バシィッゥ!!!強烈な平手打ちが飛び「ぶへぇっぅ・・」
ウィルの口からサラミの欠片が飛び散って私の服にベチャッゥと貼り付いた。
「貴様もっぅ!!!」
今度は鉄拳でズクラッドの脳天を叩き割るかのような一撃を見舞う。
「ぎゃぶゔっぅ!!!」
ズクラッドが涙目で何か言おうとする前に「失礼ながらミャウゼン騎士団長、従者の失態は私の失態です。制裁なら私の身体で存分に奮って下さい。」サラミを払い捨ててながら直言した。
「フン、おぬしを殴ったらワシの拳が砕けるわ・・・もう良い、さっさと手続きを済ませて出国しろっぅ!!!!」
私達は急いで手続きを待つ列に並ぼうとするも、「馬鹿モンっぅ!!!緊急じゃ、貴様等退けっぅ!!!!」ミャウゼンが列に並ぶ人々を強引に押し退けて・・
「おぬしらが最優先じゃ。並ぶ時間なんてあるものか。」と吐き捨てた。
「なっぅなんだよ・・何の権利があって・・」旅行者風の男が抗議したその瞬間、「ああぁ゛!?」両手で胸倉を掴むと軽々と持ち上げブンブン振り回しながら、「貴様ァァアア何の権利があってじゃとぉぉおおおおーーーーっぅ!!!!今すぐブチ殺されてファルギルダイテへ出国したいのか!?違うのか!?貴様の用事など知った事かぁぁあ゛ああーーーーっぅ!!!!!」青筋を立てた鬼のような表情で睨み上げ男がぶくぶく泡を吹いて失神したのを放り捨てると「フンッゥ、屑が身の程を知れ。」屑なのはどっちか甚だ疑問ではあるが要らぬ親切心で事を荒立てるつもりなど無い。
私は名前、身分、出国目的の記帳を済ませると「はい特別入出国許可証よ。そこのホビット以外は全員持ってるわ。」許可証を突き出した。
担当者はしげしげと許可証を眺めながら「なるほど?第13騎士団の騎士・・任務の為に出国・・ご苦労様です。」
ポンとカラスの剥製に手を置き「カッゥ・・カッゥ・・」白目のカラスが奇妙な声を上げた。
「合格。では次の方・・」
全員の記帳と認可が済むのを待ってズクラッドの番になった途端、「冒険者・・・雇用契約上の関係で出国ですか・・出国手数料1ディール20チャリンです。」
手数料を要求されて困った顔をするズクラッドの頭の上から「私が払うわ。雇用主だから問題無いわよね??」私は財布を取り出すとディールを手渡した。
「もちろんです。雇用関係がある間柄なら代理でのお支払いは認めれますので・・」担当者はいそいそと記帳の写筆をしながらカラスの剥製に手を置き・・「カァーーッゥ」・・カラスの目が真っ赤に染まり不気味な鳴き声を出した。
「このホビットは薬物を持っていますね。出して下さい。」
「えぇ!?おチビちゃん・・本当??」
ズクラッドは一瞬躊躇してから「へへ・・バレちゃったか・・」
ポケットに手を入れると小袋を取り出して「これで全部・・あくまで個人使用目的だよ。」と用途を強調する。
「第二種覚醒剤ビヨンドヘヴン・・量は30トピア・・密輸罪には問いませんが・・・」担当者はズクラッドを蔑みの目で見ながら「罰金14ディールを支払い下さい。」淡々と無慈悲な要求を下した。
「えぇぇ!?冒険者ギルドじゃ誰もが持ってるよ、そんなに罰金必要なの!?」
ごねるズクラッドに私は少し苛つきながらチラリと背後を見やった。
憤怒の顔をしたミャウゼンが私達に鋭い目線を向けている・・・
「仕方ないわね・・はい14ディール。もうこれ以上は知らないから。」叩くようにディールを置くと「さあ、みんな行くわよ。帝国の入国手続きが待ってるんだから。」怒りを滲ませた声を張り上げた。ったく冗談じゃない・・・よりによって、こんな人材を掴まされるとは。
