酒盛り
「それでは行ってきますね」
「ごゆっくり。彼女のことお願いしますね」
「わかりました」
リーゼロッテは温泉に入りに行った。なんでも井戸を掘ろうとしたら温泉が出たそうだ。この村の温泉は最初は女性が先で男が後の交代制らしい。
「よっ」
「何か用か?」
俺が最初に会った村人サムが入り口から顔を出した。
「これから酒盛りするんだがどうだ?」
この世界のことをもっと知るためにもこれはいい機会だな。
「ああ。ぜひとも」
「そうこなくちゃな。ついて来てくれ」
俺はサムについて行った。
「塩のおじちゃん」
「塩のおじちゃんだ」
子どもたちが俺に向けて指を指していた。俺が塩を村に与えたことで子どもからはそう呼ばれるようになっていた。貫禄を出すために40代に見える顔に変装しているとはいえおじさんと言われるのは辛いな。
「さぁここだ」
「おっ、来たな」
「待っていたぜ」
サムの案内した家には男たちが酒をもうすでに飲んでいた。
「待っていたって、もう飲んでいるじゃねえか」
サムが文句を言っていた。
「いいじゃねえか。さぁ、あんたも飲みな」
「いただきます」
これはアルコール度数は高いが雑味があり、あまりいい酒ではないな。
「どうだ?」
村人たちがみんな俺を見ていた。おそらく自家製なのだろう。なので
「こ、これは強い酒ですね」
「そうだろ。これはやわな奴なら飲んだ瞬間倒れるほどの物なんだぜ」
嬉しそうに言っていた。
(こういう時はとりあえず褒めれるところを褒めることが相手と友好的になるための処世術だ)
「さぁ、飲め、飲め」
「あんたの身の上話も聞きたいからな」
「そんな話すことはないよ」
「そんなことはねえだろう」
「さぁ」
「さぁ」
「「「さぁ」」」
俺は村人たちに囲まれた。