白い粉といえば○○
村長について行くと家の中に案内された。真ん中に庵がある以外なんにもない家だった。
「村長1つ頼みがあるのですが?」
村長は少し怪訝な顔をしていた。何か無茶な注文でもすると思ったのだろう。
「なんじゃ?」
「服を何着か融通していただきたい」
「へ?」
村長は驚いた顔していた。
「もちろんタダとは言いません。これを」
俺は村長にタバコを渡した。
「これはなんじゃ?」
「タバコです。これと服を交換してもらいたいのですが?」
日本のタバコは海外でも人気で金より好意的に交換できた。異世界でもきっと・・・あまり嬉しそうじゃないな?」
「これではダメでしょうか?」
「あなたはマジックボックスを持っているのじゃろ?」
マジックボックスなんだそれ?
「マジックボックスとは様々な物を収納できる魔導具のことです」
リーゼロッテが小声で教えてくれた。
(なるほど。俺がデバイスからロケットランチャーを出したところは村人に見られていたのか。あの時は後方に木が回らずに気づかなかった。師匠に知られたらお仕置きされたな。村長は他に欲しいものがあるようだな)
「何が欲しいか言ってみてください。それを私が所有していたらそれと交換を考慮しますから」
「!本当か」
さきほどとは違って希望に満ちた顔していた。
「儂が欲しいのはあまり手に入らなくて困っているのじゃ」
希少品?あるか不安になってきた。
「そして儂らには必需品なのじゃ」
「・・・」
「つい先日村に持っている者がいなくなって困っていたのじゃ」
これってまさか・・・
「それって白い粉状のものじゃないですよね?」
恐る恐る聞いたが、村長はニヤッと
「どうやら儂の欲するブツが何かわかったようじゃの」
まさかあれなのか?しかし村長のあの顔見たことのある顔だ。あれがなくなって欲している人の顔だ。
「あの・・・もしかして欲しいのは塩ですか?」
「そんなわ「その通り」
その通りなの?俺はてっきり・・・
「海から離れたところでは貴重品と聞きました」
「ああ。ここでは商人が来た時しか手に入らないのじゃ」
はぁ~俺の勘違いだったのか。
「ジョン様、どうしたのですか?」
リーゼロッテがうなだれている俺を心配そうに見ていた。
「いえ、なんでも。塩ですか8キロあればいいですか?」
塩は結構あるからな。昔塩を1キロ買おうとして1ではなく、10押してしまったことがある。しかもキロではなくガロンで。
「8キロ・・・そんなにいただいてよろしいのかの?」
「ええ。塩はたくさんありますので」
師匠から料理によって塩を変えろと色んな種類の塩があるからな。別に困らない。俺は塩を2つ出した。容器は樽だった。
「これは一面真っ白じゃの・・・」
あれ?白い塩がよかったんじゃないのか?
「他のがよければ―――」
俺は言葉を詰まらせた。なぜなら塩を見て泣いていたからだ。
「こんな綺麗な塩は生まれて初めて見たのう・・・」
ただの塩で感動している人を初めて見た。
「急に泣いてすみません。今日は御馳走を用意しますので楽しみにして欲しいのじゃ」
手で涙をぬぐっていた。
「はい」
「ありがとうございます」
・・・そういえば貧しい地域は砂などが混じった粗悪な塩は流通しているという話を聞いたことがある。この人、いやこの村の人たちはそんな塩で生活してきたのか・・・
この世界は厳しい世界なのだと実感した俺であった。