説明
活気溢れるノルドバ王国は、魔法や戦闘に長けた国であり、ここ数十年で成長を続けている影響力のある大国である。
ノルドバ王国は大陸の北側に位置する大きな国であり、
海に広く面した形をしているため漁が盛んであることや、肥沃な大地もあり、陸海の両方で人や物の往来が激しく行われていることなどから、世界の市場と呼ばれている。
ノルドバ王国の一番の特徴《強み》である、国内に数多く存在するダンジョンは、
自国民の戦闘技術向上、
ダンジョンの最深部へ到達し富や名声を夢見る冒険者たちから得る戦利品、
戦争で活躍する兵士や傭兵たちの鍛錬の場としての利用など、人々の戦闘技術向上やノルドバ王国の軍事力などに大きく貢献している。
また、ある程度安全が確認されているようなダンジョンの周りでは、酒場や宿屋、鍛冶屋など冒険者達の生活に必要である人や物、設備が集まり、ノルドバ王国内にはダンジョン一体型の街が多く形成されている。
この特徴的なダンジョン街はノルドバ王国の経済成長の一助となっている。
そんな血気盛んな王国ノルドバに1人の男が降り立った。
男の名はヒシダ。
ノルドバの遥か南に位置するジパール帝国出身の18歳だ。
ヒシダ出身のジパール帝国は、
ノルドバ王国から南にいくつかの国を跨ぎ、さらに海を越えた先にある大きく豊かな島国である。
ジパール人の特徴として、
漆黒とも言えるほどの黒髪であることが多く、
薄い赤色の雷のような模様が手や足などの肌の表面に見受けられること、
一番わかりやすいのがとにかく頑丈で力が強いことである。
余談だが、ジパール帝国出身の傭兵は戦場で恐ろしいまでに強さを発揮するため、他国の兵士から鬼の血を引いているなどと比喩されることがあるのだが、
実際ジパール帝国から船で東に1週間進むほどの距離には、鬼ヶ島と呼ばれる鬼の統治する国があり、
その鬼ヶ島とジパール帝国は秘密裏に何百年も強固な同盟関係を結んでいる歴史がある。
海を挟んでいることやその海で嵐が多く起きることから大陸の国々にはあまり深く知られていないジパール帝国は、
世界最強の戦闘民族と言えるほどの戦闘技術や魔法のおかげで生まれた技術力、肥沃な大地や独特の文化と工芸品、海に囲まれた利点を活かした交易などにより非常に豊かであり、地理的にも大陸から離れているためそもそも他国とは争いになることがないことから、
世界でも唯一の永世中立国として、
他国間の戦争には一切関与しないことを百年ほど前に皇帝が決定し他国に周知している。
また、人類共通の敵である魔王率いる魔族たちとの戦いに関しても、経済的な援助はするがジパール帝国としては魔族に向けて軍を動かすなどの直接的な行動は一切しないことを表明している。
そんな恐ろしい国、ジパール帝国が運営している国立ジパール学園をそこそこの成績で卒業できたヒシダ。
ヒシダには祖国から遠く離れたノルドバの地でやりたいことがあった。
ダンジョンである。
ダンジョンの中で何がやりたいかと言われても特に出てこないのだが、絵を描いて故郷にいる数少ない友人や家族に見せてやりたいなとも思っているし、構造だったりお宝なんかにも興味があった。
呑気である。
そんなぼんやりとしたヒシダは今日、
遠く離れたノルドバの地で冒険者登録をする。