「坊主・・おめえ薬物中毒者だったのか・・」ズクラッドの意外な一面にウィルは少し気を動転させながら声を掛ける。
「ちょっと元気の前借りしてるだけさ。今日日珍しくもないよ。」平気な顔をして答えるが騎士団では薬物なんて御法度だ。関わりたくもない。
「帝国では薬物中毒者が蔓延している・・手を染めたのがいつかは知らんがリシャーヴでは自重しておくのだな。」シンが一定の理解を示しつつも警告を発した。
「そうとも。ワシ等従者であったとしたら一発でクビじゃ。冒険者ギルドはその点甘いのう。」ナッセルも同調する。
王都の治安を護る仕事柄、薬物依存症の犯罪者を検挙する事もあるが総じて彼等は精神的異常が見られ正常な思考力は欠如していた。遅かれ早かれズクラッドも似たような道を歩むのだろう。今この場で私が所持薬物を取り上げたとしても何の解決にもならない。彼自身が根本から考えを改めなければ無意味だ。そして・・それが難しい事も知っている。
私達は数十トーリア離れた帝国側の入出国管理局まで出向き「入国手続きに来たわ、良いかしら?」と小屋に座っている初老の女性に声を掛けた。
「ようこそミューンズドヴルメへ・・歓迎しますわ。どうぞご記帳下さいませ。」
「はいはい、帝国領になっても相変わらず紙とペンなのね・・」
羽ペンで名前、身分、入国目的を記して手渡すと担当女性は目を見開いて「これはこれは・・リシャーヴ王国の騎士様ですね、お待ちしておりました。入国手数料は不要です。身体検査も不要・・従者様達もお名前だけ記入して下されば結構です。クィエック、案内して。太守が歓迎する賓客だよ。」と隣の衛兵に指示を飛ばす。
「ハッゥ、ご記帳済みましたらすぐにご案内致します。」敬礼をする衛兵を尻目に記帳しながら「なんだか待遇が良いな・・これで敵対国かよ。」ウィルが疑念の声を漏らすが「それだけランツィ公が気にかけてくれてるって事だ。・・・ところで書くの遅いぞ。」シンの見解と催促に「うるせえ俺は文字が書けねえんだ、自分の名前だって何を書いてんだかよく分かんねえ必死なんだよ。」羽ペンをゴチャゴチャに操りながら吐き捨てる。
全員分の記帳が済むと、「どうぞこちらへ・・通告通りの御入国に感謝致します。太守もお喜びでしょう。」衛兵が丁寧な物言いで我々を先導した。
「何処へ行くんだろうな?」
「さあ・・馬車を用意してるって聞いたけど・・」
「この人数で乗れるんじゃろか??」
「こんな辺鄙な場所まで馬車を手配するとは大歓迎だな。」
口々に適当な会話をしつつ通りを曲がると見るも豪華な白金の装飾が施された2人乗りの4輪馬車が3台並んでいた。周囲には警護だろうか・・儀仗用の装飾が施された槍を構えた騎馬兵が並んでいる。
「はえ~すっげえ・・」「これは・・」私達はたちまち絶句する。
「報告!太守の賓客であるリシャーヴ王国の騎士様をお連れしました。」
「うむ。」隊長らしき人物が丁重に一礼をすると「お待ちしておりました、馬車を用意しております。どうぞお乗り下さい・・」恭しく手招きをした。
「・・人違いではなくて??」私の問いに「ユンフィニス・リア・エリューヴィン様御一行は国賓待遇で招くよう英雄ランツィ公から命令されております。」間違いなく私達だと即答する。
「こ、国賓待遇!?」
「はは・・嘘だろ??俺達が帝国の国賓だって??こりゃ明日は竜の歯が降って来るぞ。」ウィルの冗談めかした笑いに私こそがそのセリフを言いたいのだと心の中で叫ぶ。
