十二章 ダイアモンドの騎士
本陣・・にてベナズグリードは苛立っていた。
「予備のゴーレムを全て投入しろっぅどうなってる!?ワシのゴーレムが役に立っておらぬではないかっぅ突破出来ぬ戦力ではあるまいにっぅ!!!!」怒りに任せて護衛のゴーレムを拳で殴り「クソッゥ木偶の坊がっぅ」忌々しく叫ぶ。
その時背中に矢を受けた観測兵がよろめきながら駆け寄って来た。
「報告!!!悪鬼の如き強さを持つファルナジアの騎士により前線のゴーレム部隊が損耗激しく継戦能力を著しく低下させつつありっぅ!!!!このままでは突破される可能性があります!!!」
報告を受けたベナズグリードは「ほっほう??出てきたか・・なるほど。なるほどのう。」
待っていたとばかりに満面の笑みを浮かべて「人に化けた悪魔か天使か・・・??よかろう、ワシのディアスディアレを用意しろ。出撃する。」指示を出すとその場を後にした。
空中を疾走し急いで本陣へ向かったルアオッド達はすぐに異変に気が付いた。
「ねえっぅアレっぅ!!!」一際目立つ巨大な岩のようなゴーレムが起動して動き出しているのが眼下に見える。
「これは!?ディアスディアレ・・!?」
「驚いたのう・・よもやドワーフの英知の結晶をこのようなところでお目に掛かれるとは・・」ヴァルザックが感嘆の声を上げる。
「へえ、あれがかの有名なラヴァニラロクを守っていたという門番??でも貴方が破壊したんでしょ??」
「いや・・これは改良型だな。俺が昔に相対した奴とは全くの別物だ。」
これが最終兵器であろうことは誰の目にも明らかだった。
コクピットに乗り込んだベナズグリードは各動作を確認しながら感慨深げに呟く。「設計から開発完了まで30年・・ワシの半生を掛けたが・・とうとう晴れ舞台か。陛下の期待に応えねばなるまいて。む!?」
開いたハッチにルアオッドが降り立った。「ベナズグリード!!!敵は・・伝説のダイアモンドの騎士だ。我々の力を結集させて挑まなければ勝てない。」
その説得にベナズグリードは「ハッゥ」と一瞥し「伝説か何か知らんがミスリルで創造されしワシの最高傑作ディアスディアレmkⅢは神の化身じゃ。まぁ見とれ・・・」
「呪力充填率95%!!!いつでも出撃可能ですっぅ!!!!」
「ようし、ハッチを閉める。呪力供給ケーブルを外せ。出るぞっぅ!!!!」
バチッゥバチンッゥ繋がれたケーブルが外れ、呪力の力によりゴォォオオオッゥと浮かび上がる。
ドガァッゥ・・バコォォーーン・・・次々に鋼のゴーレムを弾き飛ばしながら銀色に輝くディアスディアレは突進していった。
「行ってしまったのう・・さてどうする??」ヴァルザックがディアスディアレの噴射する呪力の光跡を眺めながら問いかける。
「追いかけよう。勝てるなら問題無いが・・少し不安だ。」
「ミスリル製のあんな巨大なゴーレムを動かすなんて強大な呪力よね・・どうしてドワーフって真面目にイカれた物作りをするのかしら。」ギルヴェリアが呆れた顔で嫌味とも称賛とも付かぬ言葉を吐く。
「じゃが想像以上の最終兵器で安心したぞ。大したものだ。」ヴァルザックの安堵の声に心から同意しつつも「よし、行こう。加勢する。」不安は拭えなかった。
ザシュザシュッゥ・・キィンッゥ衝撃波を発しながら鋼のゴーレムを蹴散らし淡々と前進するダイアモンドの騎士に超高速で接近したディアスディアレは不意打ちを仕掛け真正面からドグォオッゥ・・と激突した。
遥か後方の空中に舞い上がった騎士は、ギュルギュルギュルッゥと回転して体勢を立て直しザァーッゥと滑りながら着地して新たな敵と相対する。
