コラリムとアルバ
俺は彼女を後ろにやりナイフを彼らに向けた。
「コラリムとはなんだ?」
「コラリムとは亜人共存派と聞いています」
リーゼロッテがボソッと言った。
「アジン?」
また新な用語か?
「えっと、この世界では女神ミラスを信仰するミラス教があります」
宗教か。
「ミラス教の教義に『人は助け合い生きる』という教えがあるのですが、人と定義に論争があるのです」
なんだかわかってきた気がする。
「魔族を『人』とみなすかですか?」
「はい。魔族、獣人たちも『人』とみなすべきと唱えたのがコラリム・アーベント。『人』とは人間のみで他は人間を模した『亜人』であり、排斥すべきと唱えたのはアルバ・ガリウスと言われています」
差別主義者はどこにもいるもんだな。
「人間はこの二つの意見で分かれ、他の人種ともに生きる亜人共存派をコラリム、逆に亜人排斥派をアルバと言うようになったそうです」
コラリムは開祖の名前っでその意志を継ぐものたちをコラリムと呼ぶようになったのか。だが、こいつらがコラリムであるとは限らない。この場をやり過ごすための虚言かもしれない。リーゼロッテを狙っている・・・この2人猪の方をチラチラと見るがリーゼロッテのことは全然見ていないな。
「お、俺たちは食べられる草や木の身を探していたんだ」
「草や木の実を探すのになんでそんな物を持っている?」
「これは護身用だ。魔物がいるところに丸腰でうろつくわけがないだろうが・・・」
「魔物?」
「あんたの後ろにいるのだよ」
この猪は魔物なのか?
「これは動物だろ?」
「動物なんて希少な生き物こんなところにいるわけないだろう」
この世界では動物は希少なのか。
「魔物と動物は何が違うんだ?」
「えっ?さぁ?」
知らないのかよ。それなのによくはっきり言えたものだ。
「魔物は眼が紫色の生き物らしいですよ」
リーゼロッテが代わりに答えてくれた。
「へぇ~」
「お嬢ちゃん、物知りだな」
「いえ、本で読んだだけです・・・あっ、ちなみこの猪の名前はアサルトボアと言うんですよ」
「知らなかった~」
「ああ」
リーゼロッテは謙遜しながら喜んでいるようだ。
「ところで・・・その猪はどうするんだ?」
さっきからチラチラ見ていたのはこの猪が欲しいからだったのか。そういえば食べ物を探しに来たとか言って言ったな。
「欲しいなら、やるよ」
猪は癖があって俺は調理できないし。
「本当か?」
「村のみんなが喜ぶぞー」
2人は笑顔で喜び抱き合っていた。
「それじゃあ、俺たちは行くから」
「待ってくれ」
「いのし・・・アサルトボアを譲ってくれる礼がしたいから村によって行かないか?」
正直リーゼロッテを狙う連中に見つからないように他人とあまり交流したくないんだが・・・ここは彼女に決めてもらうか。
「どうします?」
「ご厚意には応えたいと思います」
「それは村に来るってことか?」
リーゼロッテはこくんと頷いた。
「では、案内しよう」
「我らの村ニューレクドへ」