「エリューヴィン、任務成功の兆しが見えたな・・お前さんのコネは今でも抜群に効いている。」シンが太鼓判を押した。
確かに・・ランツィが帝国の英雄となったのは初耳だが私との絆が失われていないのは任務遂行の為だけではなく個人的にも嬉しかった。
「ほっほっほ・・ランツィの奴めの顔を久々に拝んでみるとするかのう・・ワシ等を裏切ったその仮面が素顔に戻るか見物じゃわい。」
「ちょっと爺さん、変な気を起こさないでよね。そこそこ仲が良かったのは知ってるけど。」
「オイラも国賓待遇で良いのかな??なんだか悪いなぁ・・お姉さん、ランツィ公との腐れ縁って・・どんな縁??」ズクラッドが興味津々に聞いて来る。答えないワケにもいかないか。
「・・・ランツィはね、私の養父だったの。実の親子じゃないけど・・家族も同然だったわ。今でもそう思ってる。」
「うわおっぅ・・凄い話だなぁ・・」
隊長らしき人物が近寄って申し訳なさそうに「お話のところ失礼ですが・・ささ、州都レアウルスへしばらく時間が掛かりますがどうぞお乗り下さい。」と再度促した。
「そうねぇ・・折角だから私はシンと一緒に乗るわ・・アンタ達残りの2台で好きにして頂戴。」
「へいへい、おめえはシンがお気に入りだもんな。」当てつけがましくブー垂れるウィルに私は怒りを露わに突っ撥ねた。
「勘違いしないでね、静かに小説を読みたいだけよ。アンタと一緒だったら騒がしくてかなわないわ。さ、シン乗りましょ。」
「ああ・・馬車で小説は酔うんじゃないか??」「その時はその時よ。」
こうして私とシンは馬車へ飛び乗ると後方でウィルが「よーし俺等3人で乗ろうぜ、坊主は小さいから収まるだろうよ!!!」元気よく仕切っている。少々冷たくあしらっても気にしない性質だ。性格が良いというか馬鹿というか・・
「・・ところで煙草は吸えるかい??」
「車内禁煙となっております、ご容赦下さいませ。」
カラッゥカラッゥカラッゥ・・・馬車が景気よく走り出し、私は小説を取り出すと夢中で読み耽った。
「ヤァァーーハッハッハ!!!」ギルヴェリアが白金の弓で城壁の敵兵士を次々に狙い撃ちにして叩き落して行く。「ハッゥ、この私と弓矢の撃ち合いをしようなどとっぅ!!!身の程知らずがっぅ!!!!」
恐れをなした敵兵は城壁の影に隠れるが「エルフの神々よ!私に弓の匠たる資格を授けたもう・・この腕が切り落とされるその時までの限り!!!」
発声呪文のダブルで空間反射のヘキサグラムを城壁の斜め上に展開し「百里眼からは決して逃れられない!!!!」次々に彼女の手から撃ち出される矢が空間反射して隅々まで兵士の頭上に降り注ぐ。ギルヴェリアの本領発揮だ。
「ウルァァアアアーーーッゥ!!!!」ヴァルザックが金剛の戦斧を振るい城門がかんぬきごと真っ二つに割れて雄々しい雄叫びと共に軍勢が雪崩れ込んだ。
直後、轟音と共に軍勢が塵尻に吹き飛ばされて巨大な光り輝く天使が明滅しながら開いた城門から姿を現す。
「ティストレテの守護天使だわっぅ!!!!ルアオッドっぅ!!!!」
「ああ、俺達の出番だな。久々に天使を狩るとしよう。」
「ヤァァーーハッハッ!!!」ギルヴェリアの弓が天使の目を狙うが・・ブワァァアアーーッゥ!!!!凄まじい風圧により矢は歪曲して彼方へ飛び去った。
ゴゥゥゥウウウーーーーッゥ天使の口から業火の炎が激しく流れ噴き出て帝国軍の兵士が瞬時に炭化してボロボロと崩れ落ちて行く。