「待たせたのう・・くっくっぅ・・」コクピットの中でベナズグリードは舌なめずりをして照準を合わせた。
キュンッゥキュンキュンキュンッゥ両肩のツインキャノンから呪力の弾丸が射出される・・数多の呪術士の労力の結晶が惜しげもなく連射されるのを騎士は飛び跳ねながら回避し更にはその剣で受けてガンッゥガキッィッン次々に弾いた。
ベナズグリードは撃ち続けながらも「ふむぅ・・やるのう並大抵の敵ではないわ。呪力充填率90%・・」
ガチャンッゥレバーアクションをして続けざまに射出する。
キュンキュンキュンッゥ接近戦を挑もうと距離を詰めながら、尚も剣で弾く騎士はしかしすぐ違和感に気が付き足を止めた。
「!!!」その剣から籠手にかけて氷が貼り付き凍結している。
「氷結弾は初めてか・・そうとも、そうとも・・・」キュンッゥキュンキュンッゥ氷結弾の雨あられを騎士は避けようとするが剣を振ろうとするにもその動きは鈍く完全に凍り付いていた為に次々と着弾していく。
更に足元に複数回狙い撃ちされて完全に動きが止まる。
「ヒッヒッヒ・・どうじゃ、足を止めたぞ・・」ガチャンッゥレバーアクションをしてミスリル弾を装填した。
ボワウッゥ途端に爆炎が視界を遮り辺り一面火の海となる。
「なるほど?貴様も呪術士かっぅ竜眼・・しかもダブル以上と見たっぅ」
キュンキュンッゥ狙いはそのままにミスリル弾を撃ち込むが手応えが無い。
ズゥオッゥ!燃え広がる地上を蹴って空高くツインキャノンの死角に飛び掛かったダイアモンドの騎士が剣を振り下ろす。
「上かっぅ!!!」ガシャァッンン!!!!ディアスディアレの右腕に内臓されたミスリルソードが瞬時に展開し攻撃を受け止めた。
ザクッゥ・・グムムム・・ダイアモンドの剣がミスリルソードに食い込むが途中で止まる。
「!!!」ドガンッゥ左腕のアームパンチで騎士は横へ吹き飛んだ。
「ほっほう、ミスリルを斬り刻むとは面白いっぅ!!!!」
その時一斉に遠巻きのファルナジアの兵が弓を射った。矢の雨が降り注ぎ、コツンコツンとディアスディアレの装甲に弾かれていく。
「それで援護のつもりか!!よかろうまとめて焼き払ってくれるわっぅ」
カシュッゥと胴体下部が開きギュンギュンギュンと不気味な唸りと共に呪力が増強され・・ズゥオッゥ!!!巨大な青い奔流がほとばしりファルナジア兵を薙いだ。
レーザーの軌跡の後には・・何もかも蒸発してまるで存在は許されないかのように無となる。
「!!!」
ここにきてダイアモンドの騎士は悟った。このままでは勝てないのだと。
彼は立ち上がり一瞬全身が黄金色に発光したかと思うと赤い明滅を繰り返し全ての武具が黒と黄色の禍々しい造形へと変化していく。まるで悪魔のようであり同時に天使のようでもあった。それらは赤いオーラを身に纏っている。
「正体を現しおったな、天使の力と悪魔の力を併せ持つか・・充填率45%・・」
即座に溢れ出る青い奔流を変形したダイアモンドの騎士へと向けた。その瞬間、騎士の両肩から赤い閃光が走りディアスディアレのレーザーを受け止め逆に押し流した。
ベナズグリードは目前へと迫った赤い輝きに目を見張り驚きつつも「くっぅ・・・出力全開じゃっぅ!!!」スロットルを踏み込むと呪力を更に増強させ押し返そうとする。
バチバチバチッゥ・・・青と赤の呪力レーザーが対消滅しつつ拮抗するや否や・・ダイアモンドの騎士は横へ飛び抜け回避行動をとった。呪力の色が混ざった濁流が宙を駆け巡る。
