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0.悪党の夜

初投稿になります。

 誤字脱字、表現の稚拙差等々かなり多くあると思いますが、ご指摘等いただけらと思います。

 立ち籠める紫煙、キツイ酒の匂い、ステージで踊る演者を横目に客は賭け事を楽しむ、勝った負けたの一喜一憂、薄暗くそれでいて怪しい木造の店内。


 賑わう欲の坩堝の隅っこ、ステージ照らすスポットライトの灯りが届かないバーカウンター、そこで女は傾けたグラスを静かに置いて、深くため息を吐いた。


「どしたの?随分と辛気臭いじゃない」


 ワッ!と店内が沸いた、演者の女性がステージ上で下着を脱ぎ捨てた事で沸き起こった歓声だった。


「そりゃまぁ…ここんところ帝国と王国のドンパチが激化してますし」


 女は歓声を尻目にそう言ってから、またため息をつく。

 うん、とその女に相槌を打って、そっかとどこか他人事な少女はカウンターに肘をついた。


 この店に似つかわしくない赤い和服、小紋と呼ばれるものだそれを身にした、黒長い髪の綺麗な少女はそれで?と続きを促した。


「仕事ですよ、大国の喧嘩となれば涎垂らして喜ぶのは、貴女達みたいな悪党です、忙しいんですよ今」

「アー、そういう事?まぁ…確かに、儲け出てるからねー」


 女曰く、悪党であるその少女は悪怯れもしないで、お猪口に入った酒を流す、そんな少女の様子を見て女は今一度ため息を吐いた。


「今や心は法なんて無ですよ、人の命は家畜同様、チリにゴミに等しい、あー!ヤダヤダ‥」

「何?それ、嫌味?」

「嫌味ですよ、で?最近調子は?良いの捕まえましたか?奴隷商人さん?」

「別にー、儲けはあるけど特にこれと言ってよ?面はまぁ…及第点、スタイルもまぁまぁ好まれはするってぐらい」


 聞いておいてだが、女はあまりその話に興味はないようでつまらなさそうに酒を傾け、ハァーとため息一つ。


「そーですか、まぁ…そんな景気は良くないようですね、それだと…まだ貴族、王族には手出ししてないと?」

「まだよ、もう少し疲弊したところで掻っ攫う、てか何?リクエストかしら?欲しいの居るの?」


 金の匂いがした、ニタッと笑う少女にまさか!と女は嘲笑しながら答える。

 手にした空のグラス傾け、中身が無いことに気がついた女はバーテンダーにグラスを差し出した。


「まぁ、もしリクエストができるなら、貴女が欲しいですね、何よりも金を生む、最高の家畜ですからね」

「ハーン?高いわよ?私、大国五つ分用意しな」

「無理ですね、まぁ…それだけの見返りはありますけど…諦めますよ」

「でしょうねー、マスター!私も清酒貰えるかしら?」


 少女のお猪口も空、酒を頼み手にしたお猪口に酒を注いでもらい少女は一気に傾けた、そしてもういっぱいとまた手を伸ばす、そんな様子を見て女はボソリと言う。


「ここは肥溜め…濁った汚い水の中」

「そうね、綺麗じゃないわね」

「いつ消える?いつ…私達は裁かれるのか…」

「それは正しく神のみぞ知る、だから今を謳歌なさいな、悪のド中心を…ね?マリー」

「ド中心のド中心が何を言いますか、まぁ…それなりに楽しんでますよ…秋夏」


 カラリとワザと氷の音を立てる、隣座る奴隷商人の陽月 秋夏(ひつき しゅうか)は薄っぺらい笑みを浮かべて、何が楽しいか女の顔を覗き見た、キラキラとした美しい黒い瞳、だけどそのキラキラとした奥に渦巻くドス黒い何か見つめ合う女の目にはハッキリと見えた気がした。


 何か良からぬ事を言われる‥そう思った女、この国でギルドを営む女マスター、()()()()()()()()()は秋夏からゆっくりソッと目を逸らした。


 長い夜になる…目が座る奴隷商人を相手にマリーは酒を傾ける。

 ドッと背後が湧いた、演者がステージを降りてきたようだ、怪しさと欲と喧騒と、店を舞う行き過ぎたチップ、金と欲と、中央から離れたバーカウンターだけ置き去りにして、店は盛り上がる、クソッタレばかりが集まる店、そんなクソッタレしか居ないような国の夜は深まっていく。

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