「四大精霊使いの天使かっぅ!!!」俺は光輪の絶牙を抜くと一閃した。
天使の首が横一線に断ち切られ斜めにずり落ちるかと思われたその瞬間、ググググッゥ・・ジュウジュウジュウ・・驚異的な治癒呪文で首は繋がりを取り戻しその目がギョロリとこちらを向く。そのまま指先を真っ直ぐ構えて・・
「来るぞっぅ!!!!」即座に竜眼で障壁を4重に張った直後、水のレーザーが指先から怒涛の勢いで発射された。凄まじい水圧に障壁が斬り刻まれて消滅するのを見て「避けろっぅ!!!」俺とギルヴェリアは左右へ飛び退ける。
キュヴァァアアアアーーーーーッゥ!!!!強烈な超高圧水が障壁を貫通し背後に溢れ流れ出た。
「手強い天使ね!でも私達の敵じゃないっぅ!!!」
「ふんぬぉおおおーーーーッゥ!!!!」
ゴゥゥウンンッゥ・・ヴァルザックの戦斧が天使の片足を両断した。
膝を突き姿勢を崩した天使に、ギルヴェリアの秘奥義である重力呪文と空間呪文の二重詠唱で生み出された無数の漆黒の球体が吸い込まれるように着弾していき・・ガウゥゥンッゥガウガウゥゥウウウンンッゥ!!!!!空間ごと天使の身体を次々に抉り、削り取り、対消滅して行った。
穴だらけになった巨大な天使は崩れ落ちつつも口から炎を吐き出し応戦の姿勢を見せる。
「しぶといなっぅだがしかしっぅ!!!!ルの者よっぅ我は命ずる、冥府の契約において汝の力を今一度現世に知らしめよっぅさすれば我は死後ファルギルダイテに英雄として赴かんっぅ!!!!」
俺はル・ロワイェ・アクラサタマテアの呪文を発動させた。
宙に直径100トーリアはあろうかオクタグラムの刻印が光輝燦然と明滅し・・・呪力を極限まで振り絞りそれでも序列7位の高位悪魔アクラサタマテアを召喚するにはあまりにも膨大な呪力を必要とする為に不十分であったが・・
ズゥゥオォオォオオオ・・・・真っ赤に染まる一際巨大かつ不気味で恐ろしい手がオクタグラムからドシャッゥと地を突き出現するとそれは天使をガッシリ掴みバキバキバキメキャッゥ・・ガッシャァアアーーーンッゥいとも容易く粉々に粉砕した。
黄金色の輝きと共に天使の破片が消失して行く。
悪魔の手は地上へ這い出ようと試みるも、オクタグラムの消滅を察知して冥界へと去って行った。強大なルの者を完全体として地上へ召喚するのはリスクが伴う。彼等は喜んで現世でファルギルダイテを再現するだろう。それは望むところではない。
「ルアオッド、あれ!見てっぅ!!!」
天守閣に白旗が掲げられているのが見えた。
「これで・・ティストレテは陥落したな。この地は帝国になる。」
「畜生め、ワシの髭が燃えてしまったぞい・・・」ヴァルザックが焦げた髭を大事そうに撫でながら悪態を付く。
「ねえ、私達はこの7年でどんなに帝国に貢献したか・・皇帝も思い知った頃じゃない??私達の力量と働きを。そろそろ貴方の言う対等なパートナーシップとやらを求める頃合いじゃないかしら。」
ギルヴェリアの提案に「そうだな・・帝国における我々の声望は皇帝のそれに匹敵するほど高まっている。生身の彼と本音で語り合う時かも知れん。俺の理想をぶつけてみたい。帝国の制度は悪くないが・・不十分だ。」
「ワシは皇帝がどっち向こうがどうでも良いわ。お主が独りで存分に語り合ってくれ。」ヴァルザックの意見に「そうねぇ・・私も皇帝には興味無いわ。興味あるのはルアオッド、貴方の決断と意向よ。貴方が皇帝と対等に話し合えたらそれで満足かしらね。」ギルヴェリアも同意した。