「ふっふっ、流石にこの呪術士数百人分のディアスディアレには力負けする・・」突然真っ赤なオーラの剣先が100トーリア程は伸びたかと思うとブォォオンッゥブゥゥンッゥ乱雑に振り回され「ばっぅ・・馬鹿な・・っぅ」ディアスディアレの左腕と左足は切断され支点を失いドォォンッゥと擱座した。
ジュゥゥウーーーッゥ切断の痕跡からは溶岩のように赤い蒸発が立ち込めていた。
勝利を確信したダイアモンドの騎士がゆっくりと歩いて来る。
「呪力充填率・・9%・・か、相討ちを狙うしかあるまい。ワシの最高傑作が・・よもやこのようなところで・・・」
ギャルギャルギャルッゥ突如漆黒の球体が地面を抉りながら騎士に肉薄した。
「!!!」高速でステップを踏んだその瞬間に避けられ・・・たかに見えたが目標を追尾した球体は放物線を描きながら戻って来る。更に追加で別の球体が斜め後方から迫る。
赤と黄金の煌めきと共に疾走するダイアモンド騎士の回避行動でガァゥゥウンッゥ!!!ガウガウゥゥウンッゥ!!!!黒い球体同士は激突し退けられ空間を削り取って消滅した。
直後にガカッゥ・・小さな戦斧が肩に突き刺さった。ドコッゥドコンッゥドゴォォンッゥ次々に爆裂の渦が連鎖し渦中の騎士をズタズタにする。
「やったか!?」「チィッゥ・・浅いっぅ致命傷じゃないぞっぅ」ヴァルザックが舌打ちをしながら怒鳴り「動きが速すぎるわっぅ」ギルヴェリアが悲鳴混じりの声を上げる。
「ならばっぅ!!!既に準備は出来ている!!!」
星屑の剣を大地に突き刺し呪力を解放すると周囲の砂粒と共に我々は浮き上がった。対象を限定とし1000倍の重力を叩き込む。
ギュォォオンッゥ・・ギュォォオエェェーーーッゥ悪魔のような咆哮と共に・・・ビリビリビリッゥ・・・空間が歪み、変形しながらもダイアモンドの騎士は耐えていた。
「何!?この高重力下に耐える奴だとっぅ!?」「そんなっぅ!!!」絶望に似たギルヴェリアの叫びは我々の限界を示していた。
禍々しい黄色と赤の武具はボロボロに崩れながらも尚も輝きを増し・・・彼は重力から解き放たれ生還した。
「う゛るぁ゛ぁああああーーーーーっぅ!!!」ドグゥァァアアアーーッゥ巨大化した金剛の戦斧が直撃した。
粉塵の舞い上がる中、グググッゥ・・ダイアモンドの騎士は片手で斧を受け止め、赤いオーラの剣をブン・・ヴッゥウン・・と振り回すと金剛の戦斧はバラバラとなり崩れ落ちる。
「ワシの斧がっぅ畜生めっぅ」
「!!!」ビュバッゥ・・
咄嗟に飛びのいた騎士のオーラの残光を光輪の絶牙の軌跡がなぞる。
「クッゥ・・警戒心の強い奴だ。」空振りに終わったがパターンは掴んだ。動きが直線的過ぎる・・・
「むぅぅんっぅ!!!!」
オクタの竜眼をフル活動させ対象の八方向から空間転移のヘキサグラムを展開し・・光輪の絶牙を次々に叩き込むと同時にヴァルザックが合わせて爆裂の小斧を4つ投げ飛ばす。
ドゴォッゥドォォオンッゥ「手応えありじゃっぅ!!!」
「いや、まだだっぅ天使だろうと悪魔であろうとっぅ!!!」ダブルの発声呪文でラ・マキナニム・ヘヴランデの呪術印字と、ル・ロワウ・ガラリア・アハリアンの宝剣を発動させる。
ダイアモンドの騎士を中心に半径30トーリアが天使の呪縛の印字範囲となりそれは光り輝き彼を束縛した。そして地が割れ大気が渦状に引き裂かれ、吸い込まれて行き・・地獄の底からかつて比類なき力を誇った魔の宝剣が姿を現す。
「ルアオッドよ禁呪を使うのか!?」「使わざるを得ん!!!」
ヴァルザックに有無を言わさず暗黒の波動を放つ宝剣へ詠唱を開始した。
「ルの者よ!我こそはここに在り・・・冥府の契約により天を打ち破りしその力を我に授けよ然らずんば大地は魔族の権勢と畏怖に満ち溢れ終末戦争の暁には勝利を共に分かち合うであろうっぅ!!!!」
ズォォオオッゥ・・次々にルの眷属が呼びかけに応じ爆発的な呪力が宝剣に注ぎ込まれる・・天使の呪縛の鎖がダイアモンドの騎士を宙高く舞い上げたのを機に間髪入れずその力を解き放つ。
悪魔の宝剣が牙を剥いた。
暗黒の多次元結晶が空間を切り裂きながら膨張し天を駆け上った。圧倒的な魔力の放出に耐えかねた天空は部分的に崩壊し暗闇となり大地は激動隆起し大気が凄まじい勢いでギュルギュルと伸縮しながら渦を巻く光景に「す・・凄い・・」ギルヴェリアが息を呑む。
天使と悪魔の禁呪が混じり合ったその瞬間、カッゥ・・ギャワァァアアーーーッゥ眩い光と暗黒が二重螺旋のように煌めき輝いて縮退した後に大爆発を引き起こした。
ズゥゥゥン・・・天空を光と闇の連鎖が波打ち広がる。ダイアモンドの騎士だった何かがドシャッゥと地に墜ちる。
「俺は・・そろそろ呪力が尽きる・・・」
「ワシも手持ちの武器はもう残っとらんぞ・・」
「・・・・」ギルヴェリアも黙って立ち尽くしている。
「!」瞬時に赤いオーラの閃光が煌めいた。星屑の剣に呪力を込めて間一髪、周囲の時空を歪めた直後に空と大地が真っ赤に染まり圧倒的な呪力の奔流がルアオッドを直撃した。
ダイアモンドの騎士は未だ健在だったのだ。濛々と立ち込める黒煙の中心から呪力レーザーを発射した両肩をジュウジュウ唸らせながら前進するその姿が現れ、それは異様に禍々しく・・悪夢を見ているようだった。兜は欠けており鎧はところどころ割れていて爆裂の小斧が至る所に刺さっていた。満身創痍ながらも戦意が衰える気配はまるで無い。
真っ赤なオーラの剣先が一気に伸びブォンッゥブゥゥンッゥと数振り宙を薙いだ・・・が、歪んた時空の果てに存在するルアオッドには当たらない。
「・・・??」ダイアモンドの騎士は不思議そうに顔を傾げる。
今まで出会って来た敵とは違う・・・そう認識しているようだった。
「やれやれ俺をターゲットにしてくれて助かったな・・」ヴァルザックとギルヴェリアの身を案じつつ打開策を思案する。星屑の剣から呪力が喪失され歪んだ時空は再び周囲と同一した。
接近するのは危険と判断したのかダイアモンドの騎士は歩みを止めて、両手を天に突くと不気味な唸り声を発する。
途端にヘキサグラムがルアオッドの周囲に次々と展開していく。
「何!?まさか・・っぅコイツっぅ!!!」慌てて接触呪文で身体に障壁を張ったが呪力は既に限界に達していた。
四方八方から呪力レーザーが乱拡散する。張られた厚い障壁が、ページを捲る様に切り裂かれて行き・・・ドコンッゥ・・爆裂の小斧が横腹付近で炸裂した。
「うぐぅあっぅ」
膝を付き片手で代謝機能の促進を試みるも完治する前に呪力は事切れた。
やや警戒しながらもダイアモンドの騎士はサイドステップを踏みつつ接近してくる。トドメを刺すつもりだろう・・
「くっぅ・・お手上げだな。この世界にこんな奴が居たとは・・」
「ヤァーーッゥハッハッ!!!」カンッゥキィィンッゥ状況を察したギルヴェリアが必死に百里眼を発動させ矢を放つがまるで効かない。
禍々しい騎士はギルヴェリアに振り返るとブッゥオオン・・・剣先が赤いオーラを伸ばした。
「エルフの神々よ・・私をその主の元へ導きたもう・・」
「やめろぉっぉおおーーーっぅ!!!」
ギャルルッゥガァゥゥウンッゥ!!!叫んだ瞬間に地中から漆黒の球体が出現するとダイアモンドの騎士の至近距離で炸裂した。
「ハァハァ・・私を・・舐めないでくれる??」
鎧が抉れた騎士はその黄金と赤の輝きのオーラを失うと、禍々しい武具は色褪せて行き・・ただのダイアモンドへと戻った。
「これで・・お互いに呪力切れか・・・」問いかけたが返答は無い。
俺もヴァルザックもギルヴェリアも余力は無い。だが戦わねば。
ダイアモンドの騎士は剣を構えると初めて手振りでその意思を露わにした。
「掛かって来い・・・か、そうやって生きてきたんだな・・俺には分かる、貴様は敗北を知らない。いや勝利の味を噛み締める為に闘ってきた男だ・・俺も同じだと思っていたが・・・どうやら勘違いだったようだ。」
「・・・・」返答は無い。死への恐怖などもはや無かった。大事な仲間を守る為に死んでも倒さねば・・・
その一縷な望みを託して光輪の絶牙を抜いたその瞬間、ズガァァーーンッゥ!!!轟音と共にダイアモンドの騎士の頭部は兜ごと砕け散り力が抜けたかのように胴体がその場へと崩れ落ちた。
「呪力充填率0%・・・最後の一撃じゃったな。」振り向くと倒れたディアスディアレの右腕が真っ直ぐこちらへ向いておりミスリルソードを超高速で射出した呪力の燃えカスがシュゥゥーーと漏れ出ていた。
ダイアモンドの武具が最期の輝きと共に消失していく。
「ルアオッド!!!無事で良かった・・・」ギルヴェリアが駆け寄って来る。
「ああ、助けられたな。初めての敗北の味にしては苦々しいがくどくはなかった・・」
「やれやれじゃのう・・・ワシの金剛の戦斧は役に立たんかったぞ。伝説の勇者とやらはここまでのモノか。」ヴァルザックが死体を眺めながら唾を吐く。
かつてディアスディアレの強固さを身を以って知っていた仲だからこそこの勝利が奇跡的だった事を我々は理解していた。
「貴公等、無事か!?」セス卿が馬を駆けてやって来た。
「ファルナジアの軍勢は退却して行ったぞ。敵は切り札を失って戦意を喪失したようだ。ところで貴公ら、酷い有様だな・・・」
「ああ・・ちょっとしたハプニングだ。セス、君が居てくれたから後顧の憂い無く闘えた。礼を言う。」
「・・・貴公等は知らんだろうが・・この悪鬼たる騎士は、かつて皇帝陛下がその御身で成敗を試みて討ち漏らした宿敵であったのだ。よく倒せたモノだ。」
「皇帝は何故今回出陣しなかったの??あともう少しで・・私達死ぬところだった・・」ギルヴェリアが怒りに震えながら小声で呟く。
「ギルヴェリア、ナルルカティアにとって皇帝は唯一無二だが我々は替えが利く。所詮英雄とは名ばかりで捨て駒にされる危険性を考慮出来なかった俺の落ち度だ。責めるなら俺を責めろ。」
「本気で言ってる??」
「ああ、帝国に来たのも英雄になったのも俺の身勝手だからな。その上で皇帝が我々をどう扱うのか・・見通しが甘かった。」
「ルアオッドよ・・ワシ等のリーダーはお主じゃ。お主がそうまでして皇帝に忠誠を誓うのなら仕方あるまい。」
「・・・そうね、ヴァルザックの言う通りかも。皇帝への不信感は拭えないけど・・貴方を責めるだなんてそんな気は全く無いわ。貴方だからこそ生きる喜びも惨めな死を迎える時も共にすると誓った。本望よ。」
黙って様子を窺っていたセス卿が「よろしいか?軍を再編成する為に一旦後退しよう。皇帝陛下への侮蔑な発言は聞かなかった事にしておく。あまりに度が過ぎるようでは我も放ってはおけぬ故に重々慎んでくれ。」




