ここにいる理由
「おいおい、まじかよ」
「大変だったんだな」
「うぉぉぉぉん」
「いや、それほどでも・・・」
俺は今まで山で1人で住んでいてそこにリーゼロッテが迷い込んできたので故郷に返す旅をしているという作り話をした。
「あの嬢ちゃん、上品な感じがしたから奴隷じゃないなって思っていたんだよ」
「えらいなあんた」
酒に酔っているせいか肩を叩く力が強く痛かった。
「それに比べて俺たちはクズ野郎だ・・・」
「そうなのか?」
「ああ、俺たちは数年前まではここよりずっと北の方で暮らしていたんだ。獣人と取引していていい暮らしをしていたんだ」
寒い地域の人は温まるためにアルコール度数が高いのを好むと聞いている。この村の酒のアルコーンが強いのはそういうわけか。
「それがなんで、ここに?そのジュウジンと揉めたのか?」
サムは首を振り
「違う。あんた宗派戦争を知らないのか?」
「いや。まったく」
「まじかよ」
「おれを知らない人間がいるのか?」
みんな、信じられないとざわついていた。
(それほど大規模なものだったのか。山籠もりしていたという設定にしてよかった)
「まぁいい。宗派戦争はコラリムとアルバの間で起きた人間同士の戦争だ」
宗派戦争か。よくある話だな。
「その戦争でコラリムが勝った」
?コラリムが勝ったのになんで彼らはここにいるんだ?
「コラリムが勝ったならなんであんたたちは元の場所には戻れないんだ?」
俺がそう聞くとみんな顔を下に向けた。
「それはじゃな。獣人たちを裏切ったからじゃ」
村長が家に入ってきて、座りながら語り始